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第二部 復興編
18.ランドス
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「ここはまだ、そこまで乾燥は酷くはないな」
到着したランドスは、今までのような極限的に水不足という感じじゃなかった。
渓谷というほど深くはないが、両側に岩壁があって中央に川が流れている。
その両側に町が集まっている感じだ。
「そうだな。でも前に比べると、川の水量は半分以下だ。それにしても……」
スザールが川岸に寄って水面を確認していたが、眉を寄せている。
「何かあるのか?」
初めて見る土地だから、俺には何が変わっているのか分からない。
「………何か……いるな」
「は?」
何かいるって、川の中にか?
「魚がいるとか?それなら別に…」
「あんたらっ!危ないから離れろ!」
「え…?」
後ろからいきなり叫ばれて、俺は川を覗き込もうとした体制で振り返ろうとした。
その時、目の端に水の中を黒いものがスーっと近づいてくる影が見えた。
「!っ、危ないっ!」
俺はスザールに腰のベルトを掴まれて、後ろにグイっと引き倒された。
「っ!……うわっ…」
次の瞬間、バシャッと水面から黒いものが跳ね上がってきて、俺が今いた空間に飛びかかってきた。
スザールが間髪入れずに剣を振って、その黒い物体をスパンと切り裂く。
「うあっち!」
飛び散った血が腕に少しかかった途端、火傷したような痛みが走る。
転がったまま腕を押さえて呻く。
「かかったのか!すぐに洗い流せ!」
後ろから駆け寄ってきた男性が、腰の水筒を外して水を掛けてくれる。
「こいつの血は毒性が強いんだ。すぐに落とせばじきに痛みも治まるよ」
「あ、ありがとう。助かったよ」
血がかかった所が赤くなっている。
酸性の血とかか?いってえ~。
「何でゾルゲがこの川にいるんだ?こいつはもっと北の限られた場所にしか生息してないはずだぞ」
スザールが顔をしかめながら、剣で真っ二つにしたヤツをつついてる。
「それ、ゾルゲっていうのか?」
1メートルくらいの長さでヘビに近い感じだが、パカっと開いた口がエラくデカい。
人の頭くらいパクっと一飲みに出来るサイズだ。
それに、歯!
ピラニアみたいな歯がズラリと並んでいる。
えぐいわ~。
全身真っ黒で、目だけ赤い。
ククルと同じ赤い目でも、全然可愛くねえ!
危険を知らせて血を洗い流してくれたこの人はタロスさんと言って、旅人が来た時に川の危険を知らせる為に見回りをしているのだそうだ。
「半年くらい前に現れて、それから増えちまって困ってるんだよ」
水を汲みに来た住民が何人も襲われて、駆除に乗り出したが増える方が早くて駆逐が追いつかないと。
しかも殺して血が流れると、川の水が毒で汚染されてしまう。
更に、川に近寄ると寄ってくるので、住民は水が汲めずに困り果てているらしい。
「じゃあどうしてるんだ?水は絶対に必要だろう?」
「……領主様が川の一部に鉄の柵を設けて、そこでなら水が汲めるんだ」
なるほど、その対策なら大丈夫か。
「ただ、そこで水を汲むのに高い使用料を払わないといけなくてな」
「……は?」
どういうことだ?
川の水を汲むのに使用料?
「王都からの指示だと、領主様がキツくおっしゃってな。でも作物も不作が続いているのに水汲みにまで料金を払ったら、もう俺らは生活が成り立たないんだ」
「……なんだそいつ」
思わず低い声が出たわ。
横でタロスさんがビビるのが分かったが、怒りのオーラが抑えられない。
その悪代官みたいな領主、討伐していいかな?
スザールが俺の腕に包帯を巻こうとしているのにも関わらず、スクっと立ち上がってタロスさんを見下ろした。
「その領主は絞めるの決定として、王都からってのは誰の指示だって?」
「あ……ええっと、宰相閣下だと言ってた……ひっ」
横から俺の怒りのオーラを凌ぐ圧力がブワっと生じて、タロスさんがひゅっと息を飲んだ。
俺も一瞬ヒヤっとしたわ。
「なんだとぉ…」
ユラ~リとスザールが立ち上がる。
おいおい、顔がおっかねぇって。
まあ分かるけどな。
各地を回ってるスザールですらゾルゲ?が湧いたことを知らなかったのに、王都の宰相様がそんな指示出す訳がない。
「フェリペの野郎ぉ、フザケた真似しやがって……舐められたもんだなぁ?」
あ~、ヤクザの口調になってる。
敬愛する上司をコケにされたから、怒り心頭だ。
フェリペってのがここの領主の名前か。
死んだな、こりゃ。
「スザール、取り敢えず川の処理の前にやることが出来たな」
「おう、時間が無いから1日でカタをつけよう」
「だな」
俺もかなり頭にきたから、遠慮はしない。
力を持ったヤツが弱者から搾取するなんて卑怯な真似は、大嫌いだからな。
多分俺も、相当悪い顔をしてるんだろう自覚はある。
タロスさんはプルプル震えながらも、柵の場所を教えてくれた。
色々とすまんね。
到着したランドスは、今までのような極限的に水不足という感じじゃなかった。
渓谷というほど深くはないが、両側に岩壁があって中央に川が流れている。
その両側に町が集まっている感じだ。
「そうだな。でも前に比べると、川の水量は半分以下だ。それにしても……」
スザールが川岸に寄って水面を確認していたが、眉を寄せている。
「何かあるのか?」
初めて見る土地だから、俺には何が変わっているのか分からない。
「………何か……いるな」
「は?」
何かいるって、川の中にか?
「魚がいるとか?それなら別に…」
「あんたらっ!危ないから離れろ!」
「え…?」
後ろからいきなり叫ばれて、俺は川を覗き込もうとした体制で振り返ろうとした。
その時、目の端に水の中を黒いものがスーっと近づいてくる影が見えた。
「!っ、危ないっ!」
俺はスザールに腰のベルトを掴まれて、後ろにグイっと引き倒された。
「っ!……うわっ…」
次の瞬間、バシャッと水面から黒いものが跳ね上がってきて、俺が今いた空間に飛びかかってきた。
スザールが間髪入れずに剣を振って、その黒い物体をスパンと切り裂く。
「うあっち!」
飛び散った血が腕に少しかかった途端、火傷したような痛みが走る。
転がったまま腕を押さえて呻く。
「かかったのか!すぐに洗い流せ!」
後ろから駆け寄ってきた男性が、腰の水筒を外して水を掛けてくれる。
「こいつの血は毒性が強いんだ。すぐに落とせばじきに痛みも治まるよ」
「あ、ありがとう。助かったよ」
血がかかった所が赤くなっている。
酸性の血とかか?いってえ~。
「何でゾルゲがこの川にいるんだ?こいつはもっと北の限られた場所にしか生息してないはずだぞ」
スザールが顔をしかめながら、剣で真っ二つにしたヤツをつついてる。
「それ、ゾルゲっていうのか?」
1メートルくらいの長さでヘビに近い感じだが、パカっと開いた口がエラくデカい。
人の頭くらいパクっと一飲みに出来るサイズだ。
それに、歯!
ピラニアみたいな歯がズラリと並んでいる。
えぐいわ~。
全身真っ黒で、目だけ赤い。
ククルと同じ赤い目でも、全然可愛くねえ!
危険を知らせて血を洗い流してくれたこの人はタロスさんと言って、旅人が来た時に川の危険を知らせる為に見回りをしているのだそうだ。
「半年くらい前に現れて、それから増えちまって困ってるんだよ」
水を汲みに来た住民が何人も襲われて、駆除に乗り出したが増える方が早くて駆逐が追いつかないと。
しかも殺して血が流れると、川の水が毒で汚染されてしまう。
更に、川に近寄ると寄ってくるので、住民は水が汲めずに困り果てているらしい。
「じゃあどうしてるんだ?水は絶対に必要だろう?」
「……領主様が川の一部に鉄の柵を設けて、そこでなら水が汲めるんだ」
なるほど、その対策なら大丈夫か。
「ただ、そこで水を汲むのに高い使用料を払わないといけなくてな」
「……は?」
どういうことだ?
川の水を汲むのに使用料?
「王都からの指示だと、領主様がキツくおっしゃってな。でも作物も不作が続いているのに水汲みにまで料金を払ったら、もう俺らは生活が成り立たないんだ」
「……なんだそいつ」
思わず低い声が出たわ。
横でタロスさんがビビるのが分かったが、怒りのオーラが抑えられない。
その悪代官みたいな領主、討伐していいかな?
スザールが俺の腕に包帯を巻こうとしているのにも関わらず、スクっと立ち上がってタロスさんを見下ろした。
「その領主は絞めるの決定として、王都からってのは誰の指示だって?」
「あ……ええっと、宰相閣下だと言ってた……ひっ」
横から俺の怒りのオーラを凌ぐ圧力がブワっと生じて、タロスさんがひゅっと息を飲んだ。
俺も一瞬ヒヤっとしたわ。
「なんだとぉ…」
ユラ~リとスザールが立ち上がる。
おいおい、顔がおっかねぇって。
まあ分かるけどな。
各地を回ってるスザールですらゾルゲ?が湧いたことを知らなかったのに、王都の宰相様がそんな指示出す訳がない。
「フェリペの野郎ぉ、フザケた真似しやがって……舐められたもんだなぁ?」
あ~、ヤクザの口調になってる。
敬愛する上司をコケにされたから、怒り心頭だ。
フェリペってのがここの領主の名前か。
死んだな、こりゃ。
「スザール、取り敢えず川の処理の前にやることが出来たな」
「おう、時間が無いから1日でカタをつけよう」
「だな」
俺もかなり頭にきたから、遠慮はしない。
力を持ったヤツが弱者から搾取するなんて卑怯な真似は、大嫌いだからな。
多分俺も、相当悪い顔をしてるんだろう自覚はある。
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色々とすまんね。
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