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第二章
オネエの実力、ラシードの苦悩 6
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<ラシード視点>
ぼんやりと意識が戻ってきた。
サラリとしたシーツと背中から包まれる温もりの気持ち良さにもう一度意識を手放そうとしたが、何かが引っかかる。
「………ん……?」
あれ?俺、昨日……結婚したよな?
そんでルルゥの島に来て、じゃあこのシーツはナオの家のベッドで、後ろの温もりはリカー?そんでもって……
そこまで記憶を辿ると、ばちっと目を開いた。
がばっと起き上がって腹を見たが、別段なんともないし、怠さもない。
え、夢か?
「う~ん……ラシード、起きたの?」
横で目を覚ましたリカーを振り向くと、やっぱりノーメイク。
う~ん、素顔はイケメンなんだなぁ。
「なぁ、リカー。俺、昨日酔っぱらって…」
「夢じゃないからね~」
おずおずと聞いたら、良い笑顔でリカーが上を指さした。
「?……はああっ?」
上を見たら、ブルーに光る卵が浮いていた。
うおっ、照明かと思ってたら卵かっ。
「え……これって…え……」
青く光ってて、時おりピンク色が混ざるってことは?
「うっそ……俺が……産んだとか?まさか…」
「は~い、そのまさかで~す」
茫然としながら卵に手を伸ばすと、フヨフヨと光の玉が側に降りて来た。
両手の中で点滅している卵は、確かに俺が産んだもので、ちゃんと親だと分かって喜んでいる。
昨晩の夢ではなかったあれやこれやを思い出して撃沈しそうになったが、正直我が子は可愛いもんだ。
手に抱いていると、じわじわと愛しさが湧いてくる。
「ああ、ラシードに抱かれて喜んでいるのね。可愛いわ~」
リカーが蕩けそうな笑顔で覗きこんでくる。
「………はぁ~……お前、確信犯だろ」
溜め息をつきながらリカーを見ると、舌を出しながらしゃあしゃあとバレたか~とか言ってやがる。
「だって、ずっとお気に入りだったのよ、ラシードのブルー。この鱗の子供がどうしても最初に欲しかったんだもの」
俺の髪をスルリと撫でてから頭にキスをしてくるリカーに、更に脱力する。
ズルいヤツだ。
そんなこと言われたら、怒るに怒れない。
髪を撫でる手も、キスも本当に愛しいって気持ちが伝わってきて。
「お、俺だってお前のピンクの鱗の子供が……ほ、欲しかったんだぜ」
言いながら照れた。
何言ってんだろう、こっぱずかしい。
「それ、本当っ?」
リカーが目をキラキラさせながら聞いてくるのに、そっぽを向きながらも答えてやる。
「う……ま、まあな。綺麗じゃないか、そのピンクの髪とかさ…」
「…………じゃあ、作っちゃう?ピンクの髪の子供」
リカーの目がトロリと色気を纏う。
「は、今からっ?」
ぎょっとしてマジマジとピンクの瞳を凝視すると、ウンウンと頷いた。
「体はしんどくないでしょ?ナオちゃんがエキス玉をくれたから昨日飲ませておいたのよ」
ああ、それで何ともなかった訳か。
エキス玉、本当にすげえな。
「ピンクの髪と鱗で、マリンブルーの瞳の子……ああ、絶対に可愛いわね」
想像してうっとりとしてるリカーに、今度は俺が抱く側だし、頑張ってみるかと思った。
そんなことをボケっと考えていた自分の後頭部をはたいてやりたい。
「……うっ、あっ……もうダメだ…リカー……くっ…」
四つん這いになって後ろから攻められながら、俺はカナンに言うべく恨み言を延々考えていた。
そう、俺は知らなかった。
一度攻めと受けが確定すると、それ以降はほぼ固定のカップリングになってしまうこと。
攻め側が孕むことはまず無くなってしまうこと。
子供を産んだ方は、ミルクを出そうとする本能で体が敏感になること。
そしてそして、立て続けに産むと逆のカラーリングの子供ができること。
やっぱり俺が産むのかいっ。
くっそぅ、カナンめ。わざと俺に教えなかったなアイツ。
俺が子供の話をした時には、ニコニコと笑ってはぐらかしていたんだな。
知の守護者であり、リカーの友人であるアイツを侮っていた。
「はっあ……くうっ………あ…っ」
頭を振ろうがシーツを握りしめようが、ビクビクと反応する体を押さえられない。
一番奥まで突き込まれて、またビュッと先端からミルクが噴き出す。
「ラシード、もう少しだから頑張って」
背中に覆いかぶさってリカーが耳元で囁いてくる。
それさえも刺激になってしまい。
きゅうっと後ろを締めつけてしまう。
「んっ……すごい締まる…素敵よ、ラシード」
「うあっ……も、無理だっ……リカ…」
更に激しくなるピストンに体が悲鳴を上げる。
快感も過ぎれば拷問だってことが身に染みた。
「ああ……もうすぐだわね…」
リカーに体を仰向けにひっくり返され、刺激にのたうつ体を押さえ込まれた。
「ほら……もうすぐよ、ラシード。今度はちゃんと見ていてね」
リカーが息を荒げながらも嬉しそうに俺の腹を触ってる。
「……あ……あっ?………」
見ると、腹の辺りがじんわりと光りだしてる。
孕む……のか?これ……
「さあ、いくわよ……たっぷり注ぎ込んで、孕ませてあげる」
「ひっ…」
ギラリとリカーの目が光ったように見えた。
猛然と突き込みを早めるリカーに、俺はもう抗う術がなかった。
もう前も後ろもイキっぱなしで、ミルクをポロポロと零して仰け反る。
「いっ……てる……イッてるからっ……もっ…ひ……」
「うん、ラシード……愛してるわよ…っ」
腰を限界まで押しつけて、ドクドクっと中に注がれる。
「ふっ……ううっ……」
腹の中がカアっと熱くなったと思ったら、その熱がフワっと外に出ていく。
浮き上がった光は可愛いピンク色をしていた。
そこまでで、俺の意識は途切れた。
「……し……死ぬかと思ったぜ…」
無事に子供を産んだところまではいい。
ピンク色に光る卵はやっぱり可愛かったし、気絶から目覚めてナオのエキス玉で体力も回復した。
ただその後、更にリカーに挑まれて悲鳴を上げた。
そう、卵が2つということは、ミルクも倍必要になる訳だ。
いやもう、本当に死ぬかと。
「って言うか、アイツは何であんなに体力あるわけ?」
俺が今ベッドにグッタリと懐いているのに、リカーはナオちゃんにお土産を持って帰らなくっちゃね~と外でパンを焼いている。
信じられねぇ、なんてぇ体力だよ。
俺はオネエの実力を見誤っていたぜ。
しかも、火の扱い方もカナンから指導されてるから大丈夫よぉ~って器用に焚火をおこしてる。
怖くないのか、火が。
色々と負けたようで悔しくて、無理矢理上体を起こしてベッドから出た。
「……っ……腰、いてぇ~」
呻きそうになるところを堪えて、2つの卵を連れて外に出る。
「あら、ラシード。まだ寝ていていいのに」
振り返ったリカーは、俺をじっと見てからニッコリと笑った。
ちっ、幸せそうに笑いやがって。
俺が両手に卵を抱いているのが嬉しいんだろう。
幸せオーラだだ漏れだ。
「ナオに土産だろう?それくらいなら手伝える」
胡坐をかいて座ると、枝の先にパンの元をコネてつける。
卵は胡坐の上でフワフワと大人しく浮いているから問題ない。
「……ふふ、ありがと」
リカーは嬉しそうに笑うと、焚火に薪をくべて火加減を調整した。
帰ったら案の定というか、上へ下への大騒ぎだった。
まあ、いきなり2個も卵産んでくるなんて、無いわな~。
全員が全員、口と目を真ん丸にしている光景はかなりウケたけどな。
不幸中の幸いは、2個の卵があることで、どちらが産んだのか分からないってことか。
ブルーの1つだけだったら俺が産んだことがバレバレだったが、ピンクのもあるとどっちを先に産んだかなんて分からないからな。
統括のメンバー以外にはバレたくなかったから、急いでラウンジに移動した。
「すご~い、2個もいきなり産んじゃうなんて、リカーさんスゴ過ぎるよ~」
うう、ナオの純粋な言葉が痛い。
目をキラキラさせて2個の卵を両手に抱いているナオに、俺はなかなか真実を告げられずに困っていた。
「遅くなった。おうラシード、リカーお帰り~」
カナンが遅れてラウンジに入ってきた。
「カナンっ、この野郎~……ってて」
勢いよくソファから立ち上がった俺は、腰の痛みにヘロヘロと座り込んだ。
「おおっ、2個も産んできたのかラシード、頑張ったなぁ。リカーもお疲れさん、嫁に似た子供は可愛いからな、2人もなんて羨ましいなぁ」
ふおっ、嫁~っ!とナオが叫んでいるが、ヨメって何だ?
「うふふ、ありがと~」
「えっ、えっ、ラシードが嫁なのっ?うっそ、ラシードが産んだのおっ?」
「………ええ~~~~っ」
周りから上がる悲鳴のような叫び声の中、嫁の意味を知った俺は撃沈した。
子供を産む方を嫁っていうのか。
ううっ、穴掘って入りたい。
多分真っ赤になってるだろう顔を両手で隠して、俺は小さくなった。
何の罰ゲームだよ、これ。
恥ずかし過ぎるっ。
「……そ、それは想定外だったな」
さすがにライジャ様も茫然としている。
「………俺が一番想定外でしたけどね」
まぁ、しょうがない。このメンバーには隠しておいてもいずれバレるしな。
「リカーとラシードの場合は、どちらも体力ありそうだから、どちらが産んでも問題は無さそうだが」
いやいや、体力とかそういうことじゃねぇわ。
はっ、まさかナギ、お前も騙された口か?もしや……
カナンを見ると、ニヤ~っと悪い笑顔をくれた。
マジかよ……こえぇ。
知の守護者、こえぇ。
最初から手の上を転がされていたって訳かよ。
「……でも、幸せだろ?」
ニヤニヤと笑うカナンをじろっと睨んでから、溜め息をついた。
「……あったり前だ」
「ラシード…」
横に座るリカーが嬉しそうに腰を抱いてチュッチュと頭にキスしてくるのを押しやって、まだポカンとしてるナオの口に焼いてきたパンをぐっと突っ込んでやった。
「むぐぅ…」
目を白黒させているけど、しっかりと食べるのな。
「………俺も、カナンのオレンジ色の鱗の子供、欲しいな…」
ぼそっと言ったナギの言葉に目を剥いたが、カナンがいる手前、下手なことは言えなかった。
早くもカナンの目がギラギラしてるし。
おっかねぇよ。
「ま、とにかくよろしく頼むよ」
と、メルサに言うと
「任せて下さい。孵化施設は万全の体制ですから」
と力強く頷いてくれた。
ピンク色の卵を抱いてリカーを見ると、リカーもブルーの卵を抱いて俺を見ていた。
「どっちもイケメンになるわよ~」
と嬉しそうに笑う。
「楽しみだねぇ」
ナオがワクワクが2倍に増えたよ~とパンを片手にニコニコと笑う。
皆もうんうんと頷いている。
2年後に生まれてくる子供達を想像して、俺も口元が綻んだ。
「そうだな」
頑張って、快適な世界を作らないとな。
ぼんやりと意識が戻ってきた。
サラリとしたシーツと背中から包まれる温もりの気持ち良さにもう一度意識を手放そうとしたが、何かが引っかかる。
「………ん……?」
あれ?俺、昨日……結婚したよな?
そんでルルゥの島に来て、じゃあこのシーツはナオの家のベッドで、後ろの温もりはリカー?そんでもって……
そこまで記憶を辿ると、ばちっと目を開いた。
がばっと起き上がって腹を見たが、別段なんともないし、怠さもない。
え、夢か?
「う~ん……ラシード、起きたの?」
横で目を覚ましたリカーを振り向くと、やっぱりノーメイク。
う~ん、素顔はイケメンなんだなぁ。
「なぁ、リカー。俺、昨日酔っぱらって…」
「夢じゃないからね~」
おずおずと聞いたら、良い笑顔でリカーが上を指さした。
「?……はああっ?」
上を見たら、ブルーに光る卵が浮いていた。
うおっ、照明かと思ってたら卵かっ。
「え……これって…え……」
青く光ってて、時おりピンク色が混ざるってことは?
「うっそ……俺が……産んだとか?まさか…」
「は~い、そのまさかで~す」
茫然としながら卵に手を伸ばすと、フヨフヨと光の玉が側に降りて来た。
両手の中で点滅している卵は、確かに俺が産んだもので、ちゃんと親だと分かって喜んでいる。
昨晩の夢ではなかったあれやこれやを思い出して撃沈しそうになったが、正直我が子は可愛いもんだ。
手に抱いていると、じわじわと愛しさが湧いてくる。
「ああ、ラシードに抱かれて喜んでいるのね。可愛いわ~」
リカーが蕩けそうな笑顔で覗きこんでくる。
「………はぁ~……お前、確信犯だろ」
溜め息をつきながらリカーを見ると、舌を出しながらしゃあしゃあとバレたか~とか言ってやがる。
「だって、ずっとお気に入りだったのよ、ラシードのブルー。この鱗の子供がどうしても最初に欲しかったんだもの」
俺の髪をスルリと撫でてから頭にキスをしてくるリカーに、更に脱力する。
ズルいヤツだ。
そんなこと言われたら、怒るに怒れない。
髪を撫でる手も、キスも本当に愛しいって気持ちが伝わってきて。
「お、俺だってお前のピンクの鱗の子供が……ほ、欲しかったんだぜ」
言いながら照れた。
何言ってんだろう、こっぱずかしい。
「それ、本当っ?」
リカーが目をキラキラさせながら聞いてくるのに、そっぽを向きながらも答えてやる。
「う……ま、まあな。綺麗じゃないか、そのピンクの髪とかさ…」
「…………じゃあ、作っちゃう?ピンクの髪の子供」
リカーの目がトロリと色気を纏う。
「は、今からっ?」
ぎょっとしてマジマジとピンクの瞳を凝視すると、ウンウンと頷いた。
「体はしんどくないでしょ?ナオちゃんがエキス玉をくれたから昨日飲ませておいたのよ」
ああ、それで何ともなかった訳か。
エキス玉、本当にすげえな。
「ピンクの髪と鱗で、マリンブルーの瞳の子……ああ、絶対に可愛いわね」
想像してうっとりとしてるリカーに、今度は俺が抱く側だし、頑張ってみるかと思った。
そんなことをボケっと考えていた自分の後頭部をはたいてやりたい。
「……うっ、あっ……もうダメだ…リカー……くっ…」
四つん這いになって後ろから攻められながら、俺はカナンに言うべく恨み言を延々考えていた。
そう、俺は知らなかった。
一度攻めと受けが確定すると、それ以降はほぼ固定のカップリングになってしまうこと。
攻め側が孕むことはまず無くなってしまうこと。
子供を産んだ方は、ミルクを出そうとする本能で体が敏感になること。
そしてそして、立て続けに産むと逆のカラーリングの子供ができること。
やっぱり俺が産むのかいっ。
くっそぅ、カナンめ。わざと俺に教えなかったなアイツ。
俺が子供の話をした時には、ニコニコと笑ってはぐらかしていたんだな。
知の守護者であり、リカーの友人であるアイツを侮っていた。
「はっあ……くうっ………あ…っ」
頭を振ろうがシーツを握りしめようが、ビクビクと反応する体を押さえられない。
一番奥まで突き込まれて、またビュッと先端からミルクが噴き出す。
「ラシード、もう少しだから頑張って」
背中に覆いかぶさってリカーが耳元で囁いてくる。
それさえも刺激になってしまい。
きゅうっと後ろを締めつけてしまう。
「んっ……すごい締まる…素敵よ、ラシード」
「うあっ……も、無理だっ……リカ…」
更に激しくなるピストンに体が悲鳴を上げる。
快感も過ぎれば拷問だってことが身に染みた。
「ああ……もうすぐだわね…」
リカーに体を仰向けにひっくり返され、刺激にのたうつ体を押さえ込まれた。
「ほら……もうすぐよ、ラシード。今度はちゃんと見ていてね」
リカーが息を荒げながらも嬉しそうに俺の腹を触ってる。
「……あ……あっ?………」
見ると、腹の辺りがじんわりと光りだしてる。
孕む……のか?これ……
「さあ、いくわよ……たっぷり注ぎ込んで、孕ませてあげる」
「ひっ…」
ギラリとリカーの目が光ったように見えた。
猛然と突き込みを早めるリカーに、俺はもう抗う術がなかった。
もう前も後ろもイキっぱなしで、ミルクをポロポロと零して仰け反る。
「いっ……てる……イッてるからっ……もっ…ひ……」
「うん、ラシード……愛してるわよ…っ」
腰を限界まで押しつけて、ドクドクっと中に注がれる。
「ふっ……ううっ……」
腹の中がカアっと熱くなったと思ったら、その熱がフワっと外に出ていく。
浮き上がった光は可愛いピンク色をしていた。
そこまでで、俺の意識は途切れた。
「……し……死ぬかと思ったぜ…」
無事に子供を産んだところまではいい。
ピンク色に光る卵はやっぱり可愛かったし、気絶から目覚めてナオのエキス玉で体力も回復した。
ただその後、更にリカーに挑まれて悲鳴を上げた。
そう、卵が2つということは、ミルクも倍必要になる訳だ。
いやもう、本当に死ぬかと。
「って言うか、アイツは何であんなに体力あるわけ?」
俺が今ベッドにグッタリと懐いているのに、リカーはナオちゃんにお土産を持って帰らなくっちゃね~と外でパンを焼いている。
信じられねぇ、なんてぇ体力だよ。
俺はオネエの実力を見誤っていたぜ。
しかも、火の扱い方もカナンから指導されてるから大丈夫よぉ~って器用に焚火をおこしてる。
怖くないのか、火が。
色々と負けたようで悔しくて、無理矢理上体を起こしてベッドから出た。
「……っ……腰、いてぇ~」
呻きそうになるところを堪えて、2つの卵を連れて外に出る。
「あら、ラシード。まだ寝ていていいのに」
振り返ったリカーは、俺をじっと見てからニッコリと笑った。
ちっ、幸せそうに笑いやがって。
俺が両手に卵を抱いているのが嬉しいんだろう。
幸せオーラだだ漏れだ。
「ナオに土産だろう?それくらいなら手伝える」
胡坐をかいて座ると、枝の先にパンの元をコネてつける。
卵は胡坐の上でフワフワと大人しく浮いているから問題ない。
「……ふふ、ありがと」
リカーは嬉しそうに笑うと、焚火に薪をくべて火加減を調整した。
帰ったら案の定というか、上へ下への大騒ぎだった。
まあ、いきなり2個も卵産んでくるなんて、無いわな~。
全員が全員、口と目を真ん丸にしている光景はかなりウケたけどな。
不幸中の幸いは、2個の卵があることで、どちらが産んだのか分からないってことか。
ブルーの1つだけだったら俺が産んだことがバレバレだったが、ピンクのもあるとどっちを先に産んだかなんて分からないからな。
統括のメンバー以外にはバレたくなかったから、急いでラウンジに移動した。
「すご~い、2個もいきなり産んじゃうなんて、リカーさんスゴ過ぎるよ~」
うう、ナオの純粋な言葉が痛い。
目をキラキラさせて2個の卵を両手に抱いているナオに、俺はなかなか真実を告げられずに困っていた。
「遅くなった。おうラシード、リカーお帰り~」
カナンが遅れてラウンジに入ってきた。
「カナンっ、この野郎~……ってて」
勢いよくソファから立ち上がった俺は、腰の痛みにヘロヘロと座り込んだ。
「おおっ、2個も産んできたのかラシード、頑張ったなぁ。リカーもお疲れさん、嫁に似た子供は可愛いからな、2人もなんて羨ましいなぁ」
ふおっ、嫁~っ!とナオが叫んでいるが、ヨメって何だ?
「うふふ、ありがと~」
「えっ、えっ、ラシードが嫁なのっ?うっそ、ラシードが産んだのおっ?」
「………ええ~~~~っ」
周りから上がる悲鳴のような叫び声の中、嫁の意味を知った俺は撃沈した。
子供を産む方を嫁っていうのか。
ううっ、穴掘って入りたい。
多分真っ赤になってるだろう顔を両手で隠して、俺は小さくなった。
何の罰ゲームだよ、これ。
恥ずかし過ぎるっ。
「……そ、それは想定外だったな」
さすがにライジャ様も茫然としている。
「………俺が一番想定外でしたけどね」
まぁ、しょうがない。このメンバーには隠しておいてもいずれバレるしな。
「リカーとラシードの場合は、どちらも体力ありそうだから、どちらが産んでも問題は無さそうだが」
いやいや、体力とかそういうことじゃねぇわ。
はっ、まさかナギ、お前も騙された口か?もしや……
カナンを見ると、ニヤ~っと悪い笑顔をくれた。
マジかよ……こえぇ。
知の守護者、こえぇ。
最初から手の上を転がされていたって訳かよ。
「……でも、幸せだろ?」
ニヤニヤと笑うカナンをじろっと睨んでから、溜め息をついた。
「……あったり前だ」
「ラシード…」
横に座るリカーが嬉しそうに腰を抱いてチュッチュと頭にキスしてくるのを押しやって、まだポカンとしてるナオの口に焼いてきたパンをぐっと突っ込んでやった。
「むぐぅ…」
目を白黒させているけど、しっかりと食べるのな。
「………俺も、カナンのオレンジ色の鱗の子供、欲しいな…」
ぼそっと言ったナギの言葉に目を剥いたが、カナンがいる手前、下手なことは言えなかった。
早くもカナンの目がギラギラしてるし。
おっかねぇよ。
「ま、とにかくよろしく頼むよ」
と、メルサに言うと
「任せて下さい。孵化施設は万全の体制ですから」
と力強く頷いてくれた。
ピンク色の卵を抱いてリカーを見ると、リカーもブルーの卵を抱いて俺を見ていた。
「どっちもイケメンになるわよ~」
と嬉しそうに笑う。
「楽しみだねぇ」
ナオがワクワクが2倍に増えたよ~とパンを片手にニコニコと笑う。
皆もうんうんと頷いている。
2年後に生まれてくる子供達を想像して、俺も口元が綻んだ。
「そうだな」
頑張って、快適な世界を作らないとな。
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