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オマケ

あなたの代わり・1

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 今日も今日とてグレンの帰宅は深夜に及ぶ。愛妻の成分が枯渇しきっている。いい加減禁断症状が出そうだと、グレンはふらふらと妻――フェリシアの眠る部屋の前へ立つ。すでに寝ているだろうが、一応はと軽くノックをすれば人が動く気配がする。うわ、と小さな悲鳴が扉の向こうから聞こえ、思わず返事を待たずに開けそうになる。
 が、その寸前でグレンの目の前に光が差した。
 実際は暗い部屋の中からであるので、光が差し込むのは廊下から室内へであるが、少なくともグレンの目にはそう見えた。つまりは愛しい妻の満面の笑みが眩しくてたまらない。

「グレン様おかえりな」

 言葉を待たずに力任せに抱きしめてしまう。フェリシアはたまらず「ぐぅ」とうめき声を上げるが、グレンは力をかすかに緩める程度だ。

「ただいまフェリシア。起こしてしまってすまない」
「いえ、寝ようかなどうしようかなってベッドの上でゴロゴロしていただけなので、寝る前にグレン様とお会いできて嬉しいです」

 フェリシアもグレンの背中に両腕を回して抱きしめ返す。

「そうか……だったらフェリシア、少しだけ話をしないか? せっかく君と会えたから、短くてもいいから触れ合う時間が欲しい」

 至近距離から直球でグレンの「甘え」が飛んでくる。フェリシアは悲鳴をあげそうになるのを必死に堪えながら頷いた。

「でもグレン様は明日も早いんじゃないですか?」
「昼頃までゆっくり休めとの、殿下のお達しがあるから大丈夫だよ」

 グレンが忙しいという事は、その護衛の対象であるフレドリックも忙しいという事だ。婚約者であったオリアーナと、ようやく結婚式を終えたばかりの蜜月期間。で、あったはずがなぜだかとても忙しい。視察に行ったり来られたり、オリアーナと二人で参加はしていても、二人それぞれが忙しくしている。結果、悲しいほどに共に過ごす時間がとれない。それに付き合わされる形のグレンも同じで、なんとか無理矢理調整をつけて明日の昼までの時間をもぎ取ったのだ。
 グレンの答えにフェリシアは顔を輝かせる。お茶でも淹れますね、とグレンの腕を引いて部屋の中へ誘いソファへ座らせると、フェリシアは鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌に茶器を広げる。

「お茶でも飲もうかなって準備はしてみたんですけど、なんだかもういいかなってもなっちゃって。お湯が冷めちゃう前でよかったです」


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