異世界トリップ？ -南の島で楽しい漂流生活始めました-

第一章

16.ちょっと気になることが

この島に来て、そろそろ1ヶ月くらいになる。
主観だからイマイチ正確には分からないけど、多分それくらいは経ってると思う。
そして、ここが今まで住んでいた世界と違う世界だということも分かる。
うん、分かるよ。
だっていくら無人島と言っても、見たこともない植物や生物ばっかりだし、海水は真水だし、オオカミさんはニャ～ンと鳴くしね。
どう考えても地球上にこんな場所はないよね。
認めたくなーい！と叫んでも、聞いてる人いないから空しい～。
うん、異世界なんだと認めましょう。
何がどーしてこうなったのかはさっぱり分からんけどね。
そして、ちょっと気になることがある。
最初は気にしていなかったけど、日を追うごとに膨らんできた疑問。
家を作る時に、はたと気づいたけど頭の隅に追いやっていた。
だって生きるのに忙しかったからね。
落ち着いてきた今、すごく気になってきたわけです、はい。
俺の家には……トイレがない。
ない………というか、必要ない？
こっちに来てから、一度たりとも尿意や便意を感じないんだよ。
なくね？ありえなくね？
1ヶ月の便秘とか死んじゃうし、そもそも尿意がないとか変。
あんなに飲んでるし、食べてるし？
でも腹を擦っても膨らんでないし、膨満感もない。
あんなにモリモリ食べたパンやら実やらは、一体どこにいったんでしょうかね？
この腹の中にはブラックホールが出来てるんだろうか。
いやいや、ないわ～。
俺が死んでここが天国なら、まあ分かるんだけどね。
そうでないなら、ここに来た段階で俺の体も変わってるってことか？
見た目はまったく変わらないけどな。
も少しイケメンになってもいいんだけどね？
……人いないんだから意味ないっすね、はい。
と、いうことはですよ。
こいつの役割はもうまったくないってこと？
誰もいないのに、ついキョロキョロ見回してからパンツのゴムをそろりと引っぱる。
ほんと、まったく変わらないな。
ちょっとはサイズアップしてもバチは当たらないと……
でも、使い道ないんですね。
人いないしね。
はぁ、ちょっと悲しい気分になった。
息子よ、ごめん。一度も使ってやれなかったなぁ。
衛生的にはいいのかもだけど。
まあ、考えても仕方ないかぁ。
異世界ってことで全て丸く収めるしかないか。とほほ～。
メンタルに打撃受けたので、オオカミさんに癒してもらおう。

今宵もやってきたオオカミさんは、やっぱりお土産を咥えてきた。
この綺麗な鱗みたいなもの、かなり貯まってきた。
うまく細工して、アクセサリーでも作ってみようかな。
最近、パンをホイっと投げ上げてジャンピングキャッチする遊び食いにはまって、オオカミさんは楽しそうに飛び跳ねている。
ジャンプ力すげぇ。
あの、ワンコがフリスビーキャッチするみたい。
でも絶対に8個しか食べないのは何故なんだろう？
何か戒律があったりするのかなぁ？
きっちり8個、食べ終わったらモフモフタイム。
ふお～、この癒しだよ、これこれ。
もともと動物は好きだし、子供の頃は家で犬を飼ってたからモフいの大好き。
一緒に寝てくれないかなぁ。
ニャ～ンとシッポを振りながら去っていくオオカミさん。
ダメですか、帰りますか。ツンデレめ～。
でも可愛いから許す。