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「愛してるって言って」

「あ、愛してま、す」

「聞こえないわ。周りの声がうるさくて。ぜんっぜん、ぜんっぜん、気持ちも伝わってこないし、本当に愛しているの?愛してるなら、今すぐに私のところに迎えに来て」

「ただいま任務中でございます。お嬢様。では」

「ちょっとまちなさぁぁぁ」

ガチャ。
俺は今マニラにいる。フィリピンのマニラはスラムと貴族階級が同居した町だ。人口密度は高い。治安はスラムの方は悪く、貴族のいる方はよい。俺は諸事情があってスラムの方にある情報屋にやってきていた。今、目の前にあるのが情報屋だ。スラムの割にはきれいな建物だ。なんかよくわからない装飾がついている、象牙だろうか。怪しげな雰囲気の店だ。外は黄色いペンキで塗られていて、中はピンク色のライトが照らしている。おそらく風俗店を模しているのだろう。
俺の名前はラインシュタット御剣。東東京に住んでいる。今日本は一つの政府が支配しているが、実情はいくつかの地域に分裂している。これから俺はある人物に会う。だから、自分の容姿をスマホで見て直すことにした。スマホは小型の端末を操作することで空中に画面が展開するようになっている。指で直感的に操作する。

「うん。今日も俺はかっこいい」

「あら、おかわいいこと、くすくす」

その声を聞いて右方向に振り向くと、日傘をしたふわふわのドレスのような黄色のワンピースを着ている女の子がいた。顔は子供のように愛らしく、髪型はポニーテールで金髪。このスラムにいるような女の子ではないな。どうしてこんなところにいるんだろう。
待てよ。そのブローチは!

「王様の証!姫王様でございますか!?」

俺は片足をひざまずいた。こんなとこで会う方ではない。ここは異国の地だし、そういえば、この顔、知っている。確か北九州連盟の姫様。日本はいくつもに分かれているが、北九州連盟は北九州に位置している。

「そうじゃそうじゃ。くすくす。このしゃべり方どうじゃ?」

「は!おじいさんみたいかと!」

「ぐさ…おじいさんみたい。そうか、ならやめる。くすくす」

「あなた様のようなお方が、いかようにしてこの場所に?」

「ああ、にげてきたの。くすくす」

「逃げてきた?」

フィリピン王国から逃げてきたということだろうか。王朝は貴族の住む城下町の最も頂点のカテドラルに居を構えている。となると、拉致されたのだろうか。そのような連絡は入っていない。俺の住む東東京と北九州連盟は仲はあまりよくないからだろうか。しかし、となると俺も動かなくてはならない。なぜかといえば俺は王直属の親衛隊に所属している。もしここで俺が手柄を立てれば、東東京での地位も向上する。そうすれば俺の目的である親衛隊の幹部にもなれるかもしれない。

「ああ、そう。くすくす」

「フハハハハハ」

俺は高く笑い声をあげて、しまった。

「どうしたの?くすくす」

「いや……。もちろん、姫様にあえてうれしくてわらってしまいました」

つい、気持ちが高ぶって笑ってしまった。

「そうか。それは当然だな。フハハハハ」

「はい。あまり真似はしないでください」
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