幼馴染みが屈折している

サトー

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【その後】幼馴染みにかえるまで

★ただいま(5)

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 ヒカル、と何度も名前を呼んで、逞しい背中に腕を回してしがみついた。

「あっ……、もっと、ゆっくり……」
「うん、うん……」

 長い出張の後で、何度も回数がこなせそうに無いことは自分でもよくわかっていた。せめて、もう少しだけこうしていたい。ヒカルの体の重みと温もりを感じていると「おいで」と繋がったままの状態で抱き起こされる。
 ルイの大好きな対面座位、というさっきのヒカルの言葉を思い出して、耳が熱くなった。「俺がいつそんな事を言った? いい加減な事を言うな」と腹を立てていないと、きっとまともにヒカルの顔が見られなかった。

「あっ……」

 体を起こした事で、挿入された性器が抜けてしまいそうになったのに驚いて、ぎゅっと後ろが締まる。
 ヒカルはほんの一瞬顔をしかめた後、下を向いて何かにじっと耐えているようだった。お、と俺が顔を覗きこもうとすると「ビックリしちゃったの……? 可愛いね」と、すぐにいつものヒカルに戻ってしまっていた。

「……なあ、今の良かった?」
「うん……?」
「あっ、もしかして、出そうだったとか?」
「……まさか」

 余裕の微笑みを浮かべてはいるものの、煽られたと感じたのか、ヒカルは黙ったまま俺の腰をしっかりと捕まえた。より深い所まで入ってきてしまうような気がして、思わず体が強張る。ひ、と俺が小さく声を漏らすとヒカルがクスリと笑った。

「平気……?」
「ん、んぅ……」
「おっぱいも気持ちよくしてあげないとね……」
「いいよ……! さっきだって、散々、あっ、ああっ……」

 腫れたり赤くなったりしていないのが不思議なくらい、さっきも口であらゆる事をされたのに、「しばらく、こうしていようよ」と甘えるような口調で言った後、ヒカルは音を立てて、俺の胸を吸い始めた。ちゅっ、と何度も胸に口づけられる。
 宥めるように「力を抜いて」と言われても、口に含まれた乳首を舌で舐め回されると、ビクンと体は反応してしまう。

「んっ、ひかる……っ、胸、いやだっ……」

 言葉とは正反対で、ヒカルにこうされることを望んでいるかのように、自分の胸の先が硬く尖っているのがわかった。片方をちゅぱちゅぱと音を立てて吸われながら、もう片方を指の先で乱暴に摘ままれる。気持ちいいのと合わさって「痛い」と感じる程の強い刺激にも感じてしまう。
 乳首をしつこく攻め立てられて、快感から逃れようとモゾモゾ動くと、下からグリグリと突き上げられる。そんなことをされたら、自分のナカがヒカルのモノでいっぱいにされていることを嫌でも意識してしまう。

「あっ、あああっ……」

 もっと下から思いきり突いて、擦ってもらえないとイケない。だけど、もっと抱き合っていたい。触ってもらえないぺニスからだらだらと先走りを溢しながら、荒い呼吸を繰り返す俺をヒカルはうっとりとした顔で見つめてきた。
 
「ねえ、ルイ。ここ、俺だけだよね……?」
「はあ……?」

 ヒカルの言う「ここ」がどこを指しているのかは聞かなくてもわかる。どうしてこんな時にヒカル以外との経験が無いことを確認されないといけないんだ、と聞こえないフリをしていると、「ねえ」と返事を促すようにヒカルは俺を揺さぶり始めた。

「あ、あっ、やめろよっ……」
「ルイのここを知ってるのは俺だけだよね?」
「んうっ……! やだっ、いやだっ……」

 ヒカルの口調は「好きだよ」と甘えてくる時と何一つ変わらなかった。
 他に誰がいるっていうんだよ、と言い返したいのに、奥まで深々と挿入された状態でナカを掻き回すようにされると、何も考えられなくなる。俺に唯一出来るのは、ヒカルの体にもたれかかった状態で、「やめろ」と首を横に振る事だけだった。

「可愛い……」
「んぅっ……!」
「すごい、ぎゅーって咥えこんでる……」
「いやだっ……! やめろよおっ……!」

 口ではどれだけ嫌だと言っても、体はどんどんヒカルに抱かれることを受け入れていく。腰、背中、胸……俺の体に、セックスをすることも、男に抱かれることも、何もかもを教えたのはヒカルだった。たった一人だけしか知らない体を差し出すようにして、ヒカルに抱きつく。
 下から突かれながら、両方の乳首をぎゅうぎゅう摘ままれて、喘ぎながら俺は悶えた。痛くて苦しいからヒカルの手から逃れようとしているのか、それとも、より強い快感を求めてそうしているのか、自分でもわからなかった。

「好き、ルイが大好きだよ」
「あっ……、ひかる……っ、ううっ……」
「ルイは? 好き……?」

 答えを返す前に、唇を塞がれて体を揺さぶられる。ヒカルの手で勃起したぺニスを扱かれると、ゾクゾクとした快感が腰から背中へ向けて一気にせり上がってくる。舌を捩じ込まれて、思うように声が出せない。

「んんっ……! ん、んんっ……!」

 イく、気持ちいい、だけしか考えられない。それなのに、ふっと唇が解放されて、ぺニスを上下に扱いていたヒカルの手の動きもゆっくりになる。終わりの無い突き上げで前立腺を刺激されながら、「あともう少しだったのに」というもどかしい気持ちで、悲しくもないのに目に涙が滲んだ。

「ひかる……っ」
「好きって言ってよ、ルイ……」
「う、あっ……もっと、ヒカル……」
「ほら、言って……」
「あっ、あっ、あ……すき、すきだ……」

 ヒカルのようにベタベタすることは無いだけで、俺だってちゃんとヒカルへの気持ちは持ち合わせていて、それを大切に思っている。それなのに、いつだってヒカルはそれを形にして欲しがった。
 セックスで快感を与えられ続けているうちに、俺の何もかもはヒカルに暴かれてしまう。普段は「言わなくてもわかるだろ」と突っぱねているのに、結局は「好き」と言葉にしてしまった。

「あっ、いく、いく、ああっ……」

 自分から唇を重ねて、キスをねだった。手のひらも、膝の裏も、触れ合っている胸も腹も、汗ばんでいて不快なのに、強く抱き締めあう。射精する瞬間に、俺が体を仰け反らせて強い快感から逃れようとすると、ヒカルは腕にますます力を込めた。押さえ付けられるようにして、全身を密着させた状態で、ヒカルの腕の中で達してしまった。
 言葉にしなくたって、ヒカルとのセックスで感じていることも、俺がヒカルだけを好きでいることも、きっと伝わったに違いなかった。



「ごめんね、ずいぶん無理をさせちゃったけど、疲れちゃった……?」
「べつに、いいよ。ヒカルにもたれかかってるか、寝てるかしてただけだし……」

 なんでもないフリをしたものの、自分の声だけが掠れているのが若干気まずい。
 結局、先に射精してしまった俺のことをヒカルは「ちょっとだけ」と仰向けに寝かせた。乱れた呼吸を整えていると、投げ出したままの足首をヒカルに掴まれた。ひやっとした手で火照った体に触れられて、心地が良かった。

「ごめんね、俺、この格好で、したいな」

 おっとりした口調でそう言われた所は覚えている。それに俺は頷いたんだろうか。細かい部分は思いだせないが、ヒカルに足を抱えあげられて、もう一度挿入されたことは覚えている。
 自分だけ……というのはもちろん俺だって嫌だ。だから、ヒカルの肩に足を掻けた状態で奥まで深々と挿入されても、構わなかったし、もちろん最後まで付き合うつもりだった。「すぐ、済ませるね」とすまなさそうにしているヒカルに、うん、と頷いたし、照れ臭いのを我慢してボソッと「好きだ」とも伝えた。
 
 すぐ、済ませる、というのは本当で、あまりしつこくはされなかった。だけど、さっきまでの抜き差しは全部俺のために抑えた動きで、コイツここまで激しくしないと本当は満足出来ないんだろうか、と思ってしまうほど、一気に貫かれるようにして、何度も奥を突かれた。イッたばかりの体を抉じ開けて、快感を無理やり引きずり出されるような激しい動きに、俺はみっともなく声をあげ続けた。

「ルイ、腕枕して?」
「はあ……? ほら……」

 渋々と腕を投げ出すと、嬉しそうにヒカルがすり寄ってくる。二の腕の部分ではなく、腕の付け根の部分へ頭を乗せてくるヒカルの髪を撫でる。相変わらず、サラサラとしていて柔らかい。



「……あのさ、内示が出たよ」

 ポツリと呟かれた言葉に反応して、髪に触れていた指の動きがピタリと止まってしまう。そういえば、もうそんな時期か、と冷静に思う一方で、去年も一昨年も、それから定期の人事異動以外の時期でも、「もしかしたら、今度は」と二人でハラハラとしていた日々が頭を過る。

 俺が勤めているような小さな会社とは違って、ヒカルの働く大手ゼネコンの社内人事は、全国規模の転勤だってあり得る。
 付き合いが長いからなのか、続きを聞かなくても、ヒカルの声の調子だけでなんとなくどうなったのかが俺にはわかった。それでも、ヒカルの口からちゃんと全部を聞こうと、俺は黙ったまま話の続きを待った。




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