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小話
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しおりを挟む「ええと、ポリー?」
「いや、違うんだポリー」
「だって! グレン様今そう仰って!」
かんきん、と聞いてポリーはずっと考えていたが、彼女の語彙の中に「監禁」の文字はまだ登録されていなかった。なので懸命に考えて考えて導き出した答えが即ち
「換金、じゃないから」
カーティスは軽く頭痛がするのを堪えつつそう訂正を入れるが、当然ポリーはそれで納得はしない。
「違うんですか? それじゃあ」
なんなんですか? と続くポリーの問いを、隣に立つマリアがその口に飴玉を放り込んで黙らせる。流石、とカーティスが小さく拍手を送ればマリアも軽く頷いた。
「フェリシア、俺はまかり間違っても君を金に換えたりはしないからな!」
「わ、わかってますよ! あれですよね今のはこうどこかに閉じ込めたりする方のかんきん、ですよね!」
そう、と力強くグレンは頷き、そしてそこでようやく気付く。
「条件による――?」
ほぼほぼノーモーションからのグレンの暴投であったのに、フェリシアはそれを「条件によります」と打ち返していた。
「……よるのか?」
まあそう突っ込むよな、とカーティスは改めて頷く。自分も真っ先にそう思った。
問うた側でありながら、驚きに目を丸くするグレンに対しフェリシアは少しばかり恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。これまた迂闊な発言をしてしまったと後悔しているのだろう。そこで終わればいいだろうに、そのまま話を続けるのがフェリシアである。
「一人で閉じ込められてるのはさすがに嫌ですけど、グレン様が一緒にいてくれるならいいかなって」
おっとこれは、とカーティスはチラリと主人を見る。予想通りグレンは耳まで赤く染めて固まっており、これで氷の騎士とか呼ばれているのは嘘だろうとカーティスは苦笑するしかない。
「あ、別に深い意味とかなくてですね! ほら、グレン様いっつも忙しいしなかなかお休みも取れないし屋敷にも帰ってこなかったりする日もあるから、私が監禁されてる時にグレン様も一緒だったらゆっくりお休みできるかなと!」
どう言い募った所でグレンに対する愛情しか感じられない。真っ赤になりつつ身振り手振りで説明するフェリシアと、同じく赤くなった顔をこちらは手で隠しつつ黙って聞いているグレン。とんだ夫婦の惚気を聞かされている我が身が辛い、とカーティスはぼんやり視線を外に向ける。天気が良い。このまま散歩か昼寝でもできたらなあ、と現実逃避が進む中、仲睦まじい夫婦のズレた会話は続いていく。
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