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「お前、この私を見て気づくことはないか。フハハハハ」

「…や、やめて。…気づくこと?いったいなんのことでしょう?」

「気づかないのね。東東京の姫の親衛隊だと思ったのだがな。違うの?」

「は!よくおわかりになりましたね。もしかして、私のことをご存じなのですか?」

「知らないわ。まったく。そういえば自己紹介がまだだったわね。お前が思っている通り、私は北九州連盟の姫王。名前は純白蓮華。文字通りピュアな乙女よ」

「ピュアな乙女。さすがです」

「ちょっとお前、真に受けないでよ。冗談じゃない」

「冗談。さすがです」

「そんなかしこまらなくても大丈夫だから。気を楽にしなさい。くすくす」

「は!」

そういわれて俺は立ち上がった。やっぱり姫様というだけはあって、魅力的な顔立ちをしている。俺は再び姫様のブローチをみた。竜のブローチで二つの竜が絡み合う。あれ?絡み合ってない。一対の竜のはずが片方しかない。

「気づいたようね。そう、ブローチを片方、盗まれてしまったの。だからお前、取り返すの手伝ってくれないか?」

「そういうことなら。わかりましたでござる」

俺は空中液晶型スマホを開き、情報屋にメールを送り、まあ入っていえばいい話なのだが、あたりさわりのない理由、つまり渋滞に巻き込まれたのような内容にした。

「ござる?まあいいわ。それにしても、みすぼらしい恰好ね。お前、東東京の親衛隊に入っているんだろう?そうは見えないな」

「こういうスラムではこういう、少しみすぼらしい恰好のほうがいいんですよ。蓮華様」

「蓮華でいいわ。私はお前のこと御剣ってよぶから」

「わ、わかりました。蓮華…ポッ」

「な、なによ。あ、赤くなってるの?赤くならないでよ。こっちまで恥ずかしいでしょ!」

「こちらも冗談です」

「おあいこってわけね」

「はい。蓮華。私も東東京の姫様に仕えているので、仲良くさせてもらっています」

「気に入られているんだな。なんとなくわかるよ」

「いえいえ、そんなことは。蓮華、どこらへんで盗まれたとかはありますか?」

「おそらくだが、さっき込み合ったところを歩いていて、その時盗まれたんだと思うわ。くすくす」

「なるほど。では聞き込みをしてみましょう。俺の超能力。《サードアイ》(心眼)と《シナプス》(感覚共有)を使います。説明します。《サードアイ》は相手の考えていることを読み取る。《シナプス》は自分の感覚をほかの人と共有することです。これから聞き込みをして《サードアイ》で相手の考えを読み取ってそれで《シナプス》で蓮華に直接伝えます」

「お、おおお、すごいな。そんなことができるんだ。さすが、世界の首都の、東東京で親衛隊を務めているだけはあるわ。じゃあ、どこから。あとどうしてフィリピンなんかにあなたみたいな人が来てるのか教えてよ。あなたのこと気になってきちゃった。くすくす」

「歩きながら話しましょう」

「そうね、時間は無駄にできないもの。くすくす」

微笑みがすっぱいれもんのようにさわやかでさっぱりとしていた。
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