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当て馬の言い分
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しおりを挟む「……は?」
「他に心に決めた相手がいるんじゃないか、今はいなくても、いずれそういう相手が出てくるんじゃないか、無理をして自分に付き合っているんじゃないかと」
「はああああ!?」
ノエルは大声を上げる。ありえない、だってあの二人は自分相手に幾度となく惚気てくれている。
「あ、でもそれはあくまで自分の気持ちってだけだから、相手がそうだと思ってな……いやいやいやありえなくないですー!? そりゃはっきりなにか仰ってるのを見たことはないですけど、でも三人でいる時でもふとした瞬間あ、お好きなんだな、って分かるくらいの態度とか出てますけどおおおおお!?」
目の前で突然始まるイチャつきタイムにノエルは何度叫びを上げそうになった事か。
「え、お二人とも鈍感!?」
王太子とその婚約者に対しあまりにも不敬な単語も出てしまうが、ノエルはそれどころではない。
「そんなの周囲がもっと……っていうか黒い人幼馴染みなんですよね羨ましい!! ってちがくて、黒い人が言ってあげたら済む話では!?」
ノエルのもっともだ、と言わんばかりの言葉に青年はまたしても重く息を吐く。
「言ってる」
「まさかの」
「アレクシスには何度も言っているし、ユーフェミアも毎回毎回しつこいくらいに相談をしてくるからその度に俺は律儀に返している」
お前が向こうを好きだと思っている様に、向こうもお前の事を誰よりも好きだと思っている、と――
「ユーフェミア様から毎回毎回しつこいくらいに相談受けてるんですかなにそれ羨ましい。自慢? これだけ俺はアイツに信頼されてるんだっているマウント取りですか悔しい」
「君についての相談だけどな」
「それについては誠に申し訳ないです」
でもわたし悪くなくない? と即座に思い直すが、それはひとまず横に置く。
「君といる時のアレクシスがとても楽しそうだと」
「わたしとアレクシス様の話なんて九割方ユーフェミア様の話なんですけど」
残り一割は天気の話と食べ物の話しかした事がない。
「それでも天気の話してるとユーフェミアは雷が苦手だとか、食べ物の話だとあれで意外と辛い物も平気で食べるんだよとか、ユーフェミア様豆知識が入ってきますよ?」
そう、王太子がとても楽しそうにしているのは間違いなくその話題の主が愛しの婚約者であるからだ。だと言うのに、それが本人には伝わっていないのはあまりにも悲しすぎるのではないか。
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