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第一章
19.気づいてしまった
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寝過ごしてモソモソと起きてきた俺は、海に頭を突っ込んで眠気を醒ましてからフルーツとパンで朝食をとった。
今日は、昨日穴を開け終わった鱗をネックレスにしなくちゃ。
焚火をおこして、蔦を軽く火で炙って皮を剥いたら中の繊維を細く割く。
丈夫で細いヒモが何本もできた。
柔らかいし、これなら編みやすいな。
「よし、編んでいこう」
何で編めるのかって?
ふふふ、俺は北海道民。
大学の友達にアイヌ出身者がいたんだ。
そいつ、いつもおしゃれなアクセしてるもんだから、ある時どこで購入してるのか聞いたんだ。
そしたら自分で作ってるってんで、色々と編み方を伝授してもらったんだよ。
ブレスレットもキーホルダーも何でもござれ。
鱗の穴にヒモを通して、捩じったり潜らせたりして、編んだヒモの下に鱗がぶら下がるようにする。
これをたくさん作って、今度はヒモだけで首輪みたいな輪を編む。幅1センチくらいのね。
輪ができたら、その下に鱗付きのヒモを取り付ける。
じゃらじゃら動き過ぎるので、更に横糸を何本か通して固定。
「う~ん、なかなかオシャレじゃね?」
さっそく首に巻いて、後ろでヒモを縛ってみる。
クルリと回ると、ウロコが程よく当たってシャラシャラと上品な音をたてる。
うん、我ながらいい出来~。
腕は鈍ってないな。
お、もう夕方だ。
さて、夕食の支度をしよう。
とりあえずテーブルの上はそのままにして、焚火のところで芋を蒸して、ネギ入りのスープを食べる。
いつもより味を感じないのは気のせいかな。
気にしちゃいけない。
「ニャ~ン」
焚火を見ながらボーっとしていたら、いつの間にかオオカミさんが横に来ていた。
「おっ、ごめん~。ボケ倒してたよ」
慌ててパンを用意して、オオカミさんにふるまう。
おとなしくパンを食べ終わったオオカミさんは、俺の首元をじっと見つめてからフンフンと匂いを嗅ぐ。
ふふっ、可愛い。
「気づいた?これオオカミさんからもらったヤツで作ったんだよ」
どうかな?と俺は立ち上がってクルリと回ってみせた。
シャランと鳴る音に、オオカミさんが目をパチパチさせる。
「手作りなんだよ~、器用だろ」
首から外して見せて近くで見せてあげる。
「他にも作ろうと思って、編み方を研究したんだ」
テーブルにある編みかけのヒモも何本か取って、オオカミさんに見せる。
「こっちはオリジナルの編み方なんだ。こっちのは友達に教えてもらったヤツで、クセがあるから何度も…教えてもらってさ……俺が編めるようになったら、スゴく喜んでくれ…て……さ……」
口が重くなり、ヒモを持つ手が震えてきた。
ああ、失敗した。
思い出しちゃいけなかった。
思い出さないように、ずっと忙しくしていたのに。
「他の仲間も、みんないいヤツばっか…で………心配…かけちゃった、かな~……」
必死に笑ってるのに、目から液体がボロボロ零れる。
「……ニャ~ン」
オオカミさんが心配そうにすり寄ってくれる。
「……っごめ……ちょっ…とだけ……」
オオカミさんの首にしがみついたら、我慢できなかった。
「うっ……うわあぁ~ん……うあぁ~……」
溜め過ぎた気持ちが、堰を切ったように溢れだしてしまう。
もう帰れないことは気づいていた。
元の世界からこっちは多分、一方通行で。
仲の良かった友達とも二度と会えないし、あの緑の大地を踏む事もない。
そしてここには、俺ひとりきり。
この島で、これからもたったひとりで生きていくというのは悲しすぎるよ。
オオカミさんは可愛いし大好きだけれど、話すことは出来ない。
この先、誰とも会話することなくボンヤリと朽ち果ててくなんて。
そんなの寂し過ぎるよ。
誰でもいい、話がしたい。大したことじゃなくていいんだ。
雨降らねぇな~とか、この草は固いけどけっこう美味かったなとか。
どうでもいい会話がしたい。
それだけでいいから。
「寂しいよぅ………ひっく……ひとりは、やだよぅ…」
俺はオオカミさんにしがみついたまま、ひたすら泣き倒した。
今日は、昨日穴を開け終わった鱗をネックレスにしなくちゃ。
焚火をおこして、蔦を軽く火で炙って皮を剥いたら中の繊維を細く割く。
丈夫で細いヒモが何本もできた。
柔らかいし、これなら編みやすいな。
「よし、編んでいこう」
何で編めるのかって?
ふふふ、俺は北海道民。
大学の友達にアイヌ出身者がいたんだ。
そいつ、いつもおしゃれなアクセしてるもんだから、ある時どこで購入してるのか聞いたんだ。
そしたら自分で作ってるってんで、色々と編み方を伝授してもらったんだよ。
ブレスレットもキーホルダーも何でもござれ。
鱗の穴にヒモを通して、捩じったり潜らせたりして、編んだヒモの下に鱗がぶら下がるようにする。
これをたくさん作って、今度はヒモだけで首輪みたいな輪を編む。幅1センチくらいのね。
輪ができたら、その下に鱗付きのヒモを取り付ける。
じゃらじゃら動き過ぎるので、更に横糸を何本か通して固定。
「う~ん、なかなかオシャレじゃね?」
さっそく首に巻いて、後ろでヒモを縛ってみる。
クルリと回ると、ウロコが程よく当たってシャラシャラと上品な音をたてる。
うん、我ながらいい出来~。
腕は鈍ってないな。
お、もう夕方だ。
さて、夕食の支度をしよう。
とりあえずテーブルの上はそのままにして、焚火のところで芋を蒸して、ネギ入りのスープを食べる。
いつもより味を感じないのは気のせいかな。
気にしちゃいけない。
「ニャ~ン」
焚火を見ながらボーっとしていたら、いつの間にかオオカミさんが横に来ていた。
「おっ、ごめん~。ボケ倒してたよ」
慌ててパンを用意して、オオカミさんにふるまう。
おとなしくパンを食べ終わったオオカミさんは、俺の首元をじっと見つめてからフンフンと匂いを嗅ぐ。
ふふっ、可愛い。
「気づいた?これオオカミさんからもらったヤツで作ったんだよ」
どうかな?と俺は立ち上がってクルリと回ってみせた。
シャランと鳴る音に、オオカミさんが目をパチパチさせる。
「手作りなんだよ~、器用だろ」
首から外して見せて近くで見せてあげる。
「他にも作ろうと思って、編み方を研究したんだ」
テーブルにある編みかけのヒモも何本か取って、オオカミさんに見せる。
「こっちはオリジナルの編み方なんだ。こっちのは友達に教えてもらったヤツで、クセがあるから何度も…教えてもらってさ……俺が編めるようになったら、スゴく喜んでくれ…て……さ……」
口が重くなり、ヒモを持つ手が震えてきた。
ああ、失敗した。
思い出しちゃいけなかった。
思い出さないように、ずっと忙しくしていたのに。
「他の仲間も、みんないいヤツばっか…で………心配…かけちゃった、かな~……」
必死に笑ってるのに、目から液体がボロボロ零れる。
「……ニャ~ン」
オオカミさんが心配そうにすり寄ってくれる。
「……っごめ……ちょっ…とだけ……」
オオカミさんの首にしがみついたら、我慢できなかった。
「うっ……うわあぁ~ん……うあぁ~……」
溜め過ぎた気持ちが、堰を切ったように溢れだしてしまう。
もう帰れないことは気づいていた。
元の世界からこっちは多分、一方通行で。
仲の良かった友達とも二度と会えないし、あの緑の大地を踏む事もない。
そしてここには、俺ひとりきり。
この島で、これからもたったひとりで生きていくというのは悲しすぎるよ。
オオカミさんは可愛いし大好きだけれど、話すことは出来ない。
この先、誰とも会話することなくボンヤリと朽ち果ててくなんて。
そんなの寂し過ぎるよ。
誰でもいい、話がしたい。大したことじゃなくていいんだ。
雨降らねぇな~とか、この草は固いけどけっこう美味かったなとか。
どうでもいい会話がしたい。
それだけでいいから。
「寂しいよぅ………ひっく……ひとりは、やだよぅ…」
俺はオオカミさんにしがみついたまま、ひたすら泣き倒した。
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