他人の恋はままならぬ

新高

文字の大きさ
上 下
9 / 18
当て馬の言い分

しおりを挟む



「……は?」
「他に心に決めた相手がいるんじゃないか、今はいなくても、いずれそういう相手が出てくるんじゃないか、無理をして自分に付き合っているんじゃないかと」
「はああああ!?」

 ノエルは大声を上げる。ありえない、だってあの二人は自分相手に幾度となく惚気てくれている。

「あ、でもそれはあくまで自分の気持ちってだけだから、相手がそうだと思ってな……いやいやいやありえなくないですー!? そりゃはっきりなにか仰ってるのを見たことはないですけど、でも三人でいる時でもふとした瞬間あ、お好きなんだな、って分かるくらいの態度とか出てますけどおおおおお!?」

 目の前で突然始まるイチャつきタイムにノエルは何度叫びを上げそうになった事か。

「え、お二人とも鈍感!?」

 王太子とその婚約者に対しあまりにも不敬な単語も出てしまうが、ノエルはそれどころではない。

「そんなの周囲がもっと……っていうか黒い人幼馴染みなんですよね羨ましい!! ってちがくて、黒い人が言ってあげたら済む話では!?」

 ノエルのもっともだ、と言わんばかりの言葉に青年はまたしても重く息を吐く。

「言ってる」
「まさかの」
「アレクシスには何度も言っているし、ユーフェミアも毎回毎回しつこいくらいに相談をしてくるからその度に俺は律儀に返している」

 お前が向こうを好きだと思っている様に、向こうもお前の事を誰よりも好きだと思っている、と――

「ユーフェミア様から毎回毎回しつこいくらいに相談受けてるんですかなにそれ羨ましい。自慢? これだけ俺はアイツに信頼されてるんだっているマウント取りですか悔しい」
「君についての相談だけどな」
「それについては誠に申し訳ないです」

 でもわたし悪くなくない? と即座に思い直すが、それはひとまず横に置く。

「君といる時のアレクシスがとても楽しそうだと」
「わたしとアレクシス様の話なんて九割方ユーフェミア様の話なんですけど」

 残り一割は天気の話と食べ物の話しかした事がない。

「それでも天気の話してるとユーフェミアは雷が苦手だとか、食べ物の話だとあれで意外と辛い物も平気で食べるんだよとか、ユーフェミア様豆知識が入ってきますよ?」

 そう、王太子がとても楽しそうにしているのは間違いなくその話題の主が愛しの婚約者であるからだ。だと言うのに、それが本人には伝わっていないのはあまりにも悲しすぎるのではないか。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

男と女の初夜

緑谷めい
恋愛
 キクナー王国との戦にあっさり敗れたコヅクーエ王国。  終戦条約の約款により、コヅクーエ王国の王女クリスティーヌは、"高圧的で粗暴"という評判のキクナー王国の国王フェリクスに嫁ぐこととなった。  しかし、クリスティーヌもまた”傲慢で我が儘”と噂される王女であった――

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...