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第一部 離宮編
4.俺の能力
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そのまま街から少し離れた砂漠に出て、今度は俺の力の確認をすることにした。
「それで、俺の能力ってどうやれば出せるの?呪文とか唱えるのか?」
召喚士に聞くと、紫の目をパチパチとさせたリネルが困惑したように俺を見上げてくる。
「あの………私は召喚術しか出来ませんので、スキルの発動方法はよく分からないのです」
「…………は?」
何とおっしゃいました?
「この世界ではもう魔法が失われていて、私のように微かに能力がある者が稀にいる程度なのです。召喚は円陣を使って少し増幅出来ますが、他のことはほとんど出来ないのです」
まさかの、魔法がない世界。
えぇ、異世界って言ったら剣と魔法がメインなんじゃあ……?
「アキラ様はご存知ないのですか?……文献によりますと、歴代の聖女様は降臨してすぐに魔法を使いこなしておられたと…」
お互い目が点のまま見つめ合うことしばらく。
「………やっぱさ、間違えたんじゃねぇの?召喚する人物」
「ななな、何をおっしゃいますっ、間違えてなどおりません!その証拠に凄い魔力量をお持ちなのですよ?」
「でもさ、凄い魔力量を持ってても、使い方が分からなくちゃ宝の持ち腐れだよな?」
俺の世界にも魔法なんてものはないんだよ。使い方とか分かるわけないじゃん。
アニメの魔法少女みたいなのが来れば、ステッキ振ってピロロロ~ンで終わるんだろうけど。
なんてこったい。
呼ばれたのはいいけど、後は全部手探りとか。
「ないわ~」
俺は腰に手を当てたまま、ぐったりと天を仰いだ。
いきなり詰みって、そりゃないぜ。
どっかにマニュアルないのかよ?ゲームみたいにさ。
腹をくくった途端に詰んだ聖女ってか~。
こうなりゃ、片っ端から試していくしかない。
スキル発動!とかステータス開示!と叫んでみたり、陰陽師みたいに印を結んで唸ってみたり、雨乞いの踊りをしてみたり、カメ〇〇波を打ってみたり、涙ぐましい努力をしてみた。
惨敗だった。
「どーすんだよ、これ」
水対策も、この白けた空気もな!
太陽は傾いてきたけれど、まだまだ暑い。
だらだら流れる暑さの汗と冷や汗。
せめて陽射しが遮れるくらいの雲とか出ろよ~。
座り込んで雲一つない空を見上げて、梅雨の時期にはうっとうしいくらいだったグレーの雨雲を思い浮かべた。
あのゲリラ雷雨のカケラくらいの雨雲があれば事足りるのによぉ。
「………ん?」
何か、頭上にモヤモヤしたものが出てきた。
天じゃなくて、多分地上から十メートルくらいの高さに。
「………何だ?あれは…」
皆が見上げている間もどんどんとモヤモヤは濃くなってくる。
え、あれって………
「あ、分かったかも…」
イメージ?
雨を降らす雨雲のイメージを強く思い浮かべる。
「もっと、もっと大きく……水分を含んだ重い雲……」
目を閉じて、雨の日の空を連想する。
そこからザーザーと降る雨も。
ポツンと頬に何かが当たった。次は肩に、唇に。
「……雨よ、降れ」
ゆっくりと目を開くと、雨粒が飛び込んでくる。
「あ……雨だ………雨だっ!」
「うわあーっ、雨だぁっ」
ポツポツと降り始めた雨はどんどん強くなって、すぐに俺達一行はずぶ濡れになった。
皆は叫んだり口を開いて飲んだりしながらはしゃぎ回っている。
範囲も極小で、直径十メートルくらいしかない場所にザーザーと雨が降る。
まるでアニメみたいな感じになってるが、とにかく砂漠に雨が降っている。
「凄い、凄いですよアキラ様っ!」
「奇跡だ、まさに奇跡だ」
ザウスもライド王子も濡れ鼠になりながら興奮している。
「砂に吸わせてしまうのはもったいない。おい、水運搬用の荷車を持ってこい」
ゼウスが教会に兵士を向かわせる。
その間に、俺は降雨量の調整とか範囲を広げたり縮めたりとか色々と試してみた。
降らす量は結構加減が出来たけど、規模はあまり変えられなかった。
なにしろまだ手探りだから、コツを掴むまでは少し時間がかかるかもしれないな。
水用の荷車が4台来ると、そこの上で雨をドドッと降らせる。
上に乗ってる木樽は、ものの数分で満杯になった。
荷車を引っ張っているのは、ラクダと馬の中間のような生き物だった。
そいつらにもたっぷりと飲ませてやると、満足そうに嘶いている。
とりあえず病人の分はこれで賄ってもらおうと、教会に向かわせて一息ついた。
「いや~、体まで洗っちまったよ」
「ちゃんと洗えたの久しぶりだよなぁ」
さっぱりしたわ~と兵士達が嬉しそうに濡れた髪を掻き上げるのを見て、俺ははたと気がついた。
「そっか……飲み水に困ってるんだから、風呂なんか当然入れないか」
「風呂は交代なんですが、まあ下っ端共まではなかなか回りませんからね」
ザウスの言葉に、昨日たっぷりと水を使った俺は反省した。
あれは遠くからえっちらおっちら運んできた貴重な水だったんだ。
そうだよ、干ばつだって聞いていたのに何も考えずに普通に浴びちまった。
よし、戻ったら皆にシャワー入らせよう。
不衛生だと、疫病も発生する可能性だってあるもんな。
俺達は街の中心部にある広場を視察してから、城に戻った。
「それで、俺の能力ってどうやれば出せるの?呪文とか唱えるのか?」
召喚士に聞くと、紫の目をパチパチとさせたリネルが困惑したように俺を見上げてくる。
「あの………私は召喚術しか出来ませんので、スキルの発動方法はよく分からないのです」
「…………は?」
何とおっしゃいました?
「この世界ではもう魔法が失われていて、私のように微かに能力がある者が稀にいる程度なのです。召喚は円陣を使って少し増幅出来ますが、他のことはほとんど出来ないのです」
まさかの、魔法がない世界。
えぇ、異世界って言ったら剣と魔法がメインなんじゃあ……?
「アキラ様はご存知ないのですか?……文献によりますと、歴代の聖女様は降臨してすぐに魔法を使いこなしておられたと…」
お互い目が点のまま見つめ合うことしばらく。
「………やっぱさ、間違えたんじゃねぇの?召喚する人物」
「ななな、何をおっしゃいますっ、間違えてなどおりません!その証拠に凄い魔力量をお持ちなのですよ?」
「でもさ、凄い魔力量を持ってても、使い方が分からなくちゃ宝の持ち腐れだよな?」
俺の世界にも魔法なんてものはないんだよ。使い方とか分かるわけないじゃん。
アニメの魔法少女みたいなのが来れば、ステッキ振ってピロロロ~ンで終わるんだろうけど。
なんてこったい。
呼ばれたのはいいけど、後は全部手探りとか。
「ないわ~」
俺は腰に手を当てたまま、ぐったりと天を仰いだ。
いきなり詰みって、そりゃないぜ。
どっかにマニュアルないのかよ?ゲームみたいにさ。
腹をくくった途端に詰んだ聖女ってか~。
こうなりゃ、片っ端から試していくしかない。
スキル発動!とかステータス開示!と叫んでみたり、陰陽師みたいに印を結んで唸ってみたり、雨乞いの踊りをしてみたり、カメ〇〇波を打ってみたり、涙ぐましい努力をしてみた。
惨敗だった。
「どーすんだよ、これ」
水対策も、この白けた空気もな!
太陽は傾いてきたけれど、まだまだ暑い。
だらだら流れる暑さの汗と冷や汗。
せめて陽射しが遮れるくらいの雲とか出ろよ~。
座り込んで雲一つない空を見上げて、梅雨の時期にはうっとうしいくらいだったグレーの雨雲を思い浮かべた。
あのゲリラ雷雨のカケラくらいの雨雲があれば事足りるのによぉ。
「………ん?」
何か、頭上にモヤモヤしたものが出てきた。
天じゃなくて、多分地上から十メートルくらいの高さに。
「………何だ?あれは…」
皆が見上げている間もどんどんとモヤモヤは濃くなってくる。
え、あれって………
「あ、分かったかも…」
イメージ?
雨を降らす雨雲のイメージを強く思い浮かべる。
「もっと、もっと大きく……水分を含んだ重い雲……」
目を閉じて、雨の日の空を連想する。
そこからザーザーと降る雨も。
ポツンと頬に何かが当たった。次は肩に、唇に。
「……雨よ、降れ」
ゆっくりと目を開くと、雨粒が飛び込んでくる。
「あ……雨だ………雨だっ!」
「うわあーっ、雨だぁっ」
ポツポツと降り始めた雨はどんどん強くなって、すぐに俺達一行はずぶ濡れになった。
皆は叫んだり口を開いて飲んだりしながらはしゃぎ回っている。
範囲も極小で、直径十メートルくらいしかない場所にザーザーと雨が降る。
まるでアニメみたいな感じになってるが、とにかく砂漠に雨が降っている。
「凄い、凄いですよアキラ様っ!」
「奇跡だ、まさに奇跡だ」
ザウスもライド王子も濡れ鼠になりながら興奮している。
「砂に吸わせてしまうのはもったいない。おい、水運搬用の荷車を持ってこい」
ゼウスが教会に兵士を向かわせる。
その間に、俺は降雨量の調整とか範囲を広げたり縮めたりとか色々と試してみた。
降らす量は結構加減が出来たけど、規模はあまり変えられなかった。
なにしろまだ手探りだから、コツを掴むまでは少し時間がかかるかもしれないな。
水用の荷車が4台来ると、そこの上で雨をドドッと降らせる。
上に乗ってる木樽は、ものの数分で満杯になった。
荷車を引っ張っているのは、ラクダと馬の中間のような生き物だった。
そいつらにもたっぷりと飲ませてやると、満足そうに嘶いている。
とりあえず病人の分はこれで賄ってもらおうと、教会に向かわせて一息ついた。
「いや~、体まで洗っちまったよ」
「ちゃんと洗えたの久しぶりだよなぁ」
さっぱりしたわ~と兵士達が嬉しそうに濡れた髪を掻き上げるのを見て、俺ははたと気がついた。
「そっか……飲み水に困ってるんだから、風呂なんか当然入れないか」
「風呂は交代なんですが、まあ下っ端共まではなかなか回りませんからね」
ザウスの言葉に、昨日たっぷりと水を使った俺は反省した。
あれは遠くからえっちらおっちら運んできた貴重な水だったんだ。
そうだよ、干ばつだって聞いていたのに何も考えずに普通に浴びちまった。
よし、戻ったら皆にシャワー入らせよう。
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俺達は街の中心部にある広場を視察してから、城に戻った。
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