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いざギルドへ! その1
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ギルドがある建物の中に入る。
「これは……凄いですね……」
シエナは中に入るなり驚いて目を見張っている。
……俺も初めてこのギルドの建物に入った時は驚いたものだ。
まず、内装が凄い。何処かのお城ですか? って思うくらい豪華なシャンデリアや絨毯が所狭しと使用されており、ここが本当に冒険者が集うギルドなのか分からなくなる。
次に、その建物の中にいる人達が凄い。こっちはいい意味ではなく、悪い意味で凄い。
入り口をまっすぐに進むと、クエストを張り出している掲示板があるのだが……ここでは日夜、報酬の良いクエストを我先に受けようと、男女関係なく冒険者が殴り合いをしている戦場なのだ。
「貴様! 俺が先にそれを狙っていたんだぞ! そのクエスト用紙を俺によこせ!」
「んだとジジイ! 狙ってたからって俺に渡せとか、脳までそのご自慢の筋肉になってんじゃねぇのか!? ちっとは勉強もしたらどうだ。この……禿頭が!」
「ちょっと君。今、ハゲをバカにしたよね。私はハゲたくてハゲたわけじゃないのに……なのに、君は私のことを、ハゲの事をバカにした。おかげでほら、見てご覧。必死で前線を維持している髪の毛のうち、一本が今抜け落ちたよ。というわけで、そのクエストは私のものだ」
「なんだてめぇ!? わけの分からんことを言ってんじゃねぇ!」
初めは屈強な爺さんと屈強な若者が言い合いをしていたのに、今はハゲた人にまで飛び火して、話が余計にややこしくなった。
そう、ここは戦場。味方などおらず、いきなり流れ弾を食らう可能性だってあるのだ。
中にはクエストを受ける前に掲示板での乱闘で負傷し、そのまま冒険者生活を諦めざるを得なくなった人も居るのだとか……
……あれ? もしかして冒険者って俺を含めてみんな頭悪い?
しかし、ここまでの騒ぎになるのにも理由があるのだ。
冒険者は、クエストを受注して、モンスターなどを倒し、依頼を達成したらギルドに報告して報酬を貰うという、ごくごく単純で分かりやすいシステムの中で生活をしている。
クエストにも難度があり、簡単なものは命の危険は少ないが報酬がしょぼく、報酬が高いクエストは、それだけ命の危険もある。まあ、これは当然のことではあるのだが。
ただ……中にはめちゃくちゃ簡単なのに高報酬のクエストがある。これが出回るのは結構頻繁で、一日に十件くらい出る。一日の平均のクエスト数が百件前後なので、かなり確率は高い。
え? なんで高いのかって?
さっきのように冒険者は野蛮な人が多い。そんな人達が食うのに困るようになると……とんでもないことになるのは想像がつくだろう。
というわけで、冒険者がある程度食っていけるように高単価のクエストをギルドが発注している、というわけだ。
冒険者が街で暴れる、なんてことになれば、冒険者のみならずギルドまで信用をなくし、クエストを依頼してくれる人がいなくなってしまうからな。ギルドも色々と大変なのだ。
なんでそんなことを知っているのかって? それは、もう少ししたら分かるさ。
俺は掲示板をスルーして、クエストの受付場まで足を進める。
「あ、やっと来てくれましたね。もう、ギルド長が怒って怒って……手がつけられなくなるところでしたよ……って! エリックさん、奴隷を買ったんですか!?」
受付嬢が俺に愚痴をこぼしてきたと思えば……シエナを見て驚きの声を上げた。
彼女の名前はソフィア。このギルドの受付嬢で俺と会話をしてくれる数少ない女性の一人だ。
「……まあ、買った……うん。買いました」
「奴隷を買って自分のパーティーに入れるのはよくある話ですが……自分のユニークスキルを知った上で……女性の奴隷を買うとは……いよいよ自分の性欲が我慢できなくなったのですか?」
「ちちちち違うわ! お、俺は! そんなことで買ったのではなく! えーっと、気が向いたから買っただけだ!」
あまりにもとんでもないことをソフィアが言ってきたので動揺してしまった。
というか、あまり変なことは言わないでくれ。まだ、俺のユニークスキルについて彼女に話していないんだから……
しかし、凄い無理やりな理由を付けてしまったな。『酔っ払っていたから』とか言えないし、かといっていい嘘も思いつかなかったのだが……
「……まあ、エリックさんの自由ですけどねぇ~」
ニヤニヤとソフィアが俺の顔を覗き込んでくる。
こいつ……!
「はい! というわけで、これ以上ギルド長を待たせると彼女がこの建物を破壊しかねないので、さっさと奥の部屋に行っちゃってください!」
どうぞ~という感じで受付場の奥にある部屋に通される。
今の会話で察せたと思うが、俺はギルド長と関わりがある。彼女からはよくギルドの仕事を直接依頼されたり、ギルドについて話を聞く機会も多かったため、クエスト関係の仕組みなどに詳しくなった、というわけだ。
俺たちは、奥の部屋の扉の前まで来て……立ち止まる。
「エリック様、どうされましたか?」
シエナが何かあったのか、と聞いてくるが……いや、大したことではないのだ。ただ、彼女に会うのには少し気合を入れないといけないというか……
ただ、シエナを心配させるのも良くないよな。よし! 気合い入れて覚悟を決めたぞ!
「いや、大丈夫だ。問題なーー」
「エリック! あんたそこにいるのね!」
扉がぶち破られ、いきなり目の前に足が飛び出してきて、俺の腹部にクリティカルヒット!
そのまま俺は後ろの壁に激突し、ノックダウン!
いつもの光景だった。今日は気を抜いていたというのもあるが……毎回毎回ドアを足でぶっ壊して俺に腹パンをカマしてくるのはギルド長としてどうなんですかね……?
「これは……凄いですね……」
シエナは中に入るなり驚いて目を見張っている。
……俺も初めてこのギルドの建物に入った時は驚いたものだ。
まず、内装が凄い。何処かのお城ですか? って思うくらい豪華なシャンデリアや絨毯が所狭しと使用されており、ここが本当に冒険者が集うギルドなのか分からなくなる。
次に、その建物の中にいる人達が凄い。こっちはいい意味ではなく、悪い意味で凄い。
入り口をまっすぐに進むと、クエストを張り出している掲示板があるのだが……ここでは日夜、報酬の良いクエストを我先に受けようと、男女関係なく冒険者が殴り合いをしている戦場なのだ。
「貴様! 俺が先にそれを狙っていたんだぞ! そのクエスト用紙を俺によこせ!」
「んだとジジイ! 狙ってたからって俺に渡せとか、脳までそのご自慢の筋肉になってんじゃねぇのか!? ちっとは勉強もしたらどうだ。この……禿頭が!」
「ちょっと君。今、ハゲをバカにしたよね。私はハゲたくてハゲたわけじゃないのに……なのに、君は私のことを、ハゲの事をバカにした。おかげでほら、見てご覧。必死で前線を維持している髪の毛のうち、一本が今抜け落ちたよ。というわけで、そのクエストは私のものだ」
「なんだてめぇ!? わけの分からんことを言ってんじゃねぇ!」
初めは屈強な爺さんと屈強な若者が言い合いをしていたのに、今はハゲた人にまで飛び火して、話が余計にややこしくなった。
そう、ここは戦場。味方などおらず、いきなり流れ弾を食らう可能性だってあるのだ。
中にはクエストを受ける前に掲示板での乱闘で負傷し、そのまま冒険者生活を諦めざるを得なくなった人も居るのだとか……
……あれ? もしかして冒険者って俺を含めてみんな頭悪い?
しかし、ここまでの騒ぎになるのにも理由があるのだ。
冒険者は、クエストを受注して、モンスターなどを倒し、依頼を達成したらギルドに報告して報酬を貰うという、ごくごく単純で分かりやすいシステムの中で生活をしている。
クエストにも難度があり、簡単なものは命の危険は少ないが報酬がしょぼく、報酬が高いクエストは、それだけ命の危険もある。まあ、これは当然のことではあるのだが。
ただ……中にはめちゃくちゃ簡単なのに高報酬のクエストがある。これが出回るのは結構頻繁で、一日に十件くらい出る。一日の平均のクエスト数が百件前後なので、かなり確率は高い。
え? なんで高いのかって?
さっきのように冒険者は野蛮な人が多い。そんな人達が食うのに困るようになると……とんでもないことになるのは想像がつくだろう。
というわけで、冒険者がある程度食っていけるように高単価のクエストをギルドが発注している、というわけだ。
冒険者が街で暴れる、なんてことになれば、冒険者のみならずギルドまで信用をなくし、クエストを依頼してくれる人がいなくなってしまうからな。ギルドも色々と大変なのだ。
なんでそんなことを知っているのかって? それは、もう少ししたら分かるさ。
俺は掲示板をスルーして、クエストの受付場まで足を進める。
「あ、やっと来てくれましたね。もう、ギルド長が怒って怒って……手がつけられなくなるところでしたよ……って! エリックさん、奴隷を買ったんですか!?」
受付嬢が俺に愚痴をこぼしてきたと思えば……シエナを見て驚きの声を上げた。
彼女の名前はソフィア。このギルドの受付嬢で俺と会話をしてくれる数少ない女性の一人だ。
「……まあ、買った……うん。買いました」
「奴隷を買って自分のパーティーに入れるのはよくある話ですが……自分のユニークスキルを知った上で……女性の奴隷を買うとは……いよいよ自分の性欲が我慢できなくなったのですか?」
「ちちちち違うわ! お、俺は! そんなことで買ったのではなく! えーっと、気が向いたから買っただけだ!」
あまりにもとんでもないことをソフィアが言ってきたので動揺してしまった。
というか、あまり変なことは言わないでくれ。まだ、俺のユニークスキルについて彼女に話していないんだから……
しかし、凄い無理やりな理由を付けてしまったな。『酔っ払っていたから』とか言えないし、かといっていい嘘も思いつかなかったのだが……
「……まあ、エリックさんの自由ですけどねぇ~」
ニヤニヤとソフィアが俺の顔を覗き込んでくる。
こいつ……!
「はい! というわけで、これ以上ギルド長を待たせると彼女がこの建物を破壊しかねないので、さっさと奥の部屋に行っちゃってください!」
どうぞ~という感じで受付場の奥にある部屋に通される。
今の会話で察せたと思うが、俺はギルド長と関わりがある。彼女からはよくギルドの仕事を直接依頼されたり、ギルドについて話を聞く機会も多かったため、クエスト関係の仕組みなどに詳しくなった、というわけだ。
俺たちは、奥の部屋の扉の前まで来て……立ち止まる。
「エリック様、どうされましたか?」
シエナが何かあったのか、と聞いてくるが……いや、大したことではないのだ。ただ、彼女に会うのには少し気合を入れないといけないというか……
ただ、シエナを心配させるのも良くないよな。よし! 気合い入れて覚悟を決めたぞ!
「いや、大丈夫だ。問題なーー」
「エリック! あんたそこにいるのね!」
扉がぶち破られ、いきなり目の前に足が飛び出してきて、俺の腹部にクリティカルヒット!
そのまま俺は後ろの壁に激突し、ノックダウン!
いつもの光景だった。今日は気を抜いていたというのもあるが……毎回毎回ドアを足でぶっ壊して俺に腹パンをカマしてくるのはギルド長としてどうなんですかね……?
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