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第二部 復興編
3.実りを堪能
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ぞろぞろと城の畑に向かうと、その光景に一同ビックリ仰天。
ですよね~。
砂漠だったとは思えない変わりようだもんな。
大きくて緑豊かな葉を茂らせるリルの木がドドンと立ち並び、畑は作物が色とりどりの実や花をつけ、水が側溝をサラサラと流れている。
日本では当たり前の自然豊かな光景だけど、近年この世界ではあり得なかったものだろう。
「なんと……あの頃と同じ景色をもう一度見ることが出来るとは……」
シシル宰相が一番感慨深いようで、声を詰まらせている。
「素晴らしいわ……夢のよう…」
アデル姫は、口元を両手で覆って目を潤ませている。
「リネル、加速させていいのはどこだ?」
魔法を実演する為に、リネルに成長させていい場所を確認する。
「こちらの野菜とスイカは種を撒いた所です、こちらでお願いします」
お、スイカは丁度いいな。
信者を増やせるとニヤリと笑ったら、リネルもニヤリと笑っていた。
確信犯かよ。
俺は畑の上に雨雲を作って雨を降らせ、作物を加速して成長させてみせた。
「これが2つのスキルです」
来訪者御一行は、終始あんぐりと口を開けていた。
まあ、そうなるよね~。
加速させて生った野菜をもぎって、その場で試食してもらう。
「!っ……うっま!」
「美味しいっ」
「これは…美味いな」
そうだろう、そうだろう。
ちょっと早いが、昼食も兼ねて畑でバーベキューだ。
「こんな新鮮な野菜、久し振りに食べるぜ」
「こんなに甘みがあったのか~」
「いくらでもイケるな」
野郎共にはマルルの実が一番人気だった。
あの肉としか思えんヤツな?
焼いたら最高だよな~。
冷えた果実水を渡すと、感嘆の声が上がる。
「何だこれ!」
美味すぎる~と喜んでいる。
幸福に浸っているところ申し訳ないが、上には上があるんだよ。
「アデル姫、この果物をどうぞ」
スイカをカットしてリルの塩を振って渡すと、可愛らしくニッコリと笑ってくれた。
天国か。
「アキラ様、アデルと呼び捨てにして下さいませ」
「じゃあ俺もアキラで」
頷いてスイカをパクっと食べたアデルは、カッと目を見開いた。
そのまま無言でカプカプと頬張っていく。
王族の女性とは思えない程の食いつきに、シシル宰相やスザール達がビックリしているが、まあ君たちも食べてみるがいい。
飛ぶぞ。
「!!」
「……~~!」
はい、みんな無言でかぶりつき~。
スイカ教、入信です。
「ヤバいだろ、これは…」
一気に食べ尽くしたテイルが、呻くように言う。
「まあ、この世界の食べ物じゃないんで」
「えっ!これって…アキラの世界のものなのか?」
「そう、偶然ね。召喚された時に持ってた」
「う~わ、スゲー偶然だな。でも神に感謝だわ。こんな美味いもんを持ち込んでくれて」
スイカは最強だからな。
「やはりここが流通元だったか。リルの石鹸とかも?」
「ええ、香り付きのものの出荷を始めています。後は野菜や薬草も……」
シシル宰相に聞かれ、ライド王子が嬉しそうに説明している。
どの道、これからの事は宰相達の協力を仰がないと進まないので、一気に功績を説明しておくとしよう。
俺達は、シシル宰相達を町の広場や農場に案内した。
地下水脈をサーチして井戸を作ったことが、一番喜ばれた。
だが、リルの木を育てて燃やして穴を開けた経緯には、さすがにドン引かれてしまった。
でも恒久的に水を確保出来るのは、とにかく素晴らしい。
城に戻って、夜に計画を練ろうということになった。
戻りしなに教会に寄ってみたが、患者はほとんどいなくなっていて、教会は落ち着きを取り戻していた。
痩せてグッタリした子供がいないことに、俺はほっと胸を撫で下ろした。
早く他の所も元気にしてやりたい。
城に戻ると、中庭で兵士達がシャワーで汗を流しているのを見て、来訪者御一行は漏れなく浴びたいと熱望した。
王都からここまで5日かかるらしい。
そりゃあサッパリしたいよな。
兵士達も喜んだが、一番喜んだのはやっぱりアデルだった。
女性達と一緒にキャッキャと浴びて、大満足のご様子。
砂混じりだった長い髪もツヤツヤ、花の香りの石鹸でお肌もツルツル、美人度爆上がり。
回りの女性達もみんな美人さんだから、もう花園だ。
ここって天国か?
「アキラ!一緒に浴びようぜ~」
その後、俺はムキムキの兵士の野郎共に掴まって、むさい中でシャワーを浴びる羽目になった。
……天国じゃなかった。
ですよね~。
砂漠だったとは思えない変わりようだもんな。
大きくて緑豊かな葉を茂らせるリルの木がドドンと立ち並び、畑は作物が色とりどりの実や花をつけ、水が側溝をサラサラと流れている。
日本では当たり前の自然豊かな光景だけど、近年この世界ではあり得なかったものだろう。
「なんと……あの頃と同じ景色をもう一度見ることが出来るとは……」
シシル宰相が一番感慨深いようで、声を詰まらせている。
「素晴らしいわ……夢のよう…」
アデル姫は、口元を両手で覆って目を潤ませている。
「リネル、加速させていいのはどこだ?」
魔法を実演する為に、リネルに成長させていい場所を確認する。
「こちらの野菜とスイカは種を撒いた所です、こちらでお願いします」
お、スイカは丁度いいな。
信者を増やせるとニヤリと笑ったら、リネルもニヤリと笑っていた。
確信犯かよ。
俺は畑の上に雨雲を作って雨を降らせ、作物を加速して成長させてみせた。
「これが2つのスキルです」
来訪者御一行は、終始あんぐりと口を開けていた。
まあ、そうなるよね~。
加速させて生った野菜をもぎって、その場で試食してもらう。
「!っ……うっま!」
「美味しいっ」
「これは…美味いな」
そうだろう、そうだろう。
ちょっと早いが、昼食も兼ねて畑でバーベキューだ。
「こんな新鮮な野菜、久し振りに食べるぜ」
「こんなに甘みがあったのか~」
「いくらでもイケるな」
野郎共にはマルルの実が一番人気だった。
あの肉としか思えんヤツな?
焼いたら最高だよな~。
冷えた果実水を渡すと、感嘆の声が上がる。
「何だこれ!」
美味すぎる~と喜んでいる。
幸福に浸っているところ申し訳ないが、上には上があるんだよ。
「アデル姫、この果物をどうぞ」
スイカをカットしてリルの塩を振って渡すと、可愛らしくニッコリと笑ってくれた。
天国か。
「アキラ様、アデルと呼び捨てにして下さいませ」
「じゃあ俺もアキラで」
頷いてスイカをパクっと食べたアデルは、カッと目を見開いた。
そのまま無言でカプカプと頬張っていく。
王族の女性とは思えない程の食いつきに、シシル宰相やスザール達がビックリしているが、まあ君たちも食べてみるがいい。
飛ぶぞ。
「!!」
「……~~!」
はい、みんな無言でかぶりつき~。
スイカ教、入信です。
「ヤバいだろ、これは…」
一気に食べ尽くしたテイルが、呻くように言う。
「まあ、この世界の食べ物じゃないんで」
「えっ!これって…アキラの世界のものなのか?」
「そう、偶然ね。召喚された時に持ってた」
「う~わ、スゲー偶然だな。でも神に感謝だわ。こんな美味いもんを持ち込んでくれて」
スイカは最強だからな。
「やはりここが流通元だったか。リルの石鹸とかも?」
「ええ、香り付きのものの出荷を始めています。後は野菜や薬草も……」
シシル宰相に聞かれ、ライド王子が嬉しそうに説明している。
どの道、これからの事は宰相達の協力を仰がないと進まないので、一気に功績を説明しておくとしよう。
俺達は、シシル宰相達を町の広場や農場に案内した。
地下水脈をサーチして井戸を作ったことが、一番喜ばれた。
だが、リルの木を育てて燃やして穴を開けた経緯には、さすがにドン引かれてしまった。
でも恒久的に水を確保出来るのは、とにかく素晴らしい。
城に戻って、夜に計画を練ろうということになった。
戻りしなに教会に寄ってみたが、患者はほとんどいなくなっていて、教会は落ち着きを取り戻していた。
痩せてグッタリした子供がいないことに、俺はほっと胸を撫で下ろした。
早く他の所も元気にしてやりたい。
城に戻ると、中庭で兵士達がシャワーで汗を流しているのを見て、来訪者御一行は漏れなく浴びたいと熱望した。
王都からここまで5日かかるらしい。
そりゃあサッパリしたいよな。
兵士達も喜んだが、一番喜んだのはやっぱりアデルだった。
女性達と一緒にキャッキャと浴びて、大満足のご様子。
砂混じりだった長い髪もツヤツヤ、花の香りの石鹸でお肌もツルツル、美人度爆上がり。
回りの女性達もみんな美人さんだから、もう花園だ。
ここって天国か?
「アキラ!一緒に浴びようぜ~」
その後、俺はムキムキの兵士の野郎共に掴まって、むさい中でシャワーを浴びる羽目になった。
……天国じゃなかった。
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