38 / 108
デブネズミ討伐 その2
しおりを挟む
デブネズミが居たところに戻ると……三匹は川で水浴びをして遊んでいた。
……遊んでいる姿は物凄く可愛いな。ただ、時折出す鳴き声が『ブビビ!』なのが残念だが。
一応、俺も剣を何時でも抜けるように準備をしながらシエナの後ろを付いていく。
さっき彼女には『ここからはどの経路で近づいていくのかとか、どのタイミングで戦闘を開始するとか、全てシエナが考えて行動してくれ』と言ったので、俺は何も指示していない。
足音を立てずにある程度近づき、デブネズミ達の死角になっているであろう場所にあった木の陰に隠れて……シエナが少しだけ身を乗り出し魔術を起動した。
「《リワインド》!」
瞬間。デブネズミがみるみると小さくなっていった。まるで時間が巻き戻っているようにだ。
ほえー、これは凄い魔術だな。正直、この魔術があれば向かうところ敵なしなんじゃないか?
リワインドの凄さに舌を巻いていると……シエナが魔術の起動を突然やめた。
「……すみません……これ以上は……無理です……」
息を切らしながらシエナが後ろで待機してた俺に話しかけてくる。
デブネズミを見てみると……サイズは半分くらいにはなっていたが……討伐したとはとても言えない感じだった。しかも俺達の存在に気がついたようで、ノシノシとこちらに向かってきていた。
……どうやら俺の想像以上にリワインドという魔術は魔力消費量が激しかったらしい。
ヘロヘロになってしまったシエナに『よくやった』と声をかけながら木に持たれかけさせて、俺は剣を抜く。
まあ、こういうときのための俺だしな。ちゃちゃっと終わらせて、シエナに感想を聞こう。
『ちょっと待ってて』とシエナに言い残し、俺は木陰から一気にモンスター達の前に出る。
シエナのおかげでデブネズミの図体は半分近くになっている。
これなら押しつぶされる心配もないな。
モンスターたちは俺の姿を見るなり『ブブブブブ!』というなんとも言えない雄叫びをあげて……俺に向かって突進をしてきた。まあ、突進って言ってもめちゃくちゃ遅いが。
対する俺も腰を落として……剣を前に突き出しながら一気にモンスターに肉薄した。
その勢いのまま進路上にいたモンスターに剣を突き刺し……まずは一匹討伐。
すぐに突き刺さった剣を抜いて、右に居たモンスターに瞬時に接近して剣を薙ぎ払い……二匹討伐。
残る一匹は俺の動きに付いてこれず、無理やり進路を変えようとしたのか急制動をかけていたが……デブネズミの名の通りデブなので、体が言うことをきかずにコケてしまい、起き上がろうともがいているところを横目に……サクッと首を切り落として、三匹討伐。
以上である。一瞬ですな。
俺は剣についた血を遠心力である程度飛ばしてから腰に下げ、適当にデブネズミの毛をムシった後、彼女の元へと戻った。
「流石ですね、エリック様。物凄く華麗な討伐でした」
木にもたれかかりながら俺の戦闘を見ていたのであろうシエナが戻るなり俺を褒めてきた。
……よし。俺が言わずとも自分でユニークスキルを解除しているな。
密かにそんな確認をしながらも言葉を返す。
「そこまでのものじゃない。誰だってこれくらいやってのけるさ」
「……素直じゃないエリック様もいいですね」
シエナが意地悪な顔をする。
……必死に表情を作っていたんだが……バレてましたか。
まあ、褒められて嬉しくないやつなんていないだろ。まあ、俺は嬉しさよりも照れが先行してしまって素直に喜べないんだが。
コホンと咳払いをして、話を変える。
「しかし、リワインドは想像以上に魔力を消費する魔術だったな」
「ですね……倒しきるまで持ちませんでした」
シエナがしゅん、という顔をする。
本当に喜怒哀楽が分かりやすくて可愛いな。
「でも落ち込む必要はない。起動は出来たんだ。あとは……シエナ自身の魔力タンクを大きくしていけばいいだけだ」
「魔力タンク……ですか……?」
荷物から水筒を出して水分補給をし、彼女にもその水筒を渡してから詳しい説明をする。
「魔術を起動するには魔力を消費する。で、その魔力が湧き上がってくるところと蓄えるところを合わせて魔力タンクって呼んでいるんだ。まあ、厳密にはそんなものは体の何処にもないけど、イメージしやすいように言っているだけだが」
シエナも水を飲んで『ありがとうございました』と水筒を渡してきた。
それを仕舞いながら説明を続ける。
「で、その魔力タンクなんだが、最初はめちゃくちゃ小さい。つまりは、湧き上がってくる魔力も少ないし、蓄えも少ないから一度に使える魔力の量も限られて……今回のシエナみたいにモンスターを倒しきれずに魔力切れを起こしてしまう」
「そういう理由があったのですね……」
「そうだ。ただ、この魔力タンク。魔術を使用すればするほど大きくなっていくんだ。理屈は不明。ただ、そうなるということだけが分かっている」
「ということは、これからどんどんクエストを受けてばんばん魔術を放っていけば、いつかはリワインドを使いこなせるようになるということですか?」
目をキラキラとさせながら俺に聞いてきた。
俺は首肯する。
「そういうことだ。まあ、キャロという超絶凄い杖も手元にあるし、すぐに思いのままにリワインドも、その他のヒーラー専用の魔術だって使えるようになるさ。だから、目の前の結果に一喜一憂せずに努力し続けるんだ」
「はい! 私、がんばります!」
よしよし。気合とか、やる気は大切だからな。
その後。シエナが立ち上がれるまでに回復したので、これにて今日のクエストを終了して街に帰ることにした。
ソフィアがリストアップしてくれたクエストは、どれも討伐数に制限がないものばかりだったからな。分かりやすく言うのであれば、いっぱい倒してもいいし、一匹だけしか倒せなくてもいいというものなのだ。
本当にシエナに合ったクエストで、あいつには感謝しかない。まあ、この前の食事では色々ひどかったが。
……遊んでいる姿は物凄く可愛いな。ただ、時折出す鳴き声が『ブビビ!』なのが残念だが。
一応、俺も剣を何時でも抜けるように準備をしながらシエナの後ろを付いていく。
さっき彼女には『ここからはどの経路で近づいていくのかとか、どのタイミングで戦闘を開始するとか、全てシエナが考えて行動してくれ』と言ったので、俺は何も指示していない。
足音を立てずにある程度近づき、デブネズミ達の死角になっているであろう場所にあった木の陰に隠れて……シエナが少しだけ身を乗り出し魔術を起動した。
「《リワインド》!」
瞬間。デブネズミがみるみると小さくなっていった。まるで時間が巻き戻っているようにだ。
ほえー、これは凄い魔術だな。正直、この魔術があれば向かうところ敵なしなんじゃないか?
リワインドの凄さに舌を巻いていると……シエナが魔術の起動を突然やめた。
「……すみません……これ以上は……無理です……」
息を切らしながらシエナが後ろで待機してた俺に話しかけてくる。
デブネズミを見てみると……サイズは半分くらいにはなっていたが……討伐したとはとても言えない感じだった。しかも俺達の存在に気がついたようで、ノシノシとこちらに向かってきていた。
……どうやら俺の想像以上にリワインドという魔術は魔力消費量が激しかったらしい。
ヘロヘロになってしまったシエナに『よくやった』と声をかけながら木に持たれかけさせて、俺は剣を抜く。
まあ、こういうときのための俺だしな。ちゃちゃっと終わらせて、シエナに感想を聞こう。
『ちょっと待ってて』とシエナに言い残し、俺は木陰から一気にモンスター達の前に出る。
シエナのおかげでデブネズミの図体は半分近くになっている。
これなら押しつぶされる心配もないな。
モンスターたちは俺の姿を見るなり『ブブブブブ!』というなんとも言えない雄叫びをあげて……俺に向かって突進をしてきた。まあ、突進って言ってもめちゃくちゃ遅いが。
対する俺も腰を落として……剣を前に突き出しながら一気にモンスターに肉薄した。
その勢いのまま進路上にいたモンスターに剣を突き刺し……まずは一匹討伐。
すぐに突き刺さった剣を抜いて、右に居たモンスターに瞬時に接近して剣を薙ぎ払い……二匹討伐。
残る一匹は俺の動きに付いてこれず、無理やり進路を変えようとしたのか急制動をかけていたが……デブネズミの名の通りデブなので、体が言うことをきかずにコケてしまい、起き上がろうともがいているところを横目に……サクッと首を切り落として、三匹討伐。
以上である。一瞬ですな。
俺は剣についた血を遠心力である程度飛ばしてから腰に下げ、適当にデブネズミの毛をムシった後、彼女の元へと戻った。
「流石ですね、エリック様。物凄く華麗な討伐でした」
木にもたれかかりながら俺の戦闘を見ていたのであろうシエナが戻るなり俺を褒めてきた。
……よし。俺が言わずとも自分でユニークスキルを解除しているな。
密かにそんな確認をしながらも言葉を返す。
「そこまでのものじゃない。誰だってこれくらいやってのけるさ」
「……素直じゃないエリック様もいいですね」
シエナが意地悪な顔をする。
……必死に表情を作っていたんだが……バレてましたか。
まあ、褒められて嬉しくないやつなんていないだろ。まあ、俺は嬉しさよりも照れが先行してしまって素直に喜べないんだが。
コホンと咳払いをして、話を変える。
「しかし、リワインドは想像以上に魔力を消費する魔術だったな」
「ですね……倒しきるまで持ちませんでした」
シエナがしゅん、という顔をする。
本当に喜怒哀楽が分かりやすくて可愛いな。
「でも落ち込む必要はない。起動は出来たんだ。あとは……シエナ自身の魔力タンクを大きくしていけばいいだけだ」
「魔力タンク……ですか……?」
荷物から水筒を出して水分補給をし、彼女にもその水筒を渡してから詳しい説明をする。
「魔術を起動するには魔力を消費する。で、その魔力が湧き上がってくるところと蓄えるところを合わせて魔力タンクって呼んでいるんだ。まあ、厳密にはそんなものは体の何処にもないけど、イメージしやすいように言っているだけだが」
シエナも水を飲んで『ありがとうございました』と水筒を渡してきた。
それを仕舞いながら説明を続ける。
「で、その魔力タンクなんだが、最初はめちゃくちゃ小さい。つまりは、湧き上がってくる魔力も少ないし、蓄えも少ないから一度に使える魔力の量も限られて……今回のシエナみたいにモンスターを倒しきれずに魔力切れを起こしてしまう」
「そういう理由があったのですね……」
「そうだ。ただ、この魔力タンク。魔術を使用すればするほど大きくなっていくんだ。理屈は不明。ただ、そうなるということだけが分かっている」
「ということは、これからどんどんクエストを受けてばんばん魔術を放っていけば、いつかはリワインドを使いこなせるようになるということですか?」
目をキラキラとさせながら俺に聞いてきた。
俺は首肯する。
「そういうことだ。まあ、キャロという超絶凄い杖も手元にあるし、すぐに思いのままにリワインドも、その他のヒーラー専用の魔術だって使えるようになるさ。だから、目の前の結果に一喜一憂せずに努力し続けるんだ」
「はい! 私、がんばります!」
よしよし。気合とか、やる気は大切だからな。
その後。シエナが立ち上がれるまでに回復したので、これにて今日のクエストを終了して街に帰ることにした。
ソフィアがリストアップしてくれたクエストは、どれも討伐数に制限がないものばかりだったからな。分かりやすく言うのであれば、いっぱい倒してもいいし、一匹だけしか倒せなくてもいいというものなのだ。
本当にシエナに合ったクエストで、あいつには感謝しかない。まあ、この前の食事では色々ひどかったが。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる