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奴隷の首輪
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二十分後。
いつまで話しているんだ? と思っていると、ようやく内緒話が終わったようで店主が俺に声を掛けてきた。
「お待たせしました。では、奴隷契約の準備に入っても宜しいですか?」
「……本当に待たせたな。まあ、いいが……。早速やって…………」
「……?」
『やってくれ』と言おうとしたが、シエナと夫婦関係になってから奴隷市場に行く機会があったら聞いておきたかったことがあったのを思い出した。
これは出来ることならやっておきたいことだしな。
「一つ質問がある。奴隷の首輪、これを外すことは出来るか?」
「……出来ますが……どうしてですか?」
店主は不思議そうな顔で見てくる。
まあ、普通はそういう顔をするよな。
奴隷の首輪は、奴隷が逃げないように縛っておく鎖のようなものだと聞いた。つまり、奴隷の首輪を外すということは、奴隷契約の効力を失わせるということと同義であり、いつでも奴隷の方は主人から逃げることが出来てしまう、ということになる。
そういうことなので、よほどのことがない限り奴隷の首輪は外さないのが常識なのだが……
「奴隷の首輪は、なんというか……こいつは奴隷なんだぞって言いふらしているような感じがして、あまり気分の良いものではないんだ。周りの人もそういう目で見てくるし……だから、出来るなら外してやりたい」
「……なるほど。ですが、もし逃げられたとしてもこちらでは責任を取れませんよ?」
「別にそれでいい。シエナもいいか?」
奴隷の首輪を付けているシエナ本人に聞く。
あくまでも今の意見は俺のもので、シエナがどう思っているのか知りたかったのだ。
「……エリック様……本当にお優しい方で……ありがとうございます……」
嬉し涙を流しながら感謝をしてきた。
まあ、シエナ自身も奴隷の首輪があるということで少しだけ遠慮していた節があるし、首輪を付けたままだと奴隷と主人ということが頭にちらついて少し辛かったからな。
よしよし、じゃあシエナは外してもらおう!
それで、メリッサも……
「じゃあーー」
「ちょっと! わたしくは!? わたくしの首輪は外していただけませんの!?」
グイッとメリッサが俺に近づいてきて、自分の首に付いている首輪をチラチラとアピールしてきた。
いや、メリッサの首輪も取ってあげるつもりだったんだけど……こうグイグイ来られると少し意地悪したくなるよな……
というわけで、俺はちょっとだけ焦らすことにした。
「……うーん……どうしようかな……俺とメリッサはそこまで信頼関係が築けてないしなぁ……首輪を付けてないと逃げられそうで心配だよなぁ……」
「え!? わたくし、さっきあんなに好き好きアピールしましたのに、エリックの信頼を獲得できていませんの!?」
「いや、だってなんか嘘くさいっていうか……俺に媚びへつらっているようにしか見えないんだよな……それに、ギャンブルもまた始めそうだし」
「嘘じゃありませんわ! 本心で言ってますの! それにギャンブルからは足を洗いましたわ! もう二度としません!」
俺に息がかかる距離までメリッサが近づいてきて、必死に食いついてくる。
……面白いくらいのリアクションをとってくるな。ちょっと楽しい。
「でもなぁ……」
「そんなにわたくしのことが信用できないのであれば、わたくしの本気度を分かっていただくために、今この場で処女をエリックに差し上げますわ! ちょっとお待ちくださいまし。お風呂に入って身を清めてーー」
「――分かった! メリッサの首輪も外すつもりだったから今すぐ戻ってきなさい!」
「本当ですの!? 感謝します! エリック、愛してますわ!」
バカみたいなことを言いながら部屋を出ていこうとしていた彼女を呼び止める。
……発想がいきなり飛躍しすぎだろ。怖いわ。
「コホン。というわけで、奴隷の首輪は二人共外す方向で宜しく頼む」
「……分かりました」
店主とシエナにジト目で見られたが……いや、今のは俺が悪いと言うか……そういう発想に至ったメリッサがおかしいと思うんですが。
その後。大した時間もかからずに二人の奴隷の首輪は外され、メリッサの奴隷契約も首輪をつけないのなら必要ないと言われた。
これにてメリッサの購入手続きは完了だ。
「では、またのお越しをお待ちしております」
店主が笑顔で俺達を送り出す。
……そりゃ一日で金貨三千枚も手に入ったら笑顔にもなるわな。
『次、来ることがあったら安くしてくれ』と言って俺達は奴隷市場を後にする。
クエストの事前報酬がメリッサだけで吹っ飛んだが……まあ、これにて無事、パーティーメンバーを増やすことができたというわけだ。
一歩前進!
いつまで話しているんだ? と思っていると、ようやく内緒話が終わったようで店主が俺に声を掛けてきた。
「お待たせしました。では、奴隷契約の準備に入っても宜しいですか?」
「……本当に待たせたな。まあ、いいが……。早速やって…………」
「……?」
『やってくれ』と言おうとしたが、シエナと夫婦関係になってから奴隷市場に行く機会があったら聞いておきたかったことがあったのを思い出した。
これは出来ることならやっておきたいことだしな。
「一つ質問がある。奴隷の首輪、これを外すことは出来るか?」
「……出来ますが……どうしてですか?」
店主は不思議そうな顔で見てくる。
まあ、普通はそういう顔をするよな。
奴隷の首輪は、奴隷が逃げないように縛っておく鎖のようなものだと聞いた。つまり、奴隷の首輪を外すということは、奴隷契約の効力を失わせるということと同義であり、いつでも奴隷の方は主人から逃げることが出来てしまう、ということになる。
そういうことなので、よほどのことがない限り奴隷の首輪は外さないのが常識なのだが……
「奴隷の首輪は、なんというか……こいつは奴隷なんだぞって言いふらしているような感じがして、あまり気分の良いものではないんだ。周りの人もそういう目で見てくるし……だから、出来るなら外してやりたい」
「……なるほど。ですが、もし逃げられたとしてもこちらでは責任を取れませんよ?」
「別にそれでいい。シエナもいいか?」
奴隷の首輪を付けているシエナ本人に聞く。
あくまでも今の意見は俺のもので、シエナがどう思っているのか知りたかったのだ。
「……エリック様……本当にお優しい方で……ありがとうございます……」
嬉し涙を流しながら感謝をしてきた。
まあ、シエナ自身も奴隷の首輪があるということで少しだけ遠慮していた節があるし、首輪を付けたままだと奴隷と主人ということが頭にちらついて少し辛かったからな。
よしよし、じゃあシエナは外してもらおう!
それで、メリッサも……
「じゃあーー」
「ちょっと! わたしくは!? わたくしの首輪は外していただけませんの!?」
グイッとメリッサが俺に近づいてきて、自分の首に付いている首輪をチラチラとアピールしてきた。
いや、メリッサの首輪も取ってあげるつもりだったんだけど……こうグイグイ来られると少し意地悪したくなるよな……
というわけで、俺はちょっとだけ焦らすことにした。
「……うーん……どうしようかな……俺とメリッサはそこまで信頼関係が築けてないしなぁ……首輪を付けてないと逃げられそうで心配だよなぁ……」
「え!? わたくし、さっきあんなに好き好きアピールしましたのに、エリックの信頼を獲得できていませんの!?」
「いや、だってなんか嘘くさいっていうか……俺に媚びへつらっているようにしか見えないんだよな……それに、ギャンブルもまた始めそうだし」
「嘘じゃありませんわ! 本心で言ってますの! それにギャンブルからは足を洗いましたわ! もう二度としません!」
俺に息がかかる距離までメリッサが近づいてきて、必死に食いついてくる。
……面白いくらいのリアクションをとってくるな。ちょっと楽しい。
「でもなぁ……」
「そんなにわたくしのことが信用できないのであれば、わたくしの本気度を分かっていただくために、今この場で処女をエリックに差し上げますわ! ちょっとお待ちくださいまし。お風呂に入って身を清めてーー」
「――分かった! メリッサの首輪も外すつもりだったから今すぐ戻ってきなさい!」
「本当ですの!? 感謝します! エリック、愛してますわ!」
バカみたいなことを言いながら部屋を出ていこうとしていた彼女を呼び止める。
……発想がいきなり飛躍しすぎだろ。怖いわ。
「コホン。というわけで、奴隷の首輪は二人共外す方向で宜しく頼む」
「……分かりました」
店主とシエナにジト目で見られたが……いや、今のは俺が悪いと言うか……そういう発想に至ったメリッサがおかしいと思うんですが。
その後。大した時間もかからずに二人の奴隷の首輪は外され、メリッサの奴隷契約も首輪をつけないのなら必要ないと言われた。
これにてメリッサの購入手続きは完了だ。
「では、またのお越しをお待ちしております」
店主が笑顔で俺達を送り出す。
……そりゃ一日で金貨三千枚も手に入ったら笑顔にもなるわな。
『次、来ることがあったら安くしてくれ』と言って俺達は奴隷市場を後にする。
クエストの事前報酬がメリッサだけで吹っ飛んだが……まあ、これにて無事、パーティーメンバーを増やすことができたというわけだ。
一歩前進!
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