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オマケ

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 うわあ、とまるで自分が痛みでも感じているかのような声でフェリシアの指がグレンの背中――肩甲骨から下にかけて走る赤い筋をそっと辿る。傷跡は細く薄いので、すでに塞がりかけているが、それでも無痛というわけにはいかないだろう。

「え、まってくださいグレン様、よく見たらこんな感じの傷がいっぱい……?」

 薄らとだが、新しい傷の下にも同じような跡がある。こちらはもう治りかけではあるようだが、そんな傷跡の上に真新しい傷があるのだ。

「薬……!」
「フェリシア、本当に大丈夫だから」
「だからちっとも大丈夫じゃないですってば! これ、傷跡がずっと治らなかったらどうするんですか!」
「俺にとっては名誉の傷だから、むしろ消えない方がいい」
「なんで……!」

 あれ、と思った時にはすでに見慣れた光景だった。グレンの顔を見上げるようにして、その背後に寝室の天井が見える。
 さらには見つめてくるグレンの視線がこう、とてもじゃないが朝の爽やかな景色に似つかわしくない。

「グレン様……ええと、おはようございますをしたところですが」
「フェリシアが俺の自慢の証を消そうとするから」
「自慢……じまん?」

 普段はとても温和で優しく、慈しみの視線を向けてくれるグレンだが、時折こうしてフェリシアをからかって遊ぼうとする意地の悪さをみせてくる。今もまさにそれだ。ここで返答を間違えるとより一層からかわれてしまう。それは避けたいと、フェリシアは懸命に考える。 しかし、なにしろ美形の笑みが至近距離だ。普段は見せない意地の悪さという希少価値までついている。これでは考えなんてまとまるわけがない。

「美形の圧がひどい」

 フェリシアは両手で顔を覆う。グレンは楽しそうに喉の奥で低く笑いをあげた。

「そろそろ慣れてくれてもいいんじゃないか?」
「グレン様はご自分の魅力をちっともわかってない!!」

 毎秒更新される魅力値だ。慣れるどころかおいていかれる一方のフェリシアである。

「フェリシア」
「なんでしょう……」
「そろそろ答えを出してくれないと、俺の我慢も限界に近い」
「我慢って」
「この体勢だとまあ、そういう欲の一つや二つ抱いてしまっても仕方がないと思わないか?」

 グレンの言わんとするところを理解した途端、フェリシアの脳裏に昨夜の記憶が鮮明に蘇る。



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