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四章
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しおりを挟む「……でも、それでは、ダイアナ様との仲が拗れてしまったりはしませんか?」
ミーサの取った行動はアニタの名誉を回復させる為のものではあるが、それは逆にエリナとロニーを追い詰め、そしてエリナの親友であるというダイアナにとっては許しがたい離反行為ではないのだろうか。それにより今後ミーサが酷い事になるのではないか。それがアニタは心配でならない。
けれどミーサはさらに笑みを深める。
「もういいんです。家のため、だなんて言い訳をしていましたけど、結局はわたしが萎縮して嫌々従っていただけなんですから。だから、アニタ様に勇気を貰って行動できたのがわたしはとても嬉しくて。あ、両親にもきちんと話をしました。そうしたら、これまでダイアナの言う通りにシンシア様や……他のご令嬢に嫌がらせをしていたことを怒られましたけど、今回の件についてはよくやったと褒められたんです!」
「アニタの為に勇気を出したミーサに私もとても感動したの……これからは出来る限り私も支えていくわね」
それはつまりはウィッキンズ伯爵家がミーサの実家に付くという事だ。ならば一安心かとアニタはホッと息を吐く。
「ヒューベルト様もお助けくださるそうだから、ミーサのご実家も安泰ね」
「はい、これ程心強いこともありません!」
その安心も即座に吹き飛ばされたが。
ゴハッ、と咽せるアニタにミーサとシンシアの波状攻撃が繰り出される。
「アニタは知っていて? ヒューベルト様ったら王宮でも屈指の夜会嫌いなのよ。どれだけ誘われても原則お断りするの」
「そんな侯爵様が、アニタ様の話を聞いた途端すぐに予定をお調べになって、エリナ達が参加する夜会に姿を見せたんですよ! わたしもその場にいたんですけど、もう……本当にすごかったんです!!」
「アニタが傷付けられている事にどうしても我慢できなかったんでしょうね……ええ、その気持ちは私も良く分かるわ……大切な友人が、愛する人がそんな状況だと知ってはいてもたってもいられないもの」
きゃあ、とミーサが一際高い声を上げる。
「やっぱりそうなんですね!? うわぁ……素敵……」
誤解が増えた。この場合は仕方がないかもしれない。何しろシンシアの言い方がすこぶる不味い。これで誤解するなと言うのが無理な話だ。
「いえ……あの……侯爵様は正義の方なので……純然たる善意で動いてくださっているだけで……」
それでもアニタは否定をする。だって本当に、二人が考えている様な秘められた恋だとかなんだとか、そういった甘ったるい感情は欠片も存在していないのだ、二人の間には。
「あの時の侯爵様のお姿をアニタ様にも見ていただきたかったです……まるで物語の主役の様でしたよ!!」
それを直接目にできた者の責務だから、とでも言わんばかりにそこからミーサは怒濤の勢いで話し始めた。
いかにエヴァンデル侯爵がアニタを愛しく思っているかという話を。
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