異世界トリップ？ -南の島で楽しい漂流生活始めました-

第一章

25.この世界

ライジャは分かりやすくこの世界のことを教えてくれた。
この世界は、水と空の2つで構成されている。
まずは水の世界。
水の世界はリリィ神、すなわち白モフさんが作った世界。
水の世界にはリリィの民、人魚さん達が暮らしていて、4つの地域に分かれてるんだと。
ルージュ、ロヒア、エカンデ、そして首都にあたるのがベリオン。
「ということは、ベリオンの王様って、事実上は水の世界の王様ってことになるの？」
「そうだ」
ひえ～、すごい。
ライジャは全リリィの民の王様なのか。
イケメンで最高権力者。
さぞかしモテモテなんだろうなぁ。
あ、でも人魚に性別はあるのかな？
なんせ異世界だからな。
最初に男性の人魚が登場したからびっくりしたけど、いわゆる人魚姫みたいな方がいるのか気になるところだよねぇ。
「あの、人魚……リリィの民って、性別はあるの？」
「性別とは？」
ライジャが不思議そうに首を傾げる。
おおぅ、そこの概念から違うのか？
「えっと～……オスとメス、子供を産む人と産まない人みたいな違い？」
「ああ、そういう意味ならば、全員がどちらも可能だ」
「えっ、そうなの？」
両性ってことなのかな？
「見た目は全員、私と変わらない」
あら～、残念。人魚姫はいないんだ。
みんな男性的な外見の人魚さんね。
で、空の世界はルルゥ神、黒モフさんが作った世界。
空っていうのは、この地上の空気のある場所全部を指すらしい。
ここには元々住んでる人はいなくて、ルルゥがどこからか召喚した者が降臨するんだって。
しかもごくたまに。
俺はその、ごくたまにってヤツに当たったのか？
「たまにって、どれくらいの頻度なの？」
5年とか10年に一度くらいかなぁ。
ライジャが少し考えてから口を開いた。
「……1000年に一度くらいだな」
「はいっ？」
何とおっしゃいました？
「1000年っ……1000年に一度？…」
桁が違ーう！しかも2桁もっ。
それって、ごくたまにじゃなくって、ちょ～稀にってヤツだろ。
何その頻度。
「ああ、言い忘れたが、私達リリィの民の寿命は3000年くらいだ」
「へ……？」
マジか。
あ、もしかして時間の概念が違うのかも？
と思ったけど、同じでした。
ええ～。
1年は300日だったけどね。
長命の種族なのね～。
想像の斜め上を行くわ。
「でもこの3000年近く、ルルゥの民は降臨していなかった。だからナオが来てくれて嬉しいのだ」
「え、そうなんだ」
「ただ、嬉しいと言ってしまうのは、ナオには申し訳ないのだが」
「え？何で？」
ライジャが少し悲しそうな表情になってる。
「……ルルゥが異世界人を召喚できるのは、その世界での生命が絶たれる瞬間だと聞いている」
あ……そうなんだ。
やっぱり俺、あそこから落ちて死んじゃったわけか。
だよね～、あの高さから落ちて生き残れるはずがないよな。
「………そっか。なら仕方がないよな。じゃあここで生きられるのは、俺的には第2の人生ってわけね」
むしろラッキーなんじゃね？
セカンドライフを貰えたなんてさ。
ルルゥには感謝しなくちゃだな。呼んでくれてありがとうって。
うん、何かすっきりしたよ。
「………ナオは強いな」
ライジャの手が俺の頬を優しく撫でる。
銀色の瞳も優しくなってるよ。
ちょっと照れる。
「ルルゥが呼べる条件は他にも色々とあるようだ。よくは分からないが時の流れの相関や、力の均衡や、ルルゥとの相性とかな」
ほ～、だからレアなのかな。
俺、ルルゥと相性良かったのね、そんな感じはしたけどね。
「ナオがここに来れて良かった、私はそう思う」
「っ……あ、ありがと」
ひい～、照れるからヤメテ。
イケメンの免疫持ってないから、顔が火照るよぅ。
何か愛しいものでも見るような甘い視線で見つめないで。
俺、男なのに勘違いしちゃったらどーするのさ。
あ、そうか、ライジャは男性じゃないし、それ以前に異世界人だった。
でも、そしたら異種間なんちゃらになるぞ？
どっちにしても、新しい扉が開いちゃうじゃん。
俺が脳内でグルグルしてるうちに、ライジャはまた明日来るって言って帰っていった。
何故か今日も別れ際にハグされて、額にキスされたよ。
これってこの世界での普通の挨拶なの？
だってすげえナチュラルだったよ。
俺は後でジタバタしちゃうんですけどー。
イケメンめ～。