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 グレンもルイスの事は知っている。そういった意味でアレであるというのも。なんなら目の前で見てしまった。
 ある日、先を歩くジュリアに気付かれないようにそっと後ろを付け、それでいて楽しそうに軽く手を前方で横にゆらしているルイスがいた。どうして声を掛けないのだろうか、とか、いったい何をしているのだろうかと、つい興味本位で尋ねてしまったのが間違いだった。
 グレンに見つかったのが恥ずかしいのか、少しばかり照れた様にしつつルイスが口にしたのは

「ジュリアに首輪をつけて散歩してるつもりだったんですよ」

 と言う、なんとも理解しがたい言葉だった。

 いや、言葉としては理解はできる。だが共感ができない。全くできない。できたらむしろ終わりだとすら思う。

 もちろん実際にはつけませんよ、あくまで妄想です、と笑うルイスは本当に愛おしそうにジュリアの背中を見つめており、彼の深い愛情を感じることができた。が、しかし。

 あ、なるほどこれがホンモノ、とグレンはどうにか「まあ、ほどほどに」とだけ返し、それ以降ひっそりと部下にジュリアとルイスの様子を見守らせた。ジュリア本人にも

「なにかあったら……いいや、なくてもだ、貴女が少しでも不安に思うことがあったら遠慮なく相談してくれ」

 そう切々と訴えた。

「……それはつまり、グレン様に心配をかけるようなことをあの馬鹿が口にしたわけですね?」

 お互い詳細には触れず、その共通認識だけで充分だった。
 そんなことをツラツラと思い返しつつ、そうかアレと同じ事を口にしているのかあの人は、とフレドリックのそちらへの方向の進み具合にグレンは胃が痛くなる。

「オリアーナ様はたいそう健康体であると医師からのお墨付きもいただいているじゃないですか。なにを勝手にオリアーナ様の寿命を縮めてらっしゃるんです」
「縮めてはいない!」
「同じことです」
「まあまあ……あの、フレドリック様? 絶対に、とは言えませんけれど、それでも多分、私のコップの水はまだまだ満杯ですから、あまりそんなに心配なさらないで?」
「わかっている……すまないオリアーナ、君のこととなるとつい冷静さを欠いてしまって」
「私もフレドリック様も今から健康に気をつけて、一日でも長く一緒に過ごせるように頑張りましょう! 悲しくなるのは後回しです」
「君のその前向きな考えが本当に大好きだよオリアーナ!」

 途端に顔を輝かせるフレドリックに、今回もまたオリアーナの明るさというか前向きというか細かいことは気にしない性格に救われた、とグレンとジュリアは心の中で盛大な拍手を送った。



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