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当て馬の言い分
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しおりを挟む「とにかく、そんなくそ真面目で頭の固い二人だから俺の話なんて聞きやしないし相手が自分を想っているだなんて考えもしない。このままだと間違いなく君は王太子の側室として召し上げられるぞ」
「いやあああああそんなの絶対いやあああああ!!」
推しカプの邪魔になるのも、面倒くさい貴族社会に巻き込まれるのもどちらも全力でお断りしたい。ノエルは頭を抱えて地面に蹲る。うああああ、と低い呻き声を吐き続ける事暫し。ガバリと身を起こすと、目の前の青年に向かって高らかに宣言した。
「わたし出家します」
「――出家」
今度は青年が鸚鵡返しをする番だ。驚きのあまり、と言うよりかは何を馬鹿な事をと目が物語っている。
「お二人の邪魔をするくらいなら、遠く離れた修道院に引きこもって神に身を捧げつつひたすらお二人の幸福を祈ります!」
追い込まれすぎると正常な判断が出来辛くなる。まさに今のノエルがその状態だ。
「近くどころか遠くからでもお姿が見られなくなるのは辛いけど……うん、本当に辛いですね! でも邪魔してユーフェミア様に嫌われるくらいならそっちの方が何万倍もマシーっ!! 無理! 侮蔑の眼差しとか向けられたらその場で首吊るレベルで無理すぎる!」
想像しかけただけでも涙が出そうだ。こんな悪夢でしかないルートを回避するにはこれだこれしかない何という天啓かと、そうノエルが神に感謝を捧げていると青年が悪魔の様な事を口にする。
「どうやって?」
「……どうやって、とは?」
「どうやって出家するつもりだクロフォード嬢」
「……どうしたら、できますかね?」
出家する、と言ってはみたものの確かにその方法をノエルは知らない。これまで読んできた恋愛小説の中で、出家すると宣言したヒロインはいたけれど、それのどれもが具体的な話はなかったし、全部が寸前でヒーローと結ばれて出家まで至らない。ノエルは伺う様に青年を見つめてみるが、無情にも沈黙で返される。
「その顔知ってる顔ですよね教えてくださいよ黒い人!」
「君は今侯爵家の人間だろう?」
「露骨に話を流した」
「わざわざ侯爵家に迎え入れた人間で、しかも【加護なし】を出家なんてさせるわけないだろう」
侯爵家しかり、宰相しかり。それこそ持てる権力をフルに使って阻止してくるだろう。それに、そもそも移動するための足がない。今のノエルの移動は侯爵家の馬車だ。修道院に駆け込みたいので馬車を出してください、と願い出て聞き入れられようか。
「自由に動くことすらできないなんて! 貴族様面倒くさい!!」
ノエルは必死に考える。このルートがダメならばではどうしたらいいか。ウンウンと考え続け、そうしてまた天啓を受ける。
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