異世界トリップ? -南の島で楽しい漂流生活始めました-

月夜野レオン

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第一章

44.なんてキレイな世界

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結界が解除されると、霧が晴れるように目の前のぼやけた視界がクリアになる。
ぼやけた塊はナギさんと同じ槍を持ったリリィの兵士達だった。
急に目の前に現れた俺達にビックリしてる。
「あれ、結界が……あっ、王」
「ライジャ様、おおっ…そのお姿は……」
「ルーリィ様だっ」
「なんと……あれがルルゥの神子様か…」
皆鍛えられてがっしりとした体形の人魚さん達だけど、王様の変身した姿や初めて見る俺に大興奮状態。
「お前達、任務中だぞ。すぐに警護の体制をとれ」
「はっ」
興奮してる兵士達にナギさんの激が飛ぶ。
よく訓練されているみたいで、すぐに真剣な顔に戻った兵士達は上下左右と後方に陣取って槍を構える。
「ここからは俺が先導します」
ナギさんが先頭に立って誘導してくれる。
さすが警護のリーダー、統率がちゃんととれてるなぁ。
短髪の深緑色の髪に同じ色の鱗が引き締まった上半身とマッチしてカッコイイわ。
しっぽのストロークが力強い。イケメンだし、モテるだろうな。
えっと、ライジャが一番のイケメンだけどねっ。テレテレ。

しばらく泳いでから、皆が一斉に止まった。
「ここが城の真上になる」
「へ?そうなの?」
ライジャに言われたけど、回りを見てもなにも目印がないから全然分からないんですけど。
皆どんなセンサー持ってるわけ?
「ここからは一気に城まで直進するぞ」
一気に?
上から直滑降ですか~。
ゆったり行けない理由があるのかな?
「な、何か危険なものがあるとか?」
ビクビクして聞いたら、ライジャがクスっと笑って首を横に振った。
「そうではない。ただ、民はまだルーリィやルルゥの民を見たことがないのだ。いきなり姿を見せてパニックを起こしてはいけないからな」
あー、そういうことね。
それなら納得。
「それに、お披露目の時に初披露して、驚かせてやりたいのもある」
悪戯っ子のようにニヤっと笑う王様、カッコカワイイいんですけど~。
俺とライジャを真ん中にして皆がギュギュっと密集してから、真下に向けて進みだす。
ガタイの良い兵士さん達に囲まれると、俺達の姿は外から見えなくなる。
進み始めて少しすると、下の方に底の景色が見え始めた。
「ライジャ、あそこがベリオン?」
進む先に白い建物があって、回りに色とりどりの建物が散らばってる。
「そうだ。あの白いのが城だ」
お城といっても、中世のヨーロッパの城みたいなヤツじゃなくて、ギリシャの白い壁の建物的な感じかな。
シンプルな作りで、白を基調にしてるけど所々にキラっと光る素材が使われている。
回りの建物も、形は四角や三角や丸で可愛いパステルカラーのものが多い。
街路樹みたいに、緑色のものや黄色いものがあちこちに見える。
そして建物の間や上を行き来してるのは人魚、リリィの民だ。
色とりどりの鱗が光に反射してキラリと光る。
「……綺麗だなぁ」
思わず呟いたら、横にいるライジャが嬉しそうにこっちを見た。
「気に入ってもらえて良かった」
生活してた無人島も綺麗だったけど、リリィの住む海底も綺麗だ。
この世界は綺麗に満ち溢れてる。

ぐんぐんと城が近づいてくる。
「ナオあそこに開いてる穴が見えるか?」
ライジャがこそっと耳打ちしてくる。
ひときわ高いところにある丸いドーム状の屋根の中央が丸く開いてる。
「うん、見えるよ」
「あそこに飛び込むぞ」
え、このまま?この勢いで?
王様、また悪戯っ子みたいな顔になってますよ~。
ま、いっか。
城が近づいてきて、皆がスピードを緩めた途端、ライジャがナギさんを追い越してグンっとダッシュをかける。
俺も遅れずに並んでいく。
「あっ?…ライジャ様っ、ナオ様っ」
ナギさんの焦った声を後ろに、2人で矢のように進む。
ルーリィのフィンキックはかなりのスピードが出る。
護衛の兵士達を置き去りにして俺とライジャはサーっとドームの穴に入った。
「到着~……えっ?」
まさかの不意打ちで、ドームの上半分は水がありませんでした。
結果として、ドームの下半分にある水面に滝から落ちたみたいにスゴい水しぶきと泡を伴って飛び込む形になった。
「わわわっ」
「きゃ~~!なにっ?」
「ひえっ」
ドボーンと飛び込んだら、回りから悲鳴が聞こえた。
回りが泡だらけで何も見えない。
フワリと後ろから抱きしめられた。ライジャだ。
「今、戻ったぞ」
泡が上に上がって視界がクリアになると、ドームの中には5人の人魚さん達がいた。
ふお~、色とりどりだ。
「またライジャ様はっ、おふざけが過ぎますっ」
「ははっ、すまん」
青い鱗のガッチリした人に怒られつつも、ライジャは笑ったままだった。
「わぁ、ルルゥの神子様だ~」
「ああ、あれがルーリィ様……」
「まぁ…なんて……」
5人が口々に言いながら回りに集まってきたけど、一定の距離を開けたところで止まる。
「王様、ダッシュ早すぎ~」
上の穴からカナンさんや護衛の人たちが入ってきた。
「ご、ごめんなさいナギさん、カナンさん。あと護衛の方達も」
ちょっとハメを外し過ぎちゃった。
慌てて謝ると、護衛の人達がピキンと固まってる。
え?何か変なこと言ったか?
「あ~大丈夫。どうせ王様がそそのかしたんでしょ」
カナンさんは普通にカラカラと笑ってる。
「ここまでの護衛、御苦労だった。戻ってよい」
ライジャに言われて、護衛の人達が両手を胸の前でクロスさせる。
あれってこの世界の敬礼みたいなものか。
カッコイイな。
上の穴に向かっていく護衛の人達に取り敢えず手を振る。
「ありがとうございました~」
あれ?またキョドってる?
む、挨拶の仕方が変なのかな?
ちょっと不安になって後ろのライジャを見上げると、優しく微笑まれた。
「心配しなくていい。ルルゥの神子から感謝の言葉を貰ったので驚いているだけだ」
「え、お礼言っちゃいけなかったの?」
ええっ、でも礼儀は必要だよね。俺、その辺は両親に厳しく躾けられたからな。
それに神子って。
「リリィの民は皆、ルーリィは神に近い位置の者と教わっているのだ。だから畏敬の念をもって接している」
ひえ、半分神様扱いなの?
それはちょっと及び腰になるというか、そんなに崇め奉られても何にも出ないよ~。
いや、玉が出るんだった。はうっ。
「そうなんだ……俺って、皆さんとどう接したらいいのかな?」
ライジャの立場もあるだろうし、勝手には決められないよな。
背中を撫でる恋人の手に、緊張してたことに気づいた。
「焦らなくていい。民に対しては、これからゆっくりと距離を縮めていこう」
「うん」
「さて、まずは俺の腹心達を紹介しよう。この者達には普通に接して大丈夫だ」
改めてライジャと共にドーム内にいる7人と向き合った。
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