上 下
2 / 59
幼少期編

魔法改変

しおりを挟む
「魔力循環は問題ないから初級の簡単な魔術を練習してみましょう」

 母さんは初級の魔術書を開いて魔法陣の描かれているページを開いた。

「水精霊の手招き。揺れ動く水玉は現世を揺蕩う」
『ウォーターボール』

 詠唱と思われる言霊を母さんが紡ぐにつれて目の前に魔術書に記載されている魔法陣が形成されていく。そして詠唱が終わると同時に完成し、淡い光を放ちながら母さんの目の前には水球が浮かんでいた。

「これが水の初級魔法、ウォーターボールよ」

「おお! すごいすごい!」

 俺は初めて見る魔法に感動していた。何も無い空間に突然水が出てきて浮かんでいるのだ。これに感動せずにいられようか。いいや不可能だ。これは俄然やる気が出る。さっそくやってみるか。

「水精霊の手招き。揺れ動く……」

 なんだっけ。でもなんか別に詠唱しなくても魔法陣組めそうだな。このままやってみよう。

『ウォーターボール』

 いい感じ。魔力を目の前に動かしてそのままさっき見た魔法陣と同じように象っていく。そして魔法陣が完成すると目の前に水球が形成されていた。母さんのより一回り小さめだが初めてでこれなら充分じゃないだろうか。

「母さ……ん?」

母さんとミーアは呆然とした顔で俺の作ったウォーターボールを見ていた。

「あれ? どうしたの?」

「初めて……? というか詠唱破棄した?」

 おっと、よく覚えてなくて詠唱省いたんだが詠唱破棄とな。分かる、分かるぞ。大体詠唱破棄とかは高難度なんだよな。いきなりやりすぎたかもしれない。いやでもここには家族しかいない。ミーアは血は繋がってないけど家族みたいなものだ。なら大丈夫だ。うん。

「奥様、これは……」

「ええ……これは大変ね」

「すぐに魔力循環できていたので才能があるとは思っていましたがまさかこれ程とは」

「楽しみね。私たちのルシウスはきっと世界一の魔法使いになるわ」

 お約束よろしく俺は魔法の才能が溢れているようだ。とても、とても喜ばしいことだ。



 あれか半年程魔法の練習をしていて気づいたことがある。魔法を発動するための詠唱、あれは魔法陣を象るための補助のようなものらしい。イメージだけで補完が難しい場合に言霊を詠唱することで魔法陣を形成しやすくなるらしい。ちなみに俺は全くの無駄にしかならなかったので詠唱はしていない。

 そしてここからが重要なのだが、魔法陣はプログラムに近いものだと思う。最初はただの模様として魔法陣を認識していたのだが、何種類か魔法の練習をしていると同じ様な模様、もとい文字が出てきていた。それらを少しずつ変更して試してみると面白いことがわかったのだ。魔法陣にはこんなことが魔法語?で書かれていた。

魔法属性=水
形状=球
発動数=1
威力=100
魔力=1000
速度=100
誘導=1

 所々書かれている数字はよく見ると普通にアラビア数字だった。何故この世界でアラビア数字があるのかは知らないが、これのおかげで文字だと気づくことが出来たのだが。さて、あとは同じ文字が出てきているところの隣の数字を少しずつ変更して実際に使ってみれば何が変わったのかは簡単に分かった。

『ウォーターボール』

 組み込んだのは下記の通りだ。

魔法属性=水
形状=球
発動数=1
威力=100
魔力=500
速度=300
誘導=100

 威力は上げすぎると被害が予測できないのでそのまま。速度と対象への誘導性を上昇させた。それでも魔力消費は元々の半分だ。元々はウォーターボール1発で魔力消費が1000だったが、今は強化して500だ。単純に効率が上がっているが、そもそもの消費魔力が多すぎて無駄になっていたためそれを削減している。何度も試した結果、威力+速度+誘導×発動数が魔力消費を抑えられる限界だった。それ以上減らすと魔法が発動しないのだ。

 つまり今回は(100+300+100)×1の500が最低の魔力値ということだ。これ以上魔力消費を上げても無駄になるだけだった。魔法書にあったのは(100+100+1)×1なので201で発動可能なのだが、1000も消費していて実質800程の魔力は無駄になっているということなのだ。

 さて、この改良型ウォーターボールだが、とてもすごかった。元々速度100で野球のボールくらい、まぁ150キロくらいだったと思うが、それが目にも止まらない速度で射出された。速度を測ることができないので分からないが単純に三倍になっているのだろうか。高所から水に落ちるとコンクリート並の固さになるというが水からとんでいっても同じことで、ただの水の玉が木をへし折って飛んでいったのには驚いた。威力は全く上げていないのだが、速度を上げることで得られる物理法則がちゃんと影響するのだ。

 ちなみにウォーターボールで威力を上げると玉の大きさが大きくなった。今考えると母さんのウォーターボールの威力は100より少し高めになっていたのだろう。ちなみにこの魔法陣に記載されている魔法文字を魔法式と呼ぶことにした。

 魔法文字について解明はされていないが、研究者はいて改善できたものの一部は発表されたりすることがあるらしい。母さんのは自前で改造したようだったが。ちなみに研究といっても適当に変更して試してよくなってるかどうか、という子供騙しのようなもので俺の知る研究とは比べるのも失礼にあたるような内容だった。

「ルシウス様、夕食のお時間ですよ」

「ミーア! わかった、すぐいくよ」

 最近は一人でも簡単な魔法の練習をする許可をもらっている。その時はご飯の時間になるとミーアが迎えに来てくれる。まだこの魔法陣の改良は見せていない。見せる時が楽しみだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に射出された俺、『大地の力』で快適森暮らし始めます!

らもえ
ファンタジー
旧題:異世界に射出された俺、見知らぬ森の真中へ放り出される。周りには木しか生えていないけどお地蔵さんに貰ったレアスキルを使って何とか生き延びます。  俺こと杉浦耕平は、学校帰りのコンビニから家に帰る途中で自称神なるものに拉致される。いきなり攫って異世界へ行けとおっしゃる。しかも語り口が軽くどうにも怪しい。  向こうに行っても特に使命は無く、自由にしていいと言う。しかし、もらえたスキルは【異言語理解】と【簡易鑑定】のみ。いや、これだけでどうせいっちゅーに。そんな俺を見かねた地元の地蔵尊がレアスキルをくれると言うらしい。やっぱり持つべきものは地元の繋がりだよね!  それで早速異世界転移!と思いきや、異世界の高高度の上空に自称神の手違いで射出されちまう。紐なしバンジーもしくはパラシュート無しのスカイダイビングか?これ。  自称神様が何かしてくれたお陰で何とか着地に成功するも、辺りは一面木ばっかりの森のど真ん中。いやこれ遭難ですやん。  そこでお地蔵さんから貰ったスキルを思い出した。これが意外とチートスキルで何とか生活していくことに成功するのだった。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...