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小話
12※
しおりを挟むもう何度目になるか分からない絶頂にフェリシアは悲鳴の様な声を上げた。ビクビクと身体は大きく跳ねるのに、腰から下をしっかりと押さえ付けられて上半身しか動かせない。その程度の動きで逃がせる様な快楽ではないので、フェリシアの身体はもうずっと苛まれている。
辛い、気持ちいい、よすぎて――辛い。
こんなにも気持ちがいいのに、なのに一向に飢餓感が消えない。快楽だけではどうしても足りないのだ。
「ふ、ぁッ、あ、ぅあぁ、ああッ……」
左脚と同じ様に右脚も散々舐られ、今は秘所を責められている。指で触れられるのでさえ恥ずかしくて正直嫌なところはある。けれど、ここを解さないとかえって辛いからと、どうにかこうにか必死に耐えている場所。そこをまさか、口で、舌で、こんなにも執拗に責められる日が来ようとは。
「ぅあ……――あーッ!!」
親指でグリ、と包皮を押され剥き出しになった花芯はもうずっとグレンの口の中だ。そこでひたすら舌で突かれ、舐め、時には扱かれてと様々な刺激を与えられている。このまま溶けてしまうのではないかと恐怖すら感じてしまう。時々戯れにズルリと舌がフェリシアの中に入り込み、入り口から溢れる蜜を音を立てて吸い、その音にフェリシアは聴覚からも快楽を拾って全身を震わせた。
自分の身体の中を舐められるだなんて、通常であれば恐怖と嫌悪しかないはずだ。だがフェリシアは一瞬の驚きこそあれ、負の感情を抱くことはなかった。
だってこれは、自分の身体に触れているのは、触れていいのはこの人だけだから――
ぐうん、とフェリシアの中で快楽が大きなうねりを持って駆け巡る。視界が白み、キーンとした音が鼓膜に響いてそして
「ぃ……あああああッ!!」
パチンと音を立てて弾けた。
背中を大きく反らせ、シーツを握り締めた指が白くなるほど力が籠もる。数秒の間そうやって全身を硬直させ、やがて糸が切れた人形の様に力なくシーツに身を沈めた。
「……ぐれんさまぁ……!」
涙が止まらない。嗚咽さえ漏れそうなその様子にようやくグレンはフェリシアを責めから解放する。
「フェリシア――泣かないで、フェリシア」
額に唇を落としながら、グレンは親指の腹でフェリシアの目元を優しく拭う。
「グレンさま……手を、うごかしても、いいですか」
嫌だったら手を使って止めろと言われた。フェリシアはグレンにされて嫌な事は一つもない。だから、勝手に動いて、彼に嫌な事をしたのだと勘違いだけはされたくない。
グズグズと鼻を鳴らしながら若干呂律の回らない口でそう言えば、ふ、とグレンは小さく笑う。それはフェリシアの大好きな、普段の優しい彼の笑みだった。
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