6 / 110
第一章
6.また来よう②
しおりを挟む
「そういえば、最近キルに会った?」
カイトは飯を頬張りながら尋ねてくる。俺は昨日の夜の事を思い出す。
「あぁ、昨日夜にたまたま城の廊下で会ったよ」
「そうなんだ! 僕なかなか会えなくてさ……なんかタイミング悪いのかな」
「あいつ夜散歩してたから、カイトもしたら会えるんじゃないか」
「散歩? ふふっ、なにそれ。キルそんな事してるの?」
「それで、いい加減話してくれないか?」
前置きはもう十分だろうと、頬杖ついて詰め寄る。でも、なんとなく言いたい事は分かってる。カイトが勿体ぶって話す話はいつも決まってる。
「ははっ、そうだねぇ……実はね、僕好きな人ができて」
ほらやっぱり。
「へぇー」
「……反応薄くない?」
「いや、なんとなく分かってたから」
「それでも、もうちょっと」
「……」
俺にそんな反応を求めるのは無理がある。カイトは姿勢を正し口元に手を当てコホンっと一回咳払いをする。手はそのままにして潤んだ瞳を下に向ける。
「でもね、今回は違うんだよ。その人と……実は恋人になれたんだ」
「へぇー」
さっきの声色よりも若干高めにして返事を返す。
「えぇ~! 驚かないの?」
「いや、よかったな。おめでとう」
「ありがとっ! いやぁ照れるなぁ」
こそばゆそうに鼻先を掻くカイトに疑問が浮かぶ。カイトはいつも話してくれるけど、なんでだろ。なんのアドバイスも共感だってしてやれる事は出来ない。一番話す相手には向かないと思う。
「前から思ってたんだけど、なんでわざわざ俺に話してくれるんだ?」
「えっ? どういう事?」
「いや、俺に話してもつまんないだろ」
「ははっ! つまんないって」
カイトは腹を抱えて笑っている。そんなに可笑しいだろうかと眺めていると、カイトは目を細めて微笑む。
「だって、そう約束したから」
「約束?」
「えっ!? 覚えて、ない? ほら」
カイトは一つ、昔話をし始める。それを聞いて、俺の記憶のページが開かれ出す。
△
「ついにここまできたね!」
「おお!」
椅子をガタガタゆらし、時折机を叩きながら今日もキルとカイトは最近ハマっている恋愛小説にのめり込み、あーでもないこーでもないと盛り上がっている。
「なんかさぁ、この本の主人公ってヴァンにちょっと似てるんだよねぇ、この不器用なところとか!」
「俺も思ってた! ヴァンも好きな人とかできても奥手そうだよなー」
「くだらない。てか、うるさいから静かに読めよ」
俺はその興味のない内容に呆れ、手に持っていた分厚い本をそのまま読み進める。
「ほんっとつまんねぇなぁー。俺らもう10歳よ? 恋愛とかに興味持つ歳でしょうよ」
「別に。生きてく上で困るなら考える」
はぁと力のないため息が俺に飛ぶ。
「俺はこいつの将来が心配だよ……」
「でも僕達も大きくなったら何してるかな!」
カイトが読んでいた小さな本を胸でギュッと抱きしめ、瞳を輝かせて言う。
「そうだよなー! 俺たちどんな大人になってるかな?」
「やっぱり結婚して家庭をもったりしてるかな」
結婚!?家庭!? 歳に似合わない言葉に俺は思わずカイトを見る。
「おま、なんかいきなりぶっ飛んだな」
キルも微妙な顔で笑っている。
「やっぱり、好きな人とはずっといたいものじゃないの?」
「まっまぁ、そうだな」
「僕、好きな人出来たら二人に一番に教えるからね!」
カイトの勢いは止まらない。けど、なんだかその言葉は俺たちのことを特別と言ってるようにも聞こえて、少しこそばゆい気持ちになる。
「おう! じゃあ俺もな!」
キルもそれが嬉しかったのか歯に噛む様に笑っている。そして、同時に二人がこちらを見る
えっ?まさか俺も……?
こんな約束してたまるかと立ちあがろうとした時、キルが俺の前に立ちはだかる。見上げると小指を俺に向け差し出す。
「じゃあさ、俺らで約束しようぜ!」
カイトは飯を頬張りながら尋ねてくる。俺は昨日の夜の事を思い出す。
「あぁ、昨日夜にたまたま城の廊下で会ったよ」
「そうなんだ! 僕なかなか会えなくてさ……なんかタイミング悪いのかな」
「あいつ夜散歩してたから、カイトもしたら会えるんじゃないか」
「散歩? ふふっ、なにそれ。キルそんな事してるの?」
「それで、いい加減話してくれないか?」
前置きはもう十分だろうと、頬杖ついて詰め寄る。でも、なんとなく言いたい事は分かってる。カイトが勿体ぶって話す話はいつも決まってる。
「ははっ、そうだねぇ……実はね、僕好きな人ができて」
ほらやっぱり。
「へぇー」
「……反応薄くない?」
「いや、なんとなく分かってたから」
「それでも、もうちょっと」
「……」
俺にそんな反応を求めるのは無理がある。カイトは姿勢を正し口元に手を当てコホンっと一回咳払いをする。手はそのままにして潤んだ瞳を下に向ける。
「でもね、今回は違うんだよ。その人と……実は恋人になれたんだ」
「へぇー」
さっきの声色よりも若干高めにして返事を返す。
「えぇ~! 驚かないの?」
「いや、よかったな。おめでとう」
「ありがとっ! いやぁ照れるなぁ」
こそばゆそうに鼻先を掻くカイトに疑問が浮かぶ。カイトはいつも話してくれるけど、なんでだろ。なんのアドバイスも共感だってしてやれる事は出来ない。一番話す相手には向かないと思う。
「前から思ってたんだけど、なんでわざわざ俺に話してくれるんだ?」
「えっ? どういう事?」
「いや、俺に話してもつまんないだろ」
「ははっ! つまんないって」
カイトは腹を抱えて笑っている。そんなに可笑しいだろうかと眺めていると、カイトは目を細めて微笑む。
「だって、そう約束したから」
「約束?」
「えっ!? 覚えて、ない? ほら」
カイトは一つ、昔話をし始める。それを聞いて、俺の記憶のページが開かれ出す。
△
「ついにここまできたね!」
「おお!」
椅子をガタガタゆらし、時折机を叩きながら今日もキルとカイトは最近ハマっている恋愛小説にのめり込み、あーでもないこーでもないと盛り上がっている。
「なんかさぁ、この本の主人公ってヴァンにちょっと似てるんだよねぇ、この不器用なところとか!」
「俺も思ってた! ヴァンも好きな人とかできても奥手そうだよなー」
「くだらない。てか、うるさいから静かに読めよ」
俺はその興味のない内容に呆れ、手に持っていた分厚い本をそのまま読み進める。
「ほんっとつまんねぇなぁー。俺らもう10歳よ? 恋愛とかに興味持つ歳でしょうよ」
「別に。生きてく上で困るなら考える」
はぁと力のないため息が俺に飛ぶ。
「俺はこいつの将来が心配だよ……」
「でも僕達も大きくなったら何してるかな!」
カイトが読んでいた小さな本を胸でギュッと抱きしめ、瞳を輝かせて言う。
「そうだよなー! 俺たちどんな大人になってるかな?」
「やっぱり結婚して家庭をもったりしてるかな」
結婚!?家庭!? 歳に似合わない言葉に俺は思わずカイトを見る。
「おま、なんかいきなりぶっ飛んだな」
キルも微妙な顔で笑っている。
「やっぱり、好きな人とはずっといたいものじゃないの?」
「まっまぁ、そうだな」
「僕、好きな人出来たら二人に一番に教えるからね!」
カイトの勢いは止まらない。けど、なんだかその言葉は俺たちのことを特別と言ってるようにも聞こえて、少しこそばゆい気持ちになる。
「おう! じゃあ俺もな!」
キルもそれが嬉しかったのか歯に噛む様に笑っている。そして、同時に二人がこちらを見る
えっ?まさか俺も……?
こんな約束してたまるかと立ちあがろうとした時、キルが俺の前に立ちはだかる。見上げると小指を俺に向け差し出す。
「じゃあさ、俺らで約束しようぜ!」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
錬金術師カレンはもう妥協しません
山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」
前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。
病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。
自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。
それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。
依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。
王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。
前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。
ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。
仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。
錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。
※小説家になろうにも投稿中。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。
※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。
※2020-01-16より執筆開始。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる