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大好きな葉月君
しおりを挟む「えっ……ちょっとどうしたの?」
思わず歓声をあげてしまった俺のことを、葉月君は不審に思っているようだった。
葉月君の身体はすごく筋肉質で男っぽいというわけでもなければ、プニプニしていて女の人のように柔らかいというわけでもなかった。
スラッとしていて、あんまりいやらしくない身体だった。艶かしいと言うよりは、清潔感がある……と言った方がしっくりくるような……葉月君はそんな体つきをしている。
なのに、見ているとドキドキして、触ってみたくて堪らなくなる。
すごく良い匂いのする、何度も「スリスリさせて」とくっついた大好きな葉月君の身体。
まだ全部ちゃんと脱がせていないのに、我慢が出来なくて、葉月君の胸元に自分の左頬をピタリと押し付けた。
葉月君はいつもと同じように澄ました顔で横になっているのに、聞こえてくる胸の鼓動はすごく早かった。
いつも俺ばっかりオロオロして笑われてばかりなのに、葉月君も緊張しているんだろうか。
葉月君の胸の音を聞いているうちに、自分自身の呼吸が荒くなって、顔全体が熱くなっていくのがわかる。
「嫌だったらすぐ言ってよ」「平気?やめとく?」と言う時、葉月君は「べつに、陸からどんな返事が返って来ようが、俺は全然気にしませんけどね」とでも言うかのように、いつも平気な顔をしている。
けれど、くっついているだけでこんなにバクバクと激しい音を立てているなんて、葉月君も本当は平気なんかじゃなかったのかもしれない。
自分の方が年上だからとかそういう理由で、いつも俺を気遣ってくれていたんだって、そんな気がした。
これは葉月君の俺には言えない本心だ。そう思うと、なんだか離れがたくて、葉月君の身体にしがみつくようにして、何度も素肌に頬擦りした。
「ちょっと……陸ちゃんどうしたの?」
「ん……」
「そういうふうに……、くっついてるだけでうっとりされると、先に進めないんですけど……」
「先……」
そうか、葉月君のことを気持ちよくしないといけないんだ、と胸元に何度もキスをしたりペロペロと舌を這わせたりした。
乳首もいいんだよね……?とこわごわ唇を近付けるのを、なぜか葉月君がじーっと見てくるから、ちゅっとほんの一瞬触れただけで、すごく恥ずかしくなってしまった。
「ど、どうしよ……、葉月君、俺……」
「…………どうしようって」
さっきまで観察するみたいにして俺のことを眺めていたのに、「陸ちゃんが恥ずかしがるから」と葉月君も照れ臭そうにしていた。
本人に言ったらきっと怒られるけど、可愛い、と思わずにはいられなかった。
全く同じものではないけど、葉月君が泣いてしまった時と、「可愛い」と感じている時の気持ちはなんだか似ていた。
どっちも、葉月君のために、「葉月君が大好き」と伝えて、それで何かしてあげたいのに、どうしたらいいかわからなくて、胸が苦しくなる。
「葉月君、あのさ……」
葉月君にくっついていると幸せで、「大好き」という気持ちを伝えたくて、抱き付いたりスリスリしたくなる。
葉月君が「セックスしたい」って言うのはこういうこと?と確かめたかったけど、上手く伝えられる気がしなくて、結局は黙り込んでしまう。
名前を呼んでは諦めてを繰り返しても、葉月君は怒ったり鬱陶しがったりしなかった。
「……陸ちゃん、好きだよ」と、弱い力で抱き締めてくれたうえに、いいよ、と俺がベタベタ甘えるのに付き合ってくれた。
□
「陸ちゃん……俺も触っていい?」
「うん…………。あっ、待って、まだ俺……」
つい、頷いてしまったことに動揺して、「まだ俺、葉月君の裸を見てない」と言いかけて慌てて口をつぐんだ。
俺がそんなことを口走ったら、警戒されて、ガードを硬くされるかもしれない。
どうしても服を脱ぎたくなさそうなうえに、葉月君は賢いから、俺がそんなことを企てていると知れば、きっと一瞬だって隙を見せなくなる。
「上だけでもいいから脱いでみてよ。もっと葉月君にくっつきたい」とイチかバチか誘ってみて、下は葉月君が気持ちよくってとろとろになった時に脱がせればいいのかな……と俺が考えている間に、葉月君はずり上げられた服をさっさと元に戻してしまっていた。
「ああっ……!」
「陸、服汚されたら嫌でしょ?ローションだって付くかもしれないし、さっさと脱ご?」
ローションが付く、でこれから何をしないといけないかを思い出して、ほんの少し反応が遅れる。
すぐに気を取り直して、俺は葉月君に向かって得意な気持ちでこう言った。
「葉月君……俺、今日は汚れてもいい服装だから、脱がなくたって平気だよ!」
部屋が一瞬、しん……と静まり返る。あれ?と葉月君の様子を窺うと、「汚れてもいい服装って……陸ちゃん、稲作体験じゃないんだからさあ……」とデッカイため息をつかれた。
「だって……全部脱がされるのは恥ずかしいし、前みたいに乳首にぶっかけられて、汚れるのも困るし……」
「……はー、なるほど。乳首にぶっかけられたいわけね……わかった、わかった。しょうがねーなあ、ほんとに……」
「そんなこと言ってないよ!」
ヒヒ、と葉月君が笑う。俺が必死で否定しているのがよっぽど面白いらしく、「しょうがねーなあ」と言いつつ口角は上がっていた。
「……いいよ、じゃあ。着たまましよっか」
「ほんとに?!」
「……あとで、脱がせてってお願いしても知らないよ?」
「えっ……!?あっ、待って……」
さっきとは逆で、仰向けに寝た俺の身体に葉月君が覆い被さってきて、もう何百回と着たよれよれのロンTの上から身体に触ってきた。
……触られていること自体は、ほんの少しくすぐったいくらいで、飛び上がるほどのことではない。
けれど、服で隠れていない耳の側で葉月君が「陸ちゃん、可愛い」「ずっと触りたかった」と何度も囁いてきては、淵を舌でなぞられて、息を吹き掛けられる。
「あっ、ダメっ!……い、や!葉月君、くすぐったい……!」
嫌、と何度身を捩って逃げようとしても、葉月君は離してくれない。俺がビクンビクンと身体を跳ねさせて、声をあげていると、「エロいなあ……」とうっとりした声で呟いていた。
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