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裕也は携帯のフラップを閉じてエレベーターに乗り、一番上のRを選んで押した。
有賀からのメールは簡潔で<支社の屋上にいる>とだけ書かれていた。
まだ契約の手続きがあるからと偽って、裕也はやっとのことであの怒涛の中から抜け出せた。
それでも小一時間は捕まっていた。
部長の有賀は一体どうやって抜けられたのだろうか。
エレベーターを降り、十段ほど階段を上がると屋上へのドアがある。
鍵は開いていた。
重い金属のドアを押し開くと、新宿ビル郡の夜景をバックに長身の男が立っている。
スーツの前を外し、スラックスのポケットに無造作に手を突っ込んで柵に寄りかかる姿は、そのままポートレートにしたいほど絵になっていた。
乾いた風が少し乱れた髪をフワリと揺らし、男の色気を壮絶なまでに演出する。
本当に、なんて極上な男なのだろう。
毎日のように会っているというのに、裕也はこうして事あるごとに見惚れてしまう。
「抜け出せたか」
有賀の低い声に、裕也は慌てて頷くと近寄った。
「部長はどうやって出たんですか?引っ張りだこだったでしょう」
「ちょっとズルをしてな。偶然かかってきた私用電話を、NYからの急ぎの連絡だと言って抜けてきた」
ひょいと肩を竦めると、男は柵から身を起こして裕也の前に立つ。
「お前達のサプライズで、収拾がつかない騒ぎになってしまったからな。まったく、ビックリさせてくれる」
「部長にはしょっちゅう驚かされてきましたからね。たまにはお返しておかないと、俺達も立つ瀬が無かったんです」
クスリと笑う有賀を見て、裕也もようやくサプライズが成功したことを実感して嬉しさがこみ上げてきた。
「……ありがとう。こんな実績を引っさげて香港支社を設立しに行けるなんて、最高だよ」
香港という言葉に、裕也はここに男を呼び出した理由を思い出して、身を引き締める。
「部長……」
「話が………あると言ったな」
勢い込んで口を開いた裕也を、有賀は片手を上げて制止した。
「実は俺も話があるんだ。先に……いいか?」
虚を突かれた形になったが、裕也は頷く。
「俺はNYと香港のどちらを選択するか、猶予をお前に与えたな。だが、その前にちゃんと自分の気持ちを言おうと思ったんだ。ある人からアドバイスされてね」
有賀の深い海色の瞳が、真っ直ぐに裕也を見つめる。
「如月……俺はお前が好きだ。最初は一目惚れに近かったが、お前の仕事ぶりや人となりを脇で見ているうちに、俺の理想のパートナーだと確信した」
「え……」
裕也は呆然と有賀を見上げた。
「前に部下には手を出さんと言ったのは、自分の気持ちをけん制するためだったんだが、どうにも止められなかった」
苦笑しながらも切なそうな色を乗せる瞳に、裕也は身動きも出来ない。
すっと持ち上げられた有賀の手が、裕也の頬を愛しそうに撫でる。
「選択しろと言っておきながら勝手だが、俺の本心は伝えておきたい。お前には、香港に一緒に来て欲しいと思っている。そして、仕事の上だけではなく……人生の上でもパートナーになってもらいたい。そう思っている」
「………ぶ……ちょう…」
あまりに予想外の展開で、頭がなかなかついてこない。
それでも徐々に有賀の言葉の意味を理解すると、今度は歓喜で体が震えだした。
「あ、あの……あの、ちょっとだけ後ろを向いてもらえますか?」
「え…?」
今か?と、きょとんとする有賀に、裕也は必死に言った。
「今度は俺の話を聞いて欲しいんです。ただそれにはちょっと準備が……」
準備?と困惑した表情の有賀の身体を、なかば強引にひっくり返す。
今しかない、と裕也は思った。
自分だってちゃんと告白したい。
それには本来の姿に戻ってからでなければと、ポケットから急いでコンタクトケースを取り出す。
「そのまま聞いて下さい。NYの件は信じられないくらいの好待遇だと思いました。むしろ身に余るくらいの。出世を考えればすぐにでも飛びつくのが普通でしょう。ただ俺は、出世よりも営業としてのやりがいの方を選択したいんです」
言葉を継ぎながらポケットから出した保存容器のキャップを捻り、外したコンタクトを入れる。
慣れた作業の筈が、緊張で手が震えてなかなか閉まらない。
「営業として自分の能力が存分に生かせるのは香港だと思います。それにあの……俺も、貴方が………」
「如月っ」
我慢出来ずに振り向く有賀に、裕也は咄嗟に目を閉じてしまった。
長年、人前に出さなかった目を晒すのが怖い。
「俺も……貴方が好き…なんです。パ…パートナーになりたいと……ずっと思ってました」
勇気を振り絞って開いた裕也の目に、有賀は息を呑んだ。
「な………」
けぶるような金髪の睫毛に縁取られた裕也の瞳は、見慣れた漆黒ではなく昼間の太陽の下で見上げる空の色だった。
「これ……は………一体…」
固まる有賀の前で、裕也は恥ずかしさに頬を染めながら謝る。
「すみません、今まで黙っていて。実はカラーコンタクトで色を隠していました。本来はこの色なんです。その、子供の頃のトラウマで。それからずっと外すタイミングを失ってて。でも告白する時はちゃんと自分本来の姿でと思ってたので…」
裕也は手に持ったコンタクトケースを軽く振ってみせるが、男の態度がおかしいことに気づいて首を傾げた。
「……?有賀部長?」
目の色ぐらいでここまで驚愕するとは思えない。
有賀はすこし震える手で裕也の両頬をそっと挟んだ。
徐々に目が細められ、口元が嬉しそうに綻ぶ。
「……そうか、そうだったのか……ああマージ、あんたの読みはいつも正しい。そして俺の勘も、間違っていなかった……やっと見つけた。俺の…」
「マージ?…え?……わっ」
突然力一杯抱きしめられて、裕也は目を白黒させた。
きつい抱擁に、身体がジンと痺れる。
「如月、さっきの科白は本当だな?」
「あ……は、はい」
「…よし」
抱きしめる腕の力が弱まり、有賀の片手が裕也のアゴにかかる。
「では、これから俺達はパートナーだ。仕事でもプライベートでも。相思相愛の…な」
愛しげに見つめてから、有賀は裕也にゆっくりと口づけた。
あれほど焦がれた唇を与えられ、裕也はうっとりと目を閉じる。
軽く触れ合った唇は一旦離れると、またすぐにぴったりと合わされた。
有賀の手が柔らかな金髪に差し入れられ、口づけは更に深くなる。
「…ん……っんう………ふ…ぁ」
熱い舌が唇を割って侵入してきた。
歯列をなぞり舌と舌が絡まり、擦り合わされる。
情熱的なキスに、裕也は腰が砕けそうだった。
両手で胸元に縋りついて必死に立つが、腰からゾクゾクとこみ上げる快感に、膝が笑っていた。
「……あ……ふぅ…」
散々貪られ、唇が離された時にはもうマトモに立てず、有賀に腰を抱かれてようやく立っている状態だった。
テクニックのレベルが違い過ぎて、まったく歯が立たない。
恋愛経験値の差をまざまざと見せつけられる結果になった。
しかし薄いブルーの瞳に涙を浮かべ、キスで赤みを増して濡れた唇から溜め息を漏らす裕也を見つめながら、有賀は苦しげに呻き声を上げた。
「ああ……くそ、今すぐ抱きたいくらいなのに」
名残惜しげにチュッとバードキスを数回して、有賀は裕也を解放した。
「俺はこれからNY本社と交渉しなくちゃならない。お前の本社行きは、ほぼ決定していたからな。説得して香港行きを了承させるには、今夜中がリミットだ」
日本の今この時間、NYは昼間だと裕也は思い出した。
明日になれば、もう辞令が出されてしまう。
「で、でも出来るんですか?そんな、今から人事を変更するなんてこと……」
うろたえる裕也に、有賀は自信たっぷりで笑った。
「大丈夫だ、切り札はいっぱい持ってるからな。それより、あと三週間で日本を引き払うから、すぐに荷造りや解約手続きを始めろ。出発までは大忙しだからな」
「は、はい」
「大丈夫だ、もう離さない。その代わり、向こうに行ったら容赦しないからな。覚悟しておけよ…裕也」
猛禽類の笑みを浮かべた有賀は、額に軽くキスをしてから名残惜しげに屋上を去っていった。
「………夢みたいだ…」
呆けたように口を開いたまま、裕也は柵に沿ってへたり込んだ。
香港について行けるだけでも出来過ぎだというのに、その上、有賀の恋人になれるとは。
「夢じゃない、よな」
ふと視線を落とした裕也は、半ば反応して膨らんだ股間を見て、ぼぼっと赤くなる。
もう一度されたら、イってしまいそうなほど官能的なキスだった。
有賀の覚悟しておけという科白と、始めて呼ばれた下の名前の甘い響きに、興奮が鎮まるまで座り込んだまま熱いため息をつくハメになった。
翌日、裕也・藤堂を含めて六人の名前が発表され、正式に香港支社への転勤が決定した。
驚いたことに、有賀は裕也を副支社長の地位で栄転させることに成功していた。
今までの実績から回りは当然だろうという目で見ていたが、事情を知っている裕也は転勤先を変更した上に昇進まで付けさせてしまった有賀にあ然とする。
一体どんなすごい切り札を持っているというのか。
その後の三週間は、仕事の整理やらアパートの引き払い手続きやらで、文字通り目が回る忙しさだった。
透には直接会って報告をしたかったが、その時間すらまったく取れない。
とりあえず電話で結果を伝えると、ものすごく喜んで祝福してくれた。
有賀を焚きつけたのが透だったということを、裕也はこのとき初めて知った。
親友の心遣いに深く感謝しながら、いずれ落ち着いたらマスターと一緒に香港に遊びに来てもらう約束を取りつけた。
有賀からのメールは簡潔で<支社の屋上にいる>とだけ書かれていた。
まだ契約の手続きがあるからと偽って、裕也はやっとのことであの怒涛の中から抜け出せた。
それでも小一時間は捕まっていた。
部長の有賀は一体どうやって抜けられたのだろうか。
エレベーターを降り、十段ほど階段を上がると屋上へのドアがある。
鍵は開いていた。
重い金属のドアを押し開くと、新宿ビル郡の夜景をバックに長身の男が立っている。
スーツの前を外し、スラックスのポケットに無造作に手を突っ込んで柵に寄りかかる姿は、そのままポートレートにしたいほど絵になっていた。
乾いた風が少し乱れた髪をフワリと揺らし、男の色気を壮絶なまでに演出する。
本当に、なんて極上な男なのだろう。
毎日のように会っているというのに、裕也はこうして事あるごとに見惚れてしまう。
「抜け出せたか」
有賀の低い声に、裕也は慌てて頷くと近寄った。
「部長はどうやって出たんですか?引っ張りだこだったでしょう」
「ちょっとズルをしてな。偶然かかってきた私用電話を、NYからの急ぎの連絡だと言って抜けてきた」
ひょいと肩を竦めると、男は柵から身を起こして裕也の前に立つ。
「お前達のサプライズで、収拾がつかない騒ぎになってしまったからな。まったく、ビックリさせてくれる」
「部長にはしょっちゅう驚かされてきましたからね。たまにはお返しておかないと、俺達も立つ瀬が無かったんです」
クスリと笑う有賀を見て、裕也もようやくサプライズが成功したことを実感して嬉しさがこみ上げてきた。
「……ありがとう。こんな実績を引っさげて香港支社を設立しに行けるなんて、最高だよ」
香港という言葉に、裕也はここに男を呼び出した理由を思い出して、身を引き締める。
「部長……」
「話が………あると言ったな」
勢い込んで口を開いた裕也を、有賀は片手を上げて制止した。
「実は俺も話があるんだ。先に……いいか?」
虚を突かれた形になったが、裕也は頷く。
「俺はNYと香港のどちらを選択するか、猶予をお前に与えたな。だが、その前にちゃんと自分の気持ちを言おうと思ったんだ。ある人からアドバイスされてね」
有賀の深い海色の瞳が、真っ直ぐに裕也を見つめる。
「如月……俺はお前が好きだ。最初は一目惚れに近かったが、お前の仕事ぶりや人となりを脇で見ているうちに、俺の理想のパートナーだと確信した」
「え……」
裕也は呆然と有賀を見上げた。
「前に部下には手を出さんと言ったのは、自分の気持ちをけん制するためだったんだが、どうにも止められなかった」
苦笑しながらも切なそうな色を乗せる瞳に、裕也は身動きも出来ない。
すっと持ち上げられた有賀の手が、裕也の頬を愛しそうに撫でる。
「選択しろと言っておきながら勝手だが、俺の本心は伝えておきたい。お前には、香港に一緒に来て欲しいと思っている。そして、仕事の上だけではなく……人生の上でもパートナーになってもらいたい。そう思っている」
「………ぶ……ちょう…」
あまりに予想外の展開で、頭がなかなかついてこない。
それでも徐々に有賀の言葉の意味を理解すると、今度は歓喜で体が震えだした。
「あ、あの……あの、ちょっとだけ後ろを向いてもらえますか?」
「え…?」
今か?と、きょとんとする有賀に、裕也は必死に言った。
「今度は俺の話を聞いて欲しいんです。ただそれにはちょっと準備が……」
準備?と困惑した表情の有賀の身体を、なかば強引にひっくり返す。
今しかない、と裕也は思った。
自分だってちゃんと告白したい。
それには本来の姿に戻ってからでなければと、ポケットから急いでコンタクトケースを取り出す。
「そのまま聞いて下さい。NYの件は信じられないくらいの好待遇だと思いました。むしろ身に余るくらいの。出世を考えればすぐにでも飛びつくのが普通でしょう。ただ俺は、出世よりも営業としてのやりがいの方を選択したいんです」
言葉を継ぎながらポケットから出した保存容器のキャップを捻り、外したコンタクトを入れる。
慣れた作業の筈が、緊張で手が震えてなかなか閉まらない。
「営業として自分の能力が存分に生かせるのは香港だと思います。それにあの……俺も、貴方が………」
「如月っ」
我慢出来ずに振り向く有賀に、裕也は咄嗟に目を閉じてしまった。
長年、人前に出さなかった目を晒すのが怖い。
「俺も……貴方が好き…なんです。パ…パートナーになりたいと……ずっと思ってました」
勇気を振り絞って開いた裕也の目に、有賀は息を呑んだ。
「な………」
けぶるような金髪の睫毛に縁取られた裕也の瞳は、見慣れた漆黒ではなく昼間の太陽の下で見上げる空の色だった。
「これ……は………一体…」
固まる有賀の前で、裕也は恥ずかしさに頬を染めながら謝る。
「すみません、今まで黙っていて。実はカラーコンタクトで色を隠していました。本来はこの色なんです。その、子供の頃のトラウマで。それからずっと外すタイミングを失ってて。でも告白する時はちゃんと自分本来の姿でと思ってたので…」
裕也は手に持ったコンタクトケースを軽く振ってみせるが、男の態度がおかしいことに気づいて首を傾げた。
「……?有賀部長?」
目の色ぐらいでここまで驚愕するとは思えない。
有賀はすこし震える手で裕也の両頬をそっと挟んだ。
徐々に目が細められ、口元が嬉しそうに綻ぶ。
「……そうか、そうだったのか……ああマージ、あんたの読みはいつも正しい。そして俺の勘も、間違っていなかった……やっと見つけた。俺の…」
「マージ?…え?……わっ」
突然力一杯抱きしめられて、裕也は目を白黒させた。
きつい抱擁に、身体がジンと痺れる。
「如月、さっきの科白は本当だな?」
「あ……は、はい」
「…よし」
抱きしめる腕の力が弱まり、有賀の片手が裕也のアゴにかかる。
「では、これから俺達はパートナーだ。仕事でもプライベートでも。相思相愛の…な」
愛しげに見つめてから、有賀は裕也にゆっくりと口づけた。
あれほど焦がれた唇を与えられ、裕也はうっとりと目を閉じる。
軽く触れ合った唇は一旦離れると、またすぐにぴったりと合わされた。
有賀の手が柔らかな金髪に差し入れられ、口づけは更に深くなる。
「…ん……っんう………ふ…ぁ」
熱い舌が唇を割って侵入してきた。
歯列をなぞり舌と舌が絡まり、擦り合わされる。
情熱的なキスに、裕也は腰が砕けそうだった。
両手で胸元に縋りついて必死に立つが、腰からゾクゾクとこみ上げる快感に、膝が笑っていた。
「……あ……ふぅ…」
散々貪られ、唇が離された時にはもうマトモに立てず、有賀に腰を抱かれてようやく立っている状態だった。
テクニックのレベルが違い過ぎて、まったく歯が立たない。
恋愛経験値の差をまざまざと見せつけられる結果になった。
しかし薄いブルーの瞳に涙を浮かべ、キスで赤みを増して濡れた唇から溜め息を漏らす裕也を見つめながら、有賀は苦しげに呻き声を上げた。
「ああ……くそ、今すぐ抱きたいくらいなのに」
名残惜しげにチュッとバードキスを数回して、有賀は裕也を解放した。
「俺はこれからNY本社と交渉しなくちゃならない。お前の本社行きは、ほぼ決定していたからな。説得して香港行きを了承させるには、今夜中がリミットだ」
日本の今この時間、NYは昼間だと裕也は思い出した。
明日になれば、もう辞令が出されてしまう。
「で、でも出来るんですか?そんな、今から人事を変更するなんてこと……」
うろたえる裕也に、有賀は自信たっぷりで笑った。
「大丈夫だ、切り札はいっぱい持ってるからな。それより、あと三週間で日本を引き払うから、すぐに荷造りや解約手続きを始めろ。出発までは大忙しだからな」
「は、はい」
「大丈夫だ、もう離さない。その代わり、向こうに行ったら容赦しないからな。覚悟しておけよ…裕也」
猛禽類の笑みを浮かべた有賀は、額に軽くキスをしてから名残惜しげに屋上を去っていった。
「………夢みたいだ…」
呆けたように口を開いたまま、裕也は柵に沿ってへたり込んだ。
香港について行けるだけでも出来過ぎだというのに、その上、有賀の恋人になれるとは。
「夢じゃない、よな」
ふと視線を落とした裕也は、半ば反応して膨らんだ股間を見て、ぼぼっと赤くなる。
もう一度されたら、イってしまいそうなほど官能的なキスだった。
有賀の覚悟しておけという科白と、始めて呼ばれた下の名前の甘い響きに、興奮が鎮まるまで座り込んだまま熱いため息をつくハメになった。
翌日、裕也・藤堂を含めて六人の名前が発表され、正式に香港支社への転勤が決定した。
驚いたことに、有賀は裕也を副支社長の地位で栄転させることに成功していた。
今までの実績から回りは当然だろうという目で見ていたが、事情を知っている裕也は転勤先を変更した上に昇進まで付けさせてしまった有賀にあ然とする。
一体どんなすごい切り札を持っているというのか。
その後の三週間は、仕事の整理やらアパートの引き払い手続きやらで、文字通り目が回る忙しさだった。
透には直接会って報告をしたかったが、その時間すらまったく取れない。
とりあえず電話で結果を伝えると、ものすごく喜んで祝福してくれた。
有賀を焚きつけたのが透だったということを、裕也はこのとき初めて知った。
親友の心遣いに深く感謝しながら、いずれ落ち着いたらマスターと一緒に香港に遊びに来てもらう約束を取りつけた。
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