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AI vs アナログな旅人たち

人が支配される街⑧~乾杯の音頭~

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 二人のおじさんは,この近辺で商品の移送や仲卸をする商人をしていた。最近は商品の流通が激しく,財布がかなり潤ってきたということだが,このラムで武器や燃料になるもの,何に使うのかも分からない得体の知れないものがかなりの値段でやりとりされているらしい。
 ある日,商人が港町で仕入れた情報によると,ラムの町で武器の納品や資源の買い占め具合から戦争を始めようとしていることを突き止めたらしい。これからすぐ争いに発展するとい状況ではないため,もう少しここで稼いだら争いが始まる前に本拠地を移そうという算段だったようだ。

「どうしておれたちの町が襲われるんだ。近いとはいえ,森を抜けていくのは手間だし,それに見合ったメリットがあるとは思えない」

 腕組みをしていた手をほどき,こめかみを押さえながらジャンは誰に菊でもなくつぶやいた。

「試したいんだろうな。今,この町で新しい兵器が開発されている。ここで働くロボットもそうだが,明らかにそう長くはない期間のうちに技術は進歩している。その技術を,報復の心配のないどこかで試したいんじゃないかな。争いにはよくあることだ。自分たちの兵力をよそへ見せつけたり,何かの実験台として無関係な土地や住民が犠牲になることは,悲しいことだが現実としてあるんだ」

 分かった,とジャンは呟いて椅子に腰を下ろした。何かを決意したようだが,きっとこの戦いに参戦するに違いない。自分が生まれ育った町を守るために戦う,もう守られる存在とはおさらばだ。ジャンの横顔を見ながら覚悟を決めた。ミュウが顔を覗かせ,心細そうに小さく鳴いた。

「お前さん達,まさかこの町を相手に武器を取る気か?」
「まだ先のことは分からねえ。それに,いろいろ探らないとな。今は考えたってしょうがねえ。これからのために,まずは腹ごしらえだ。食うぞ,ソラ」

 テーブルの真ん中に空洞が現れ,ロボットがビールを二つと小皿に入れた水を持ってきた。

「さあ,いきなりでかい話になりそうだが,おれたちの故郷を絶対守ろうぜ」

 二人でグラスを,ミュウは小皿の前で舌を出して乾杯した。
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