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小話
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しおりを挟む「ロイド様ってあの方よね? グレン様の腹心の部下って言われてる」
「背の高い、身体もとてもがっしりしておられる方ね」
もじもじとして否定も肯定もできないキャロラインに変わりマーティナが答えを返す。きゃあ、とミッシェルは黄色い声を上げた。
「やっぱり! キャロライン様がグレン様の婚約者候補って言われてたけど実際はそうじゃなくてただ仲が良かったってだけで、でもやっぱりキャロライン様ったらなにかとグレン様を見てらっしゃる……って思ってたけどー! あれってロイド様を!」
「ほら、だから言ったでしょう? あなた見つめすぎなのよ」
「仕方ないでしょう! だってつい目で追ってしまうんだもの!」
呆れつつも楽しそうなマーティナに、キャロラインも珍しく感情を露わに言い返す。よしよし、と完全に話の中心が自分から外れたので、フェリシアはここぞとばかりに便乗する。
「キャロライン様が追いやすいように、私も頑張ってますからね!」
「フェリシアにまで協力してもらっているの?」
「誤解をさせたままだなんて出来ないでしょう!? だから……」
「ロイド様がお好きなんだと、初めてお会いした時に教えていただきました!」
そう、キャロラインはずっとグレンの部下のロイドに思いを寄せていたのだ。彼と少しでも関わりを持てたらと、元から家同士で交流のあったグレンとも良い友人関係を続けていたわけで。そこに友情はあっても愛情はなく、だからグレンの婚約者、をすっ飛ばして夫婦となったフェリシアにはまっ先にその事を告げたキャロラインである。
そんな彼女であったから、フェリシアも心を開き、できる限り彼女とロイドの接点の役に立てればと今も奮闘している。
「もう! 私の話はいいでしょう!?」
「いいえよくないですロイド様はとても良い方ですけどやっぱり恋愛沙汰には鈍いというか無頓着だそうなのでやっぱりキャロライン様からですね!」
逃げようとするキャロラインにフェリシアは追いすがる。ここで逃げられてはまた自分に矛先が向く、というのもあるが、それと同じくらい二人の仲にやきもきしているのも原因だ。
「そうねえ……私もそろそろ貴女と彼には進展して欲しいわ」
いい加減進展しない悩みを聞くのも大変なの、とそこにマーティナが加わる。
「ロイド様も見た目は厳ついけど優しいしちょっと不器用な所があって可愛い、って実は人気あるんですよ。ここは遅れを取るわけにはいきませんよキャロライン様!」
当然ながらミッシェルもノリノリで参戦するものだから、キャロラインに逃げ場はない。
そうして茶会はいつしか恋の作戦会議へと移行していった。
いついかなる時も、恋する乙女の話は白熱する物である。
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