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失踪
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とある夏の日。
突然友人である古村虹の連絡先が消えた。
SNSも電話も何一つ突然通じなくなり周りの人間に聞いても同じようでそれ以来全く姿を見なくなっていた。
古村虹はノリも良く人当たりもいい。
それ故に友人が多く、よく相談事に乗ったりしていたらしく突然の虹の失踪に周りは驚きが隠せなかった。
焦った私は遠方にある虹の実家を訪ねた。
出てきたのは少し虹に面影がある年配の女性で、少し憔悴しているようだった。
「あ、あの……私、古村虹の友人なんですが……」
「虹が見つかったんですか!?」
年配の女性、きっと虹の母だろう。
虹の母が私の腕を縋り付くように掴んできて思わずバランスを崩しそうになる。
「違くて!虹が突然居なくなったのでこちらに居ないかと……」
虹の母の勢いに飲まれないように少し大きな声で事情を説明するとふっと何かが抜けたように力強かった力が緩みするりと離れていった。
「そう……ですか……虹はここにはいないわよ……」
俯き抑揚のない声でそうい言うと虹の母はぺたりと座り込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
肩に触れていいのか少し悩んだがこんなにも目に見えて憔悴し落ち込んでいる人を放って置けずゆっくり立ち上がらせると虹によくには目尻が優しく細められる。
「ありがとう、ごめんなさいね取り乱してしまって」
虹の母曰く、虹が失踪する前日に電話をしたきり虹と連絡が付かず、会社に電話しても出社していないと言われたそうだ。
捜索願いを出しているが虹は見つからず、今も虹の家族は懸命に捜索している様だった。
「虹は、聞き分けがいい子でわがままも言わなくて……いつも笑顔で親の手を煩わせないような子で……」
虹の母に勧められて家に上がった私はお茶と共に虹の子供頃の話を聞いた。
虹は子供の頃から変わらず良い奴だったらしい。
他人の悪口は言わない、何をされても怒らず許してしまう。
自分よりも他人を優先し自己を主張せず、己の事は己でやり可もなく不可もなく、模範的な少し不気味なくらい良い奴だった。
一通り話を聞いた後私は虹の部屋を見せてもらった。
何か虹を見付けられる手掛かりがあればと思ったからだ。
虹の部屋はびっくりするほど整っていて、気持ちが悪いほど何も無かった。
古いがきちんとした勉強机、最近使われた形跡が無いベッド、学生の頃の教科書や虹が好きだと言っていた小説。
クローゼットを開けてみると虹が学生の頃に着ていたであろう制服がきちんとかけられていた。
「ん?」
クローゼットの奥、並べられた箱の横に入り込んでいた1冊のノートを見つけた。
気にはなるが虹に悪い……と思いつつもここにこそ何かの手掛かりが、と思い罪悪感を胸に抱きつつもノートを開くとヒラリと1枚の写真が落ちた。
「海?」
その写真は綺麗海だった。
写真だけではどこかわからなかったが少し擦り切れていて握ってしまったのかシワも寄っていた。
ノートを見てみると何の変哲もない日記だった。
虹らしい内容でてっきり恨み辛みが綴ってあるかと思えばそうではなく、平凡な日々を綴ったものだった。
とある1ページを除いて。
「25歳になれば解放される?……何に?」
それだけ書かれたページは他のページと違い殴り書きのような力強い物だった。
私はそのノートを元あった場所に戻し帰りに虹の母に例の海の写真を見せたが虹の母親もその海について何も知らなかったらしい。
突然友人である古村虹の連絡先が消えた。
SNSも電話も何一つ突然通じなくなり周りの人間に聞いても同じようでそれ以来全く姿を見なくなっていた。
古村虹はノリも良く人当たりもいい。
それ故に友人が多く、よく相談事に乗ったりしていたらしく突然の虹の失踪に周りは驚きが隠せなかった。
焦った私は遠方にある虹の実家を訪ねた。
出てきたのは少し虹に面影がある年配の女性で、少し憔悴しているようだった。
「あ、あの……私、古村虹の友人なんですが……」
「虹が見つかったんですか!?」
年配の女性、きっと虹の母だろう。
虹の母が私の腕を縋り付くように掴んできて思わずバランスを崩しそうになる。
「違くて!虹が突然居なくなったのでこちらに居ないかと……」
虹の母の勢いに飲まれないように少し大きな声で事情を説明するとふっと何かが抜けたように力強かった力が緩みするりと離れていった。
「そう……ですか……虹はここにはいないわよ……」
俯き抑揚のない声でそうい言うと虹の母はぺたりと座り込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
肩に触れていいのか少し悩んだがこんなにも目に見えて憔悴し落ち込んでいる人を放って置けずゆっくり立ち上がらせると虹によくには目尻が優しく細められる。
「ありがとう、ごめんなさいね取り乱してしまって」
虹の母曰く、虹が失踪する前日に電話をしたきり虹と連絡が付かず、会社に電話しても出社していないと言われたそうだ。
捜索願いを出しているが虹は見つからず、今も虹の家族は懸命に捜索している様だった。
「虹は、聞き分けがいい子でわがままも言わなくて……いつも笑顔で親の手を煩わせないような子で……」
虹の母に勧められて家に上がった私はお茶と共に虹の子供頃の話を聞いた。
虹は子供の頃から変わらず良い奴だったらしい。
他人の悪口は言わない、何をされても怒らず許してしまう。
自分よりも他人を優先し自己を主張せず、己の事は己でやり可もなく不可もなく、模範的な少し不気味なくらい良い奴だった。
一通り話を聞いた後私は虹の部屋を見せてもらった。
何か虹を見付けられる手掛かりがあればと思ったからだ。
虹の部屋はびっくりするほど整っていて、気持ちが悪いほど何も無かった。
古いがきちんとした勉強机、最近使われた形跡が無いベッド、学生の頃の教科書や虹が好きだと言っていた小説。
クローゼットを開けてみると虹が学生の頃に着ていたであろう制服がきちんとかけられていた。
「ん?」
クローゼットの奥、並べられた箱の横に入り込んでいた1冊のノートを見つけた。
気にはなるが虹に悪い……と思いつつもここにこそ何かの手掛かりが、と思い罪悪感を胸に抱きつつもノートを開くとヒラリと1枚の写真が落ちた。
「海?」
その写真は綺麗海だった。
写真だけではどこかわからなかったが少し擦り切れていて握ってしまったのかシワも寄っていた。
ノートを見てみると何の変哲もない日記だった。
虹らしい内容でてっきり恨み辛みが綴ってあるかと思えばそうではなく、平凡な日々を綴ったものだった。
とある1ページを除いて。
「25歳になれば解放される?……何に?」
それだけ書かれたページは他のページと違い殴り書きのような力強い物だった。
私はそのノートを元あった場所に戻し帰りに虹の母に例の海の写真を見せたが虹の母親もその海について何も知らなかったらしい。
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