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小話
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しおりを挟む「グレンさまぁ……!」
どうにかして頭をずらし、少しでもグレンの口付けからフェリシアは逃げる。熱に浮かされた様に赤く染まった頬と潤んだ瞳。すっかりできあがってしまっている状態でありながら、フェリシアはそれに気付かず必死にグレンを睨み付ける。いくらなんでも性急すぎやしませんか、少し話を聞いてください! などと、そんな想いを視線で訴えてみるがこれは当然グレンを煽る結果にしかならない。
喉の奥で低く笑いながらグレンはフェリシアの耳元に顔を寄せ、殊更甘く響く様に囁く。
「愛しているよフェリシア」
「も……やだぁ……」
その声だけでもフェリシアは達しそうになる。実際軽く達してしまった。それがさらにフェリシアの羞恥を煽り涙が浮かぶ。
「俺の決死の告白を拒否するとは酷いな」
「……どこがですか……!」
酷いのはグレン様じゃないですか、とフェリシアはそっぽを向く。
「フェリシア」
「……はい」
「そんなにも耳と首筋を剥き出しにするってことは、まだまだ足りてないって」
「足りてます! 充分お釣りがくるくらい足りてます!!」
慌ててフェリシアは顔を正面に戻すが、目の前に広がるグレンの表情にまんまと引っかけられたと気付く。
グレンは今度は逆の方に顔を埋め、そうしてまたフェリシアの耳と首筋を責める。
「やッ、あッ、ああッ……くッ……ん、ぁあ……!」
皮膚の薄い所にじわりと歯が立てられる。宣言通りグレンは痛みは与えない。代わりにゾクゾクとした刺激がフェリシアの全身を駆け巡る。これも宣言通り、気持ちいいという事しか与えてこない。
甘噛みした場所を大きく広げた舌でゆっくりと撫でたかと思えば、直後に舌先を尖らせてまた撫で上げる。そのまま耳に辿り着けば反対側でされたように舌で舐られ、フェリシアは一向に休む暇がない。ずっと快楽を刻まれ続け、ぐずぐずに蕩けていく。
どれほどそうされていたのだろう、ようやく解放された時にはすでにフェリシアの気力も体力も尽きかけていた。行為としてはまだまだ序盤、むしろ始まったばかりだというのに。 いまだに恥ずかしすぎて全身真っ赤になってしまうフェリシアであるが、それでも身体を重ねる事にはだいぶ慣れたつもりであった。そう思ってしまうほどにグレンに頻繁に求められ、フェリシアも同じ様に求め返していたというのに。
今まで手加減されていた――そうひしひしと痛感してしまった。たった、これだけの事で。
「フェリシア」
呼ぶ声も、向けてくる視線も熱量が違う。穏やかで余裕がある様に見えるその奥で、ぐつぐつと煮え滾る欲望が隠れている。この欲に飲み込まれてしまう、溶かされてしまう。そう察した途端、フェリシアの身体の奥にカッと熱が灯った。
知らず息を飲み、そして肩がピクリと跳ねる。その様子をつぶさに見、グレンは緩く口角を上げた。
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