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小話
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しおりを挟む「私だって子どもを生みたいなって思うのはグレン様だけですからね!!」
見事なカウンター攻撃を喰らった。しかも真正面から。あげく本人は無自覚だろうに羞恥となぞの怒りにも似た感情で瞳を潤ませた上で顔を赤く染めている。つまりは可愛いが過ぎて、グレンは半身を寄せた状態でビシリと固まった。
「色々育児書とか読んだり、お子様をお持ちのご夫人方にお話聞いたりする度に子どもを持つのって大変だなって思うし、それを私ができるかなって不安になったりするんですけど、でもそれでもやっぱりグレン様の子どもは欲しいし生みたいし、その権利があるのは私以外は嫌だなって思うわけです!」
「……うん、そう……そうなんだ、け、ど……フェリシア……」
愛しさと、それを上回る羞恥でグレンは顔を上げる事ができない。不様な態度でいるのはどうなんだと我ながら思いはするが、しかしこの真っ赤に染まった顔を見せるよりかは幾分かマシなはずだ。というか、まずもってこの顔をフェリシアに見られるのが恥ずかしすぎて堪らない。
一方のフェリシアは混乱の極みすぎて最早何がなにやら状態だ。自分が今話をしている中身すら理解できていないだろう。だからこそ、グレンをさらに追い込んでいく。
「オリアーナ様じゃないですけど、私だってグレン様と一緒にいたいなっていう一番の我が儘をすでに叶えてもらっているので、これ以上我が儘っていうか、お願いごとってないんですけどね子どもが欲しいっていうのの他には!」
「俺も……そう、だ……けど本当にちょっと……お願いだからフェリシア、少しだけ待ってくれ……」
「もちろん今すぐ子どもが欲しいって話じゃないですから! オリアーナ様とフレドリック様のご結婚がまず一番ですもんね!」
「じゃなくて、そうじゃなくて、フェリシア」
「グレン様? 大丈夫ですか? なんだか耳まで真っ赤になってますけど!」
大丈夫ではない。瀕死の重傷もいいところだ。なのでせめて落ち着くまで黙っていて欲しいと、切にそう願うけれども、そんな希望を言葉にのせる前にフェリシアがトドメを刺しに来た。
「あの、でも、今はまだもう少しだけグレン様を一人占めしていたいですって言うのが正直な気持ち」
我慢、と言うかもう羞恥心の限界だった。なのでグレンは物理的にフェリシアの口を塞ぐ。ベッドの上で交わすには軽いけれど――しかしフェリシアを黙らせるには効果的だった。
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