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第二部 復興編
36.今後の計画
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「みんな怪我はないか?」
スザールが急ぎ足で広場に入ってきた。
ルワブにもその部下達にも完全に面が割れているスザールは、広場の外にいたらしい。
「おう、大丈夫だよ」
「予想では到着は明日以降だったから、ちょっと油断していた。あいつらも王都から早馬を使って強行軍で来たようだ」
ちっと舌打ちをして、スザールにしては珍しく苛立ちをあらわにしている。
「俺ももっと気にしてれば良かった。下手を打ってライド王子とザウスが王都に連れていかれることになっちまったよ」
俺はここまでの経緯をスザールに説明した。
「まあ、この状況なら仕方あるまい。むしろ王子の機転で、現状で考えられる最良の結果になったな」
お前が連れて行かれたらもうアウトだったからなと言われて、俺も頷いた。
「あ、そう言えば、臣下と部下の違いって何?臣下って言われてルワブが引き下がったけど」
スザールなら知ってるだろう。
「臣下というのは、王族が直々に指名してなる役職だ。兵士達よりも一段格上になる。ルワブはガザルに指名されている臣下で、お前はライド王子に指名されてるから、ルワブとは同格になる。だから部下に手を出されても文句は言えないのさ」
「げっ!ルワブと同格?」
うっそ!そんなに上な訳?
「ルワブの部下達は普通の兵士だが、ルワブから直接指示を受けていた。もしお前がライド王子の普通の兵士であいつらを殴ったとなると、それは越権行為となって処罰の対象になる。だからあいつらを殴ってもまかり通るのは、臣下じゃないとダメだったってことだ」
うわ~お、そんな構成になっていたとは。
「とっさの判断で臣下扱いしたのは大したもんだぜ、王子は」
ううむ、重ね重ね申し訳なかったなぁ。
「ザウスはライド王子の護衛だが、臣下じゃない。だからお前はザウスより上になるなぁ。あと、テイルも下だ」
「えっ!」
マジかよ。
「ア・キ・ラ・様~」
テイルがニヤニヤ笑って、恭しく兵士の礼をとる。
やめれ!
そんな上の位になんかなりたくないわっ。
「ちなみに、俺とも同格だな。俺はシシル宰相の臣下だからな」
ぐはっ。
ニヤニヤと笑うスザールにトドメを刺され、俺は撃沈した。
とにもかくにもこれからの計画を練らないといけない。
俺以外はスザールの部下達に見つかってはいけないメンツなので、ルルガの誘導でナムールの保管庫で鍵のかかる所に集まった。
「さて、ここからどう動けば一番効率がいいか……いい案がある人は?」
「…………」
「……………」
「いや、握り飯に夢中になるなって!」
時間が惜しいから腹ごしらえをしつつ打合せをしようと、俺とルルガでおにぎりを作ってテーブルに出した途端、皆が一斉に群がった。
そして現在、無言で貪り食ってる状況。
ダメだろ!
「いやすまん。これ止まらないんだよな~」
「うん、いくらでも入る」
「美味し過ぎますわ」
美味いのは分かるが、頭も回転させてくれ。
そしてアデル姫よ、妙齢の女性がそんな大口を開けてかぶりつくのは如何なものかと。
まあ、可愛いからいいけどな。
「まず状況を整理しよう」
ペロリと3個をたいらげたスザールが、地図を広げて指をさす。
「サザレーから王都までは、通常で10日。ここから次のスーカまでは2日。スーカからタンパルまでは7日。タンパルから王都までが3日だ」
え?向こうは10日で王都到着、俺らは移動だけで12日かかるの?
「げ、移動の日にちだけでもう間に合わないとか」
終わってるわ。
「通常で行けばな。もちろん移動は全部強行軍で半分に縮める。それなら6日だ。王子がなんやかんやと引き延ばし出来ても3日くらいだろう。改善にかけられる時間は7日程度か」
「う~ん………」
スーカとタンパルの状況次第だろうが、今までの感じで行くとかなり無理ゲー。
「スザールの見立てとしてはどうだ?スーカとタンパルの状況は把握してるんだろ?」
「…………」
上を向いてしばらく考え込んでいたスザールの視線が、俺に戻る。
「……6割の勝率だが、いける」
よし、乗った。
五分以上なら御の字だぜ。
「すぐに出発しよう」
スザールが急ぎ足で広場に入ってきた。
ルワブにもその部下達にも完全に面が割れているスザールは、広場の外にいたらしい。
「おう、大丈夫だよ」
「予想では到着は明日以降だったから、ちょっと油断していた。あいつらも王都から早馬を使って強行軍で来たようだ」
ちっと舌打ちをして、スザールにしては珍しく苛立ちをあらわにしている。
「俺ももっと気にしてれば良かった。下手を打ってライド王子とザウスが王都に連れていかれることになっちまったよ」
俺はここまでの経緯をスザールに説明した。
「まあ、この状況なら仕方あるまい。むしろ王子の機転で、現状で考えられる最良の結果になったな」
お前が連れて行かれたらもうアウトだったからなと言われて、俺も頷いた。
「あ、そう言えば、臣下と部下の違いって何?臣下って言われてルワブが引き下がったけど」
スザールなら知ってるだろう。
「臣下というのは、王族が直々に指名してなる役職だ。兵士達よりも一段格上になる。ルワブはガザルに指名されている臣下で、お前はライド王子に指名されてるから、ルワブとは同格になる。だから部下に手を出されても文句は言えないのさ」
「げっ!ルワブと同格?」
うっそ!そんなに上な訳?
「ルワブの部下達は普通の兵士だが、ルワブから直接指示を受けていた。もしお前がライド王子の普通の兵士であいつらを殴ったとなると、それは越権行為となって処罰の対象になる。だからあいつらを殴ってもまかり通るのは、臣下じゃないとダメだったってことだ」
うわ~お、そんな構成になっていたとは。
「とっさの判断で臣下扱いしたのは大したもんだぜ、王子は」
ううむ、重ね重ね申し訳なかったなぁ。
「ザウスはライド王子の護衛だが、臣下じゃない。だからお前はザウスより上になるなぁ。あと、テイルも下だ」
「えっ!」
マジかよ。
「ア・キ・ラ・様~」
テイルがニヤニヤ笑って、恭しく兵士の礼をとる。
やめれ!
そんな上の位になんかなりたくないわっ。
「ちなみに、俺とも同格だな。俺はシシル宰相の臣下だからな」
ぐはっ。
ニヤニヤと笑うスザールにトドメを刺され、俺は撃沈した。
とにもかくにもこれからの計画を練らないといけない。
俺以外はスザールの部下達に見つかってはいけないメンツなので、ルルガの誘導でナムールの保管庫で鍵のかかる所に集まった。
「さて、ここからどう動けば一番効率がいいか……いい案がある人は?」
「…………」
「……………」
「いや、握り飯に夢中になるなって!」
時間が惜しいから腹ごしらえをしつつ打合せをしようと、俺とルルガでおにぎりを作ってテーブルに出した途端、皆が一斉に群がった。
そして現在、無言で貪り食ってる状況。
ダメだろ!
「いやすまん。これ止まらないんだよな~」
「うん、いくらでも入る」
「美味し過ぎますわ」
美味いのは分かるが、頭も回転させてくれ。
そしてアデル姫よ、妙齢の女性がそんな大口を開けてかぶりつくのは如何なものかと。
まあ、可愛いからいいけどな。
「まず状況を整理しよう」
ペロリと3個をたいらげたスザールが、地図を広げて指をさす。
「サザレーから王都までは、通常で10日。ここから次のスーカまでは2日。スーカからタンパルまでは7日。タンパルから王都までが3日だ」
え?向こうは10日で王都到着、俺らは移動だけで12日かかるの?
「げ、移動の日にちだけでもう間に合わないとか」
終わってるわ。
「通常で行けばな。もちろん移動は全部強行軍で半分に縮める。それなら6日だ。王子がなんやかんやと引き延ばし出来ても3日くらいだろう。改善にかけられる時間は7日程度か」
「う~ん………」
スーカとタンパルの状況次第だろうが、今までの感じで行くとかなり無理ゲー。
「スザールの見立てとしてはどうだ?スーカとタンパルの状況は把握してるんだろ?」
「…………」
上を向いてしばらく考え込んでいたスザールの視線が、俺に戻る。
「……6割の勝率だが、いける」
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五分以上なら御の字だぜ。
「すぐに出発しよう」
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