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第一部 離宮編
2.間違えてない?
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それから聞いた説明によると、ここはジオゲネス帝国といって、大陸で一番の大国で千年の歴史があるんだそうな。
国の半分が砂漠で暑くて乾燥していると。ほうほう。
最近は東京も砂漠かってくらいの気温だから、そんなに驚かなかったけど。
むしろこっちの方が湿気が少なくてカラッとしてる分、楽な気がする。
ここ数年は干ばつと大飢饉に見舞われ、民は栄養失調と脱水症状でばたばたと倒れ危機に瀕している。
王様は病に臥せっていて現在は宰相が執務を代行しているが、なかなか思うように対策が打てていない、と。
ここは離宮で、王都から東にかなり離れており干ばつによる被害が一番大きい土地で、第一王子の命により第二王子が改善の為に派遣されている。
「あれ?あんた……えっと、ライド王子?は第二王子って言ったか?じゃあ第一王子は?」
「兄のガザルは……」
王子を筆頭に、全員が苦虫を噛み潰したような顔をするのでピンときた。
あれか、超使えない設定の王子様かい。
「ガザル王子が次期国王に即位した暁には、このジオゲネス帝国は滅亡するでしょう」
護衛のザウスが吐き捨てるように言う。
おお、そこまでのクソヤローなのか。
悪化した土地をどうにかできる訳などないと知りつつ、改善出来るまで戻ってくるなと言うあたり、体のいい厄介払いというわけね。
しかもやっぱりこの第二王子、体が弱かった。
運よく死んでくれたら、さらにラッキー的な思いも透けて見えるな。
「しかし、まずはこの飢饉を乗り越えないと、どちらにしても国の未来はありません」
確かにね~。
民が死んじまったら、国どころじゃないわな。
「それで、そこのリネルさんとライド王子で、昔の文献を探しまくって召喚術をやってみたと」
「はい。かなりの賭けでしたが、無事成功して聖女様がいらして下さいました」
おいおい、リネルさんよ。そんなにニコニコしてるけど、本当に成功なのかい?
何か違うもん召喚してないかい?
「でも、今まで召喚したのは、全部女性だったんだよな?」
「…………あくまで文献によりますと、です」
いやいや、何故に拘る?
そんなに眉間に深く皺を刻んでまで聖女と言い張る意味が分からんわ。
「俺、胸なんか無いからね?」
Tシャツをまくって胸を見せると、ザウスの目がキラリと輝いた。
「おお、アキラ様は随分と鍛えていらっしゃいますな。なにか武芸を嗜まれているのですか?」
「うん、空手3段……あ~、一種の体術ね」
俺、部のエースだもん。
全国大会でもベスト8に入る猛者よ?腹筋バキバキだろ?
あと、趣味はパルクールね。説明できないから省くけどさ。
聖女って言葉がここまで似合わん人物もそういないかと。
「リネル、アキラ様のスキルと魔力量の確認を」
「はい。アキラ様、少し失礼します」
王子に言われた召喚士が、俺に向かって両手をかざして不思議な言葉をブツブツと呟き始める。
おっ、何か手の平がぼんやりと光ってる。
魔法っぽい。
「これは……想像以上の魔力量です。こんな膨大な量は見たことがありません」
リネルが目を真ん丸にして驚いている。
「人間には持ちえない量の魔力、目が眩みそうです」
え、それって、俺はもう人間越えてるってこと?神様?
いわゆるチートってヤツか。
「スキルは………三つありますね。ひとつは、降雨」
「水のスキルがあるのかっ」
ふたりの顔に喜色が浮かぶ。
まあ干ばつなら、そのスキルは喉から手が出るほど欲しいよな。
「あとは………加速と、探知ですね」
んん~?何かびみょーなスキルだな。どう使えと?
まあ、降雨があればいけるんじゃね?
「アキラ様、どうか民を救う為にお力をお貸しください」
「うん、分かった」
簡単に頷いた俺に、三人がポカンとしている。
だってなぁ、夢の中で色々とゴネてもしょうがなくね?
我ながら凝った設定だから、どんなストーリーになるのか興味があるというか。
明日は土曜だけど部活あるし、いつ妹が帰ってきて起こされるかわからないしな。
「では、食事と湯汲みの支度をさせましょう。今日はゆっくりとお休み下さい」
明日また伺いますと言って三人は出ていってしまった。
あれ、ストーリー進まないの?
目覚めちゃうよ~とか考えてたら、女性達が料理や果物を乗せた器を持って入ってきた。
わ~お、男性の服はギリシャ風だなと思ったけど、女性陣のはアラビア風だよ。
これがまたみ~んな美人で、めっちゃセクシー。
くびれっ、見事なくびれでボンキュボン。
うほぅ、男子高校生には目の毒だわ。
湯汲みも手伝うと言ってきたけど、丁重にお断りした。
こんな女性陣に背中なんか流されたら、超ヤバイでしょ。
一気にR18の世界に直行だよ。
それも有りか?とかチラッと考えちゃったけどな?
結構厳しい親に育てられたから、理性が邪魔をする。くそ~。
ベッドもふっかふかで、少し考えようとゴロリと転がったら、朝だった。
爆睡かよ。
国の半分が砂漠で暑くて乾燥していると。ほうほう。
最近は東京も砂漠かってくらいの気温だから、そんなに驚かなかったけど。
むしろこっちの方が湿気が少なくてカラッとしてる分、楽な気がする。
ここ数年は干ばつと大飢饉に見舞われ、民は栄養失調と脱水症状でばたばたと倒れ危機に瀕している。
王様は病に臥せっていて現在は宰相が執務を代行しているが、なかなか思うように対策が打てていない、と。
ここは離宮で、王都から東にかなり離れており干ばつによる被害が一番大きい土地で、第一王子の命により第二王子が改善の為に派遣されている。
「あれ?あんた……えっと、ライド王子?は第二王子って言ったか?じゃあ第一王子は?」
「兄のガザルは……」
王子を筆頭に、全員が苦虫を噛み潰したような顔をするのでピンときた。
あれか、超使えない設定の王子様かい。
「ガザル王子が次期国王に即位した暁には、このジオゲネス帝国は滅亡するでしょう」
護衛のザウスが吐き捨てるように言う。
おお、そこまでのクソヤローなのか。
悪化した土地をどうにかできる訳などないと知りつつ、改善出来るまで戻ってくるなと言うあたり、体のいい厄介払いというわけね。
しかもやっぱりこの第二王子、体が弱かった。
運よく死んでくれたら、さらにラッキー的な思いも透けて見えるな。
「しかし、まずはこの飢饉を乗り越えないと、どちらにしても国の未来はありません」
確かにね~。
民が死んじまったら、国どころじゃないわな。
「それで、そこのリネルさんとライド王子で、昔の文献を探しまくって召喚術をやってみたと」
「はい。かなりの賭けでしたが、無事成功して聖女様がいらして下さいました」
おいおい、リネルさんよ。そんなにニコニコしてるけど、本当に成功なのかい?
何か違うもん召喚してないかい?
「でも、今まで召喚したのは、全部女性だったんだよな?」
「…………あくまで文献によりますと、です」
いやいや、何故に拘る?
そんなに眉間に深く皺を刻んでまで聖女と言い張る意味が分からんわ。
「俺、胸なんか無いからね?」
Tシャツをまくって胸を見せると、ザウスの目がキラリと輝いた。
「おお、アキラ様は随分と鍛えていらっしゃいますな。なにか武芸を嗜まれているのですか?」
「うん、空手3段……あ~、一種の体術ね」
俺、部のエースだもん。
全国大会でもベスト8に入る猛者よ?腹筋バキバキだろ?
あと、趣味はパルクールね。説明できないから省くけどさ。
聖女って言葉がここまで似合わん人物もそういないかと。
「リネル、アキラ様のスキルと魔力量の確認を」
「はい。アキラ様、少し失礼します」
王子に言われた召喚士が、俺に向かって両手をかざして不思議な言葉をブツブツと呟き始める。
おっ、何か手の平がぼんやりと光ってる。
魔法っぽい。
「これは……想像以上の魔力量です。こんな膨大な量は見たことがありません」
リネルが目を真ん丸にして驚いている。
「人間には持ちえない量の魔力、目が眩みそうです」
え、それって、俺はもう人間越えてるってこと?神様?
いわゆるチートってヤツか。
「スキルは………三つありますね。ひとつは、降雨」
「水のスキルがあるのかっ」
ふたりの顔に喜色が浮かぶ。
まあ干ばつなら、そのスキルは喉から手が出るほど欲しいよな。
「あとは………加速と、探知ですね」
んん~?何かびみょーなスキルだな。どう使えと?
まあ、降雨があればいけるんじゃね?
「アキラ様、どうか民を救う為にお力をお貸しください」
「うん、分かった」
簡単に頷いた俺に、三人がポカンとしている。
だってなぁ、夢の中で色々とゴネてもしょうがなくね?
我ながら凝った設定だから、どんなストーリーになるのか興味があるというか。
明日は土曜だけど部活あるし、いつ妹が帰ってきて起こされるかわからないしな。
「では、食事と湯汲みの支度をさせましょう。今日はゆっくりとお休み下さい」
明日また伺いますと言って三人は出ていってしまった。
あれ、ストーリー進まないの?
目覚めちゃうよ~とか考えてたら、女性達が料理や果物を乗せた器を持って入ってきた。
わ~お、男性の服はギリシャ風だなと思ったけど、女性陣のはアラビア風だよ。
これがまたみ~んな美人で、めっちゃセクシー。
くびれっ、見事なくびれでボンキュボン。
うほぅ、男子高校生には目の毒だわ。
湯汲みも手伝うと言ってきたけど、丁重にお断りした。
こんな女性陣に背中なんか流されたら、超ヤバイでしょ。
一気にR18の世界に直行だよ。
それも有りか?とかチラッと考えちゃったけどな?
結構厳しい親に育てられたから、理性が邪魔をする。くそ~。
ベッドもふっかふかで、少し考えようとゴロリと転がったら、朝だった。
爆睡かよ。
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