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果肉入りストロベリー(2)

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◇◆◇

「……ここ、そのまま寝転んでもいいの?」
「いいよ。寝心地はいつもより劣るかもしれないけど……」
「ううん、それは全然……。それよりも、汚してしまったら……」

 大きなベッドの上には真っ白なバスタオルが敷いてある。何百回と洗濯を繰り返してゴワゴワ、パリパリになっている俺の使っているバスタオルとは違う、ふわふわしていて清潔な、ユウイチさんの家のバスタオルだ。

 溶けてしまったアイスでベッドを汚さないように、という意味で敷いているんだろうけど……。こんな高そうなタオルを汚してしまうのだって、俺はすごく申し訳ないと思ってしまう。

 こんなことなら、俺の家からバスタオルを持ってくればよかったのかもしれない。ユウイチさんには「十万でも二十万でも払うから売って」と怖いことを言われるかもしれないけど、ユウイチさんの持ち物を汚してしまうよりはマシだ。

 どうして俺はそこまで気が回らないんだろう、と後悔していると、ユウイチさんは俺を見てフッと笑った。


「おいで。今日も普通に、アイスを食べよう」
「えっ……」
「俺はマナトがアイスを食べている姿を見るだけで充分興奮……、違う、充分癒されるよ」

 座って、と促されるままに、ユウイチさんと並んでベッドへ腰掛ける。……マシュマロ入りチョコレート味の時もそうだった。

 初めてアイスを使うんだ、と意識をしすぎてギクシャクしている俺を見かねたのか、「マナトの一番好きなフレーバーを取っておいで」とユウイチさんは俺に好きな味を選ばせてから、エッチなことはせずに普通にアイスを食べさせた。

 ユウイチさんは小さな子供にするように、俺を自分の膝の上に乗せてアイスを食べさせるから恥ずかしかった、けど、服は脱がなかったし、体にも触られていない。
「これでいいの!?」と目を丸くする俺の唇に軽くキスをして「充分だよ、んっふ」と笑うユウイチさんに、俺の方から「ユウイチさんの、舐めてもいいですか」とねだってしまったくらいだ。……気持ちいい? と聞いた時に、ユウイチさんが神妙な顔で「冷えてる、口の中が」と言ったのに二人でケラケラ笑ってしまって、ムードはあまりなかったけど、でもちゃんと楽しめた。

 二つ目のチョコミント味の時はさすがにもう少し頑張ろうと思って、口移しでユウイチさんに食べさせるまでは出来た。
 ほんの少しの量では口の中に入れた途端に溶けてしまうから、スプーンで山盛り掬ったアイスを口に含んで、なんとかユウイチさんにも食べてもらった。

 カップを握っていた手のひらも、口の中も冷えてしまっているはずなのに、絡ませあう舌がすごく熱くて、甘くて、なんだか俺までどろどろに溶けてしまいそうだった。



「ほら、おいしいよ。食べてごらん」

 ユウイチさんに勧められるまま、口を開ける。しょっちゅう甘くておいしいものを「あーん」して食べさせてもらっているから、いつの間にかそれが当たり前になってしまっているのかもしれない。口元をジロジロ見られるのは落ち着かない気持ちになるけど、最近はそれにも慣れてしまった。

 見た目が一番きれいだと思って選んだフレーバーは、イチゴの果肉がたくさん入っていて、すごくおいしい。ごく、と飲み込むまでを確認した後、ユウイチさんは満足そうににやーっと笑った。

「本当にマナトのアイスの食べ方は一流だな……。ああ、可愛い……」

 そんなふうに褒められても、アイスの食べ方のいい悪いについて、俺にはさっぱり理解出来なくて愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。
 ユウイチさんは小さなピンク色のスプーンにたっぷりアイスを掬った後、舌を伸ばしてぺろぺろとアイスを舐めるよう俺に要求してきた。

「ええ……」
「ほんの少しぺろっと舐めるだけでいいから。まずはやってみよう。やってみて、マナトがどうしても食べづらいと言うなら別の方法を考えるから」
「……はい」

 変な意味で言っているんじゃない、アイスを食べさせたいだけだと、ユウイチさんが必死に俺を説得すればするほど「変な意味なんだろうなー……」という気持ちになる。
 俺がそんなことをしたって、マヌケに見えるだけじゃないかなあ? という気もするけど、おそるおそるスプーンの上のアイスに舌を伸ばした。

「おいしい? 甘い?」
「……」
「ああっ……!」

 ユウイチさんは何度も俺にアイスの味がどうかを尋ねてくる。返事もしないで舐め続けるのも失礼かと思って、話しかけられればユウイチさんの顔を見てから無言でこくこくと一応頷き返しておいた。
 その度にユウイチさんは「可愛い……」とため息をついたり、悶えたり、ぐふぐふ笑ったりする。

 鼻が高くて頬がスッキリしている、柔らかさをほとんど感じさせないユウイチさんのシャープな顔立ちを見つめながら、この人がこんなふうに笑うなんて、きっと他の人は信じないだろうとなんとなく思った。

 俺だってただの隣人だった頃はユウイチさんのことは全然知らなかった。知り合う前のユウイチさんの過去全部を聞いたわけじゃないけど……いっぱい我慢をしてきたのかな、ってことだけはわかっているから、今ユウイチさんは、自分の気持ちを少しはオープンに出来ているのかなあ? って、そんなことをどうしても考えてしまう。


「ユウイチさん嬉しいの?」
「すごく嬉しいよ」
「よかった……」

 恥ずかしいけど、ユウイチさんが喜んでくれるのはやっぱり嬉しい。俺も嬉しいです、という気持ちを込めてユウイチさんにくっついてから、差し出されるアイスを口に含んだ。



 ユウイチさんから自分も食べたい、とねだられる頃にはアイスは半分も残っていなくて少し溶けかかっていた。慌ててイチゴアイスを口に含んでから、そのままユウイチさんの唇に自分の唇を重ねる。

「んぅ……」

 ひんやりとしていた舌が、ユウイチさんの熱い舌で絡めとられる。

 もっと、いっぱい、溶けてしまう前にユウイチさんに食べさせなきゃ。

 そう思っているのに、ユウイチさんは俺の腰をしっかりと抱いていて、なかなか離してくれない。くちゅくちゅと音がするような深いキスでだんだん頭がぼんやりとしてくる。

「んっ、んんっ……」

 服の上からユウイチさんの手でゆっくりと胸を揉まれる。
 今日はこの後、服を脱いで、それで自分から「食べて」とユウイチさんにおねだりをしないといけない。一気に頬が熱くなって、我慢しているのに声が漏れてしまう。


「いい?」
「……はい」

 耳の側に唇を寄せてそう呟くユウイチさんに、小さく頷いてオーケーの合図を送った。
 脱がなくていいから、服の裾を捲り上げて乳首を見せて欲しい、という要望に「うん」と返事をするだけで精一杯だった。

 甘いイチゴの香りがして、ユウイチさんに抱き寄せられて温かい。それなのに、生地の薄いTシャツ越しに乳首を摘ままれると、胸の先がくすぐったくて、なんだか焦れったくて、切ない。



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