上 下
43 / 108

二人目の奴隷、メリッサ

しおりを挟む
 メリッサと一緒にいるということに何故か分からないが気まずくなって、部屋のあちらこちらを見ていると、

「ありがとうございます」

 と俺にお礼を言ってきた。
 彼女を見ると、少し顔を赤くしている。

「別にお礼を言われるようなことでもない。そもそも困っていたのはこっちも同じだからな」

 それ以上話が続かず沈黙が流れる。
 ……なんというか、うん……やっぱり気まずい……
 しかし、ここでしっかりしているシエナが話を振ってきた。

「エリック様。メリッサ様に今後の事をお話しておいたほうが宜しいかと」
「あぁ、それもそうだな。メリッサ。俺達は今、緊急クエストをギルドから依頼されて、それに向けた準備をしているところなんだ」
「……緊急クエスト……? なぜS級ランクの冒険者が受けるようなものをエリックが……?」

 ……もしかして俺のランクを知らないのか。
 まあ、無理もない。俺がS級ランクになったのって、彼女が丁度奴隷になった頃だったし。ここまでその話が伝わって来ていないのも普通だろう。

 俺は冒険者カードを彼女に見せてあげる。

「実は俺、S級ランクについ最近なったんだよ。で、他の街からドラゴンの目撃情報が入ってきてな。そのドラゴンの所在地を調べるために俺達が捜索隊としてーー」
「――エリックってS級になっていたんですの!? あの時はC級ランクだったのに! え!? じゃあわたくしってS級ランクのパーティーに入って、それでS級ランクの人の奴隷になるってことですの!? 玉の輿! 玉の輿ですわ、これは!」

 メリッサが急に興奮して大声を出してきた。
 ……いや、もう少し言葉をオブラートにだな……

「ね、ねえ! そこのあなた! エリックとはどういう関係ですの?」
「え……えっと……夫と妻という感じですが……」
「まあ! じゃあ、わたくしもそういう関係になれるのかしら!? わたくしもエリックの奥さんになれるのかしら!?」
「ま、まあ……なれると思います。それに、メリッサ様がエリック様の事を本当に好きなら、そういう関係に二人がなったとしても私は特に何も言うことはありませんし、むしろエリック様の魅力を理解していただける人が増えるということで喜ばしいと思いますが……」
「お、おい……何を勝手に話をーー」
「じゃあ、エリック! わたくしをお嫁さんにしてくださいまし! 奴隷じゃなくてお嫁さんにしてもらいたいですわ!」
「いや、話の脈絡がおかしいだろ。ちょっと落ち着けって」

 なんとかメリッサを落ち着かせようとするが、彼女の興奮度合いはヒートアップする。

「何もおかしなことはないですわ! わたくし、強くて優しい人がタイプですの。前のパーティーの彼は、ある程度は強かったけれど優しくはなかったから別に好きじゃなかったんですの。彼と一緒に居たのは、ただただ他のパーティーに入れてもらえなかったから。だから、彼には体を許していませんでしたし、唇さえ奪わせることはさせなかったですわ。でも、今のエリックは物凄くわたくしのタイプですの! 昔、一緒に戦った時も強くて良いかもって思ってましたが、今のあなたはS級ランクで文句無しで強いですし、あんな事があったのにわたしくを許してくれる優しさもあるし……もうわたくしの好みのどストライクですの! ハートを撃ち抜かれましたわ! 好き! 一瞬で恋に落ちちゃったんですの! ですから、わたくしをエリックの奥さんにしてほしいんですの! 駄目かしら!?」

 いや、押しが凄いなこの人。
 あと、なんでさっきは気まずかったのか分かったわ。
 本来の彼女の喋り方はこういう感じなのだ。なのに、さっきまでは遠慮している感じの話し方だったから、いまいち距離感が掴めなくて変な雰囲気になっていたのだ。
 まあ、ある意味心を開いてくれた証なのだろうが……

「分かった。メリッサの気持ちは分かった」
「じゃあわたくしをあなたのお嫁さんにしてくれるのかしら!?」
「……いや、それは駄目だ。シエナも別に他の女性を娶っていいと言ってくれているが……それはメリッサが俺の事を好きで、俺もメリッサの事が好きで。つまり両思いであることがちゃんと分かってからそういう関係になるものだろ?」
「わたくしはあなたの事が好きですわ!」
「うん、まあ、仮に俺の事が本当に好きだと仮定しよう。でも、俺はメリッサのことを好きかどうか現時点では分からない。確かに、綺麗だとか、そういうことは思っているが……恋愛的な好きが俺の中にあるかどうかは分からない。だから、お前を今この場で俺の奥さんにすることは出来ない。ただ、今後俺がメリッサのことを好きだと自信を持って言えるようになれば、そういう関係になってもいいとは思う」

 まあ、メリッサの言葉だとようやく自分を買ってくれたという喜びと、S級ランクという事実に目がくらんで何かの感情と好きを履き違えているようにしか俺には思えないが。

「……そうです……の……分かりました。でも、必ずやエリックがわたくしを好いてくれるように頑張ってアピールしますわ! あと、シエナさん、あなた……こんな面倒な男をよく落とせましたね……正直ここまでアピールしてのあの発言は、童貞をこじらせている人のものにしか聞こえませんでしたわ……」
「まあ……それは……同意します……」
「おい! お前ら! せめて俺がいないところでそういう話をしろ!」
「あらあら。もうこんなに仲良くなって……良いことですね。私からも助言を。エリックさんは押して押しまくると必ずコロッといっちゃう人なので、二人共、ぐいぐい押して自分をアピールすると良いことがあると思いますよ」
『はい!』
「それとですね……」

 店主が彼女たちの耳元で内緒話を始める。
 何を話しているのか気になるが……知らぬが仏のような感じがしたので、少し彼女たちから距離をとった。
 ……というか、なんで俺の性格を店主さんがこんなにも把握してんだよ。
 あと、シエナとメリッサも『肝に銘じておきます』みたいな顔をして彼女の話を聞くんじゃない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...