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第二章
29.視線
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皮膚に纏わりつく様な生暖かい風が吹く。
目を細め、緑の平原の上に現れたそれを見据える。黒の塊の周りに土煙が舞い、徐々に大気を震わす地響きが聞こえ出す。多分瘴魔だ。その瘴魔の前に小さな影が見えた。カイリが声を上げる。
「人が襲われてるの!?」
「かもねぇ~」
こうしてはいられないと俺は馬に飛び乗り、駆け出す。皆も後ろから着いてくる。
徐々に互いの距離が縮まる。ここから肉眼で確認出来たのは瘴魔の風貌。なかなか見ない大きさ。黒い皮膚にぶよぶよと膨れ上がった体に、人一人は簡単に踏み潰せそうな程に大きく発達した人の腕が数本生えている。その腕がもがく様な動きで地を這いながらこちらへ向かって来る。まるで蜘蛛の様。その巨大からは想像できない速さだ。マリーがきもぉ、っと言う声が背後から聞こえた。次に追われている人が男だと分かった。地を抉る地響きと共に数名の男達の喚く声が微かに聞こえだす。
剣を抜き、加護の風の力を剣身に宿す。
攻撃がまだ届かない距離。肉塊から突出した人に見える顔が苦痛に歪んでいる様に見えた。
躊躇なんて必要ない。
僅かに手が震えた。一度深く息を吐く。
俺は迎え撃とうと、馬の足を止める。後ろに着いていた隊員達も止まるのが分かった。だけど一つ馬の足音が止まらない。それが俺の横を通り過ぎ、抜かして行く。風に靡く金色の髪が見えた。すぐに誰か分かる。俺は名を叫ぶ。
「リナリア!」
勝手に一人で何やってんだ!
「ちょっ! 一人じゃ危ないよっ!」
「リナリアちゃん!」
カイリとカミュンが叫んだ。皆が慌ててリナリアを追いかける。
たくっ。
彼女なら心配は要らないと思うが、流石に傍観している訳にはいかないので、俺も後を追う。
逃げていた必死の形相の男達とすれ違う。耳に荒い息遣い、顔に砂と風が当たる。
俺たちの前を走るリナリアと瘴魔がもうすぐぶつかる。リナリアは止まらない。
「おいアルっ!」
「分かってる! たくっ困った新入りだなっ!!」
カミュンの促しに、前を行くアルが声を上げ片手を前に出し、振り払う仕草をする。地が震え、地鳴りがしだす。それが轟音に変わる。瘴魔の行手の地表が盛り上がり割れ、そこから樹木が生えしなやかな動きで瘴魔の体を拘束する。アルの加護の力だ。リナリアがこちらを見て、微かに頷くのが見えた。何を頷いているんだ。
木々に雁字搦めにされ動きを封じられた瘴魔は、人一人丸呑みできそうな大きな口を空へと向け咆哮する。
リナリアは瘴魔の目と鼻の先、馬の背に足をつきそのまま高く飛んだ。
剣を抜く。
切り込もうとする剣身が煌めく様に見えた。宙に浮かびながら瘴魔目掛け剣を振る。それは早すぎて何度振ったのかは分からない。ただ空気を斬り裂く音だけがした。
緩やかに瘴魔は動きを止める。リナリアは瘴魔の背を足場にして着地した後、素早く再び飛び地に降りる。それを合図に瘴魔の体に切り込みが入り、木々と共に崩れて、紫の血を空へと吹き出す。静かな決着。断末魔はなくただ、地に倒れ込む音と葉が騒めく音だけがこの場に響いた。
一瞬の出来事。
皆立ち止まる中俺は何勝手にやっているんだ、っと眉を寄せて見ていた。カイリが慌てて駆け出し、他の隊員もリナリアの元へ駆け寄る中で、グレミオだけ立ち止まっていた。通り過ぎざまに顔を見ると眉間に皺を寄せ驚いているも怪しんでいるとも言える、何とも神妙な顔つきをしていた。
やれやれ、気づかれたんじゃないか。
グレミオは目がいいからもしかしたら、今の一戦で何か勘付いたのかもしれない。とりあえず俺は聞かれるまで知らぬフリでいいだろう。
リナリア達のそばへ行く。皆馬から降り口々に声をかける。
「一人で行ったら危ないよっ!」
「す、すみません」
「ちゃんと隊長の言う事聞かないと。でもまぁまぁやるじゃん」
「びっくり~」
「リナリアちゃん、怪我してねぇか?」
リナリアはにっこりと微笑み頷いた後、ふっと骸になったモノを切なそうな瞳で見ながら小首を傾げた。そしておもむろに瞳を瞑り、手を顔に当て何かやってる。
「何やってんの」
「えっ?」
リナリアはまんまるの瞳でアルを見る。アルはこれ、っと言って今リナリアが顔に手を当ててやっていた仕草を真似する。リナリアの顔が一気にりんごの様に赤くなる。
「お顔のぉマッサージ~?」
「ちっち、違いますよ! その……あの顔が痒かっただけです」
あわあわとした後、リナリアは肩を縮こませ逃げるようにこの場を去って行く。その小さな背を見ながら、皆がポツポツと喋りだす。
「凄いけど」
「なんていぅかぁ~」
「ちょっと変わってる」
側で待っていた馬の体に顔を埋もれるくらいに押し当てているリナリアは置いておいて、俺は離れた所でこちらの様子を伺っている男達の元へ行く。
俺が近づくと男達は体を引かせるが、その顔からは安堵の色が僅かに見えた。そいつらは皆見窄らしい格。だが、なかなかに鍛えられた体をし誰もが帯剣している。
俺は何があったかと問う。男達は自分達は瘴魔から異物を回収し、売り捌くハンターだと言う。
「じゃあ僕たちの仕事をとったのあんたらか」
アルが少し苛立った口調で言う。どうやらその様だ。さっきの死んでいた瘴魔はこいつらの仕業で、異物を探していたからあんなにも亡骸の状態が悪かったわけだ。
「それで? さっきのあの瘴魔はなんなんだ?」
「そっそれが」
一人の男が顔を青ざめさせながら話し出した。そいつが言うには倒したはずの瘴魔がいきなり溶け、動き出し、それが集まりあの瘴魔を作ったとの事。
「俺らじゃ手に負えなかった」
男達は震え上がっている。死んだはずの亡骸が動く。その事実は俺も震え上がらせた。側に来たグレミオと視線を合わせる。グレミオは苦笑しながら肩をすくめ、男達に声をかける。
「大変でしたね。それより取られた物はありますか? すみませんがあれば渡して下さい。その決まりなので」
「高く売れるからってぇよくやるわねぇ。死体漁りとか無理ぃ~」
マリーが毒を吐く。男達は渋々膨らんだ汚いリュックから、よく分からない鉄のガラクタを見せてくれた。この中には価値のある物は見当たらなさそうだ。でも、決まりだからそれらを全て没収する。
不服そうな顔をする男達を見回す。見たところ目立った外傷も無さそうだし、こいつらの事はもう放っておいていいだろう。
俺は変わらず馬の体にぺったりくっついているリナリアの側に足早に向かう。
「リナリア」
「……なに」
馬に顔をつけたままで、くぐもった声で返事を返す。
「あまり勝手な行動するな。バレても知らないからな」
「……ごめんなさい」
「はぁ。あれくらいなら一人でも平気なのかもしれないが、何かあったらどうするんだ」
彼女がこの世界でどれだけ重要であるか。それを自覚している振る舞いには見えなかった。神は人選を間違えたのではないかと不安にもなる。
リナリアはおもむろに体を起こし、頬を赤く染めながら涙目でチラッと俺を見る。そして、馬の首元を撫でながら馬へ語りかけるようにボソボソと何かを言う。聞き取れない。なに?っと聞き返すと地面に顔を向ける。
「嫌な感じがしたから」
「嫌な感じ?」
「でも、手応えがなかったから気のせいだったかも」
「そうか」
やれやれ。そこは大したモノだと呆れた。リナリアは俺を見上げる。その瞳は揺らいでいた。
「それに」
「それに?」
「その」
「……」
「……貴方を守りたかった」
思わぬ返答にぽかんとしてしまう。ぎゅっと拳を握る。余計なお世話だ。守られなくたっていい。守られるのはもうごめんだ。
「俺の事はいい。それより自分を守る事に専念しろ。自分の立場を分かってるのか?」
ぐぅっと小さな唸り声を上げ、リナリアは顔を伏せる。反省しているのだろうか?他にも小言は言いたいが隊員達がこちらへ来るので止める事にする。でも、慌ただしくなった気持ちが収まらなかったので、敢えて言ってやった。
「さっきのあれ何」
「あっあれ?」
「アルに言われてただろ?」
リナリアは再び馬に顔を埋めだす。
「……癖かな」
「癖?」
「いつもお面してるから……別にずれないんだけど、多分何となく直すのが癖になって」
「そうか」
耳まで赤くしたリナリアは頭を抱えその場で蹲る。余程恥ずかしかったんだろう。背後からどうしますか?っとグレミオに尋ねられた。俺は振り向き、隊員達の所へ行く。
――っ!?
慌てて振り向く。そこには顔を手で覆って蹲ってるリナリアと、馬がいるだけだ。
「どうしました?」
「いや」
今一瞬誰かに見られている気がしたが……ミツカゲだろうか?
目を細め、緑の平原の上に現れたそれを見据える。黒の塊の周りに土煙が舞い、徐々に大気を震わす地響きが聞こえ出す。多分瘴魔だ。その瘴魔の前に小さな影が見えた。カイリが声を上げる。
「人が襲われてるの!?」
「かもねぇ~」
こうしてはいられないと俺は馬に飛び乗り、駆け出す。皆も後ろから着いてくる。
徐々に互いの距離が縮まる。ここから肉眼で確認出来たのは瘴魔の風貌。なかなか見ない大きさ。黒い皮膚にぶよぶよと膨れ上がった体に、人一人は簡単に踏み潰せそうな程に大きく発達した人の腕が数本生えている。その腕がもがく様な動きで地を這いながらこちらへ向かって来る。まるで蜘蛛の様。その巨大からは想像できない速さだ。マリーがきもぉ、っと言う声が背後から聞こえた。次に追われている人が男だと分かった。地を抉る地響きと共に数名の男達の喚く声が微かに聞こえだす。
剣を抜き、加護の風の力を剣身に宿す。
攻撃がまだ届かない距離。肉塊から突出した人に見える顔が苦痛に歪んでいる様に見えた。
躊躇なんて必要ない。
僅かに手が震えた。一度深く息を吐く。
俺は迎え撃とうと、馬の足を止める。後ろに着いていた隊員達も止まるのが分かった。だけど一つ馬の足音が止まらない。それが俺の横を通り過ぎ、抜かして行く。風に靡く金色の髪が見えた。すぐに誰か分かる。俺は名を叫ぶ。
「リナリア!」
勝手に一人で何やってんだ!
「ちょっ! 一人じゃ危ないよっ!」
「リナリアちゃん!」
カイリとカミュンが叫んだ。皆が慌ててリナリアを追いかける。
たくっ。
彼女なら心配は要らないと思うが、流石に傍観している訳にはいかないので、俺も後を追う。
逃げていた必死の形相の男達とすれ違う。耳に荒い息遣い、顔に砂と風が当たる。
俺たちの前を走るリナリアと瘴魔がもうすぐぶつかる。リナリアは止まらない。
「おいアルっ!」
「分かってる! たくっ困った新入りだなっ!!」
カミュンの促しに、前を行くアルが声を上げ片手を前に出し、振り払う仕草をする。地が震え、地鳴りがしだす。それが轟音に変わる。瘴魔の行手の地表が盛り上がり割れ、そこから樹木が生えしなやかな動きで瘴魔の体を拘束する。アルの加護の力だ。リナリアがこちらを見て、微かに頷くのが見えた。何を頷いているんだ。
木々に雁字搦めにされ動きを封じられた瘴魔は、人一人丸呑みできそうな大きな口を空へと向け咆哮する。
リナリアは瘴魔の目と鼻の先、馬の背に足をつきそのまま高く飛んだ。
剣を抜く。
切り込もうとする剣身が煌めく様に見えた。宙に浮かびながら瘴魔目掛け剣を振る。それは早すぎて何度振ったのかは分からない。ただ空気を斬り裂く音だけがした。
緩やかに瘴魔は動きを止める。リナリアは瘴魔の背を足場にして着地した後、素早く再び飛び地に降りる。それを合図に瘴魔の体に切り込みが入り、木々と共に崩れて、紫の血を空へと吹き出す。静かな決着。断末魔はなくただ、地に倒れ込む音と葉が騒めく音だけがこの場に響いた。
一瞬の出来事。
皆立ち止まる中俺は何勝手にやっているんだ、っと眉を寄せて見ていた。カイリが慌てて駆け出し、他の隊員もリナリアの元へ駆け寄る中で、グレミオだけ立ち止まっていた。通り過ぎざまに顔を見ると眉間に皺を寄せ驚いているも怪しんでいるとも言える、何とも神妙な顔つきをしていた。
やれやれ、気づかれたんじゃないか。
グレミオは目がいいからもしかしたら、今の一戦で何か勘付いたのかもしれない。とりあえず俺は聞かれるまで知らぬフリでいいだろう。
リナリア達のそばへ行く。皆馬から降り口々に声をかける。
「一人で行ったら危ないよっ!」
「す、すみません」
「ちゃんと隊長の言う事聞かないと。でもまぁまぁやるじゃん」
「びっくり~」
「リナリアちゃん、怪我してねぇか?」
リナリアはにっこりと微笑み頷いた後、ふっと骸になったモノを切なそうな瞳で見ながら小首を傾げた。そしておもむろに瞳を瞑り、手を顔に当て何かやってる。
「何やってんの」
「えっ?」
リナリアはまんまるの瞳でアルを見る。アルはこれ、っと言って今リナリアが顔に手を当ててやっていた仕草を真似する。リナリアの顔が一気にりんごの様に赤くなる。
「お顔のぉマッサージ~?」
「ちっち、違いますよ! その……あの顔が痒かっただけです」
あわあわとした後、リナリアは肩を縮こませ逃げるようにこの場を去って行く。その小さな背を見ながら、皆がポツポツと喋りだす。
「凄いけど」
「なんていぅかぁ~」
「ちょっと変わってる」
側で待っていた馬の体に顔を埋もれるくらいに押し当てているリナリアは置いておいて、俺は離れた所でこちらの様子を伺っている男達の元へ行く。
俺が近づくと男達は体を引かせるが、その顔からは安堵の色が僅かに見えた。そいつらは皆見窄らしい格。だが、なかなかに鍛えられた体をし誰もが帯剣している。
俺は何があったかと問う。男達は自分達は瘴魔から異物を回収し、売り捌くハンターだと言う。
「じゃあ僕たちの仕事をとったのあんたらか」
アルが少し苛立った口調で言う。どうやらその様だ。さっきの死んでいた瘴魔はこいつらの仕業で、異物を探していたからあんなにも亡骸の状態が悪かったわけだ。
「それで? さっきのあの瘴魔はなんなんだ?」
「そっそれが」
一人の男が顔を青ざめさせながら話し出した。そいつが言うには倒したはずの瘴魔がいきなり溶け、動き出し、それが集まりあの瘴魔を作ったとの事。
「俺らじゃ手に負えなかった」
男達は震え上がっている。死んだはずの亡骸が動く。その事実は俺も震え上がらせた。側に来たグレミオと視線を合わせる。グレミオは苦笑しながら肩をすくめ、男達に声をかける。
「大変でしたね。それより取られた物はありますか? すみませんがあれば渡して下さい。その決まりなので」
「高く売れるからってぇよくやるわねぇ。死体漁りとか無理ぃ~」
マリーが毒を吐く。男達は渋々膨らんだ汚いリュックから、よく分からない鉄のガラクタを見せてくれた。この中には価値のある物は見当たらなさそうだ。でも、決まりだからそれらを全て没収する。
不服そうな顔をする男達を見回す。見たところ目立った外傷も無さそうだし、こいつらの事はもう放っておいていいだろう。
俺は変わらず馬の体にぺったりくっついているリナリアの側に足早に向かう。
「リナリア」
「……なに」
馬に顔をつけたままで、くぐもった声で返事を返す。
「あまり勝手な行動するな。バレても知らないからな」
「……ごめんなさい」
「はぁ。あれくらいなら一人でも平気なのかもしれないが、何かあったらどうするんだ」
彼女がこの世界でどれだけ重要であるか。それを自覚している振る舞いには見えなかった。神は人選を間違えたのではないかと不安にもなる。
リナリアはおもむろに体を起こし、頬を赤く染めながら涙目でチラッと俺を見る。そして、馬の首元を撫でながら馬へ語りかけるようにボソボソと何かを言う。聞き取れない。なに?っと聞き返すと地面に顔を向ける。
「嫌な感じがしたから」
「嫌な感じ?」
「でも、手応えがなかったから気のせいだったかも」
「そうか」
やれやれ。そこは大したモノだと呆れた。リナリアは俺を見上げる。その瞳は揺らいでいた。
「それに」
「それに?」
「その」
「……」
「……貴方を守りたかった」
思わぬ返答にぽかんとしてしまう。ぎゅっと拳を握る。余計なお世話だ。守られなくたっていい。守られるのはもうごめんだ。
「俺の事はいい。それより自分を守る事に専念しろ。自分の立場を分かってるのか?」
ぐぅっと小さな唸り声を上げ、リナリアは顔を伏せる。反省しているのだろうか?他にも小言は言いたいが隊員達がこちらへ来るので止める事にする。でも、慌ただしくなった気持ちが収まらなかったので、敢えて言ってやった。
「さっきのあれ何」
「あっあれ?」
「アルに言われてただろ?」
リナリアは再び馬に顔を埋めだす。
「……癖かな」
「癖?」
「いつもお面してるから……別にずれないんだけど、多分何となく直すのが癖になって」
「そうか」
耳まで赤くしたリナリアは頭を抱えその場で蹲る。余程恥ずかしかったんだろう。背後からどうしますか?っとグレミオに尋ねられた。俺は振り向き、隊員達の所へ行く。
――っ!?
慌てて振り向く。そこには顔を手で覆って蹲ってるリナリアと、馬がいるだけだ。
「どうしました?」
「いや」
今一瞬誰かに見られている気がしたが……ミツカゲだろうか?
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