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神様と行く、うどんの旅とその切っ掛け

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 美東で休憩と給油を済ませた上に、今回の旅というかストレス発散の暴走ドライブの目的地も決まった事で雪乃の機嫌はすこぶる良かった。このまま一気に滋賀まで行ってもいいなと思いつつ、しかしここから先は走った事のない道なので無理は禁物と自分に言い聞かせる。 実際広島に入った辺りから急にトラックの通行量が増えた。前と後ろ、あげく追い越し車線にまでトラックが来た時はちょっと泣きそうになったくらいだ。とりあえず次のサービスエリアでもう一度休もう、なんならそこで仮眠しよう、と雪乃は必死にハンドルと握り締めた。
 そうしてやっと辿り着いた広島の小谷サービスエリアに立ち寄る。そのあまりの立派さに雪乃のテンションはここでも上がった。店内の広さは元より、トイレの整備され方がこれまで雪乃の知っているサービスエリアの比ではない。蛇口に手を差し出すとお湯が出るのにも大はしゃぎしてしまう。

 あ、これだいぶ疲れてるな……とここでようやく自分のやたらと高いテンションの理由に気が付き、やはりここで休憩して良かったと雪乃は己の判断を褒めた。洗顔と歯磨きを済ませ、早々に車に戻って毛布とコートに身を包んで眠りに落ちた。
 よくもまあ軽自動車の狭い中で眠れるね、と言われるが、雪乃にしてみれば夜行バスの方がよほどしんどい。シートを倒せば余裕で眠れるし、あとなによりも他人を気にしなくて済む。雪乃にとっては愛車の中はちょっとしたビジネスホテルと変わらないくらいだ。
 そうしてぐっすり眠ったおかげか、朝日と共に目が覚めても疲労感は何もなかった。むしろビックリするくらいである。きっと初めての土地だから気が昂ぶっているのだろう。雪乃は大して気にもとめず、トイレで身だしなみを整えると元気にフードコートへ飛び込んだ。 ご当地お薦めの品らしい尾道ラーメンを朝食にして腹を満たす。九州ではまず味わえない豚骨以外の味だ。あっさりとした中にも出汁のうま味が効いている、様な、気がする。

「……所詮、豚骨で育った人間には他のラーメンの味なんてわかんないのよ……」

 美味しいと思う。また食べたいとも。しかし悲しいかな豚骨スープで育った九州人、それ以外の味のラーメンはラーメンだとは認識しづらい。なんというか「麺類」という大まかにも程があるジャッジになってしまう。もっともこれは雪乃の極端な主観であるので、他の九州の人間に同意を求めても苦笑される事が多いのだが。

「まあいいや。とにかく美味しかった! ごちそうさまでした!!」

 快眠できたおかげで疲労感は無い。腹も満たされたので元気溌剌。そうして雪乃は愛車に乗り込むと、周囲に気を付けつつアクセルを踏み込んだ。


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