お隣さんがエッチなお裾分けばかりしてくる

サトー

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二人の遠出 キャンプ編(2) (※同人誌より)

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 ユウイチさんと遠出出来るのが嬉しくて、俺はまた、はしゃぎすぎてしまった。

 今日は、前日の夜にしっかり寝たから寝坊もしなかったし、運転中に一方的に車の話をしすぎないようにもした。本当は「ユウイチさん、見て! かっこいいでしょ?」とレンタルしてきたCXー5の魅力について延々と喋りたいし、なんならこのまま千キロくらい車を走らせていたい。でも、今日は楽しみにしていたキャンプの日だから頑張って我慢した。

 だけど、ユウイチさんが「本当だ。カッコイイ車だ。マナトによく似合ってる」と褒めてくれた時はすごく嬉しかった。外だと絶対出来ないけど、車の中は誰からも見えないから、こっそり手も繋いだ。

 二人っきりの車の中で、「えへ」ってずっとニコニコしてしまう程嬉しくて、「もう、こんなところまで来たんだ」ってビックリしてしまうくらい、時間が進むのが早く感じられた。

 それくらい、本当に嬉しくて、楽しくて、ハリキリすぎて、なんだかその気持ちが空回りしてしまう。肉や飲み物を買うために、キャンプ場からそう遠くないスーパーに立ち寄った時もそうだった。

「ユウイチさん、カルビってどのくらい買えばいいんだろう? 一人一パックあれば足りるのかな? 三パックあった方がいいのかな?」
「……二人で一パックでいいよ」

 さっき、牛タンもロースもウインナーも買ったよ、とユウイチさんが言うから、買い物カゴに入れていたカルビをもう一度陳列棚に戻した。
 その後も「あった!」と一パック十二個入りの卵を持っていったら、「卵は六個入りで充分だよ。余っても旅館には持っていけない」と優しく諭されて、「初めてキャンプをするうえに、慣れない場所で調理をするのはすごく大変だよ」と缶詰のシチューをいつの間にか握らされていた。

「そっか……」

 俺はなんにも考えていなくて、シチューもカレーも肉も量を考えないで作るつもりだった。食べきれないくらいの料理が出来あがってしまったら、きっと途方に暮れていただろうし、何よりももったいない。
 キャンプに行こうって、決めた日に俺が書いたメモをユウイチさんは大事に持っていてくれた。……もう一回よく考えてから、カレーを作るのは諦めることにした。

「楽しくて、それで、いっぱい買いすぎてしまうところでした……」

こういう時、自分のことをすごく子供っぽいと感じる。家族や友達といる時はそうならないのに、ユウイチさんと二人になると、のびのびと自由に過ごしてしまう。
キャンプ場に着いたらもうちょっと落ち着こう……と気を引き締めながら、カートを押すユウイチさんの後に続いてレジへ向かっている時だった。

「マナト、マシュマロ忘れてる」
「あっ……! そうだった……」

 確かに食べたいって思っていたはずなのに、浮かれすぎてメモをしていたことも忘れてしまっていた。

「自分で食べたいものの一覧に書いたのに、肉のことで頭がいっぱいでウッカリしてました……。はは……」
「……うん」
「ユウイチさん?」

 なぜかユウイチさんは何も言わないで俺の顔をじいっと見てくる。……これは俺のことを「可愛い、抱きたい、食べたい」と思っている時の表情だ。他の人が見たら「深刻な表情で、何か難しいことを考えている」ようにしか見えないかもしれないけど、俺にはわかる。
 ただ落ち着きなくスーパーの中をチョロチョロしていただけなのに、どうしてユウイチさんはそういう気持ちになったんだろう。今日は外で寝るから出来ないけど、明日は絶対するよね……? と思うとなんだかソワソワしてしまう。
 スーパーを出た後、車の中でそうっとユウイチさんの手を握ったけど、熱くて手汗をかいているのは俺だけで、それがすごく恥ずかしかった。



 キャンプ場には家族連れや大学生らしきグループ、カップル、それから女性一人で利用している人もいて、そこそこ賑わっていた。
 テントを組み立てたり、焚き火台をセットしたり、やる事は山程あって忙しい。ユウイチさんは一つ一つの行程をこなすのにすごく時間がかかった。べつに、怠けているとか、不器用だからとか、そういうわけではなく、ただ、自分のペースで丁寧に作業をしたいみたいだった。

 俺はアルバイト先の工務店で、「早く早く、急げ」といつも急かされているから、なんだか遊びに来ているキャンプ場でもせかせかしてしまう。時間はいっぱいあるのに焚き火用の枝を拾ってくる時でさえ、早足でウロウロしてしまって、転ぶんじゃないかって、ユウイチさんに心配された。

 ユウイチさんはキャンプについては、事前にたくさん調べてくれていたみたいで、火を起こす時は、いろいろ教えて貰いながら二人で頑張った。
 着火材を使った後、始めは枯れ葉、次に拾ってきた小さな枝だけ……というふうに、ちょっとずつちょっとずつ火を大きくしていかないといけない。当然、燃えやすい枯れ葉や小枝はすぐに燃え尽きてしまうから、中くらいの太さの枝、薪……と、どんどん火にくべていく。ユウイチさんが拾った枝を大きさで仕分けしてくれていたから、「ヤバ! 火が消える!」とオタオタしなくてすんだ。

「出来た! やったあ~!」

 季節は春だから寒くはないけれど、やっぱり焚き火があると安心感があるし、キャンプ感が一気に増して嬉しい。パチパチと音を立てながら薪に火が移っていくのを見て大喜びしていたら、「良かった」と、ユウイチさんも俺を見て微笑んだ。
 それで、せっかく火もついたし……といつもの夕飯の時間よりはずっと早いけど、食事をすることにした。やっぱり今日買ったものとご飯だけでお腹はすごくいっぱいになってしまって、ここにカレーがついていたら危なかった。

 お腹がいっぱいになっても焚き火の前でビールを飲みながらユウイチさんと話をした。ユウイチさんの仕事の話と、俺の学校の話という、いつも家にいる時と変わらない話題が続く。
 俺はいつもユウイチさんがする同僚さんの話に笑ってしまう。今日も、ユウイチさんがゲンナリした顔で「毎週毎週、駅に着くまでに撒くのが本当に大変なんだ。向こうも足が早くなってる気がするし……」と言うのが面白すぎて、むせてしまった。たぶん、その人はユウイチさんのことが大好きなんだろうけど、当の本人は「勘弁して欲しい」と嫌そうにしている。

 時間が経つにつれて、知り合う前のお互いの事をポツポツと話した。

「……マナトって、彼女とはこういう所にデートでは来なかったんだ」
「え? うーん、そうだね……。俺はしてみたかったけど、彼女の方が嫌だったみたいで……」

 ユウイチさんは俺に彼女がいたことも知っているし、酔っぱらっていた俺がぽろっと喋ってしまったから、経験人数も知られてしまっている。
 今まで「マナトの元彼女ってどんな人だった?」とか、そういうことをユウイチさんから聞かれたことは無かった。興味が無いのかな、と勝手に思っていたから、ユウイチさんが「嫌がるって? じゃあ、彼女とはどこでデートを?」と突っ込んだ事を聞いてくるのが、ちょっとだけ意外に感じられた。

「……暑いし、お風呂が無いから嫌だって。デートは普通に買い物とかが多かったかな……。プールとか海にも行ってみたかったんだけど」
「けど?」
「……彼女が、自分の方が年上だってことをいつも気にしていて、それで水着になるのは恥ずかしいって、断られちゃって……。でも、関係ないと思いません? だって、付き合ってるんだし、水着姿を見たら絶対可愛いって思うに決まってるじゃないですか?」
「なんだって!」
「ひっ……」

 急にユウイチさんが大きな声を出すから、ビックリして危うくビールの缶を落とすところだった。ユウイチさんから振ってきたからって、ついつい余計なことまで喋りすぎてしまったのかもしれない。どうしよう、とドキドキしていたら、なぜかユウイチさんは、彼女とはどこで知り合ったのか、いったいいくつ年齢が離れていたのかを聞きたがった。

「俺が一人暮らしを始めたばっかりの頃だから……十八歳の時……。しょっちゅうピザを注文してくれるお姉さんがいて、この人よっぽどピザが好きなんだなって思ってたら……。いろいろありまして……」
「なんだって! もうちょっと詳しく! 特にいろいろの部分を!」
「ええ……八歳年上で……それで、えっと、何回も配達に行ってるうちに親しくなっちゃって……お客さんとそういうのはダメです、って言ったんですけど……。可愛くて優しかったから、俺も好きになってしまって……」
「あ、ああああっ……!」

 今度こそ椅子から転げ落ちるんじゃないかというくらい、ユウイチさんは興奮していた。「出来る限り思い出して。もっと聞かせて」という声は震えているし、なんだか体もワナワナしている。テントの組み立てが終わった時よりも、こんがりと焼けたカルビの最初の一口を食べた時よりも、ユウイチさんの心が動かされているように見えた。

「……ただ普通に付き合ってただけですよ」
「あああっ……! もっと早く知りたかった……! マナトが十八の時に、八歳歳上の彼女がいたという認識で今までを過ごしたかった……! ああ~!」
「……今だって、そんなに変わらないですよ。というか、ユウイチさんとの方が、十歳も年齢が離れているんだから、そこまで驚くことじゃないっていうか……」
「そういうことじゃないっ……! 全っ然違う……!」

 ユウイチさんは「元々甘え上手だとは思っていたけど……」とブツブツ呟いた後、記憶の上書きをする、と言って瞑想を始めてしまった。いったいいつ頃のどの時の俺を上書きしているのかはわからないけど、目を閉じたまま「あああっ……」「うーん……」と唸る様子は、普通に怖かった。

「ユウイチさん……」

 記憶の上書きが終わったのか、虚ろな目で夜空を眺めているユウイチさんにおそるおそる声をかけた。

「マナトは可愛いな……本当に、本当に……」
「大丈夫ですか……?」

 べつに昔のことを知ったからって、過去の俺の顔立ちが急にかっこよくなるわけでもないし、起こった出来事だって変わらない。それなのに、ユウイチさんはまるで、ものすごい発見をしたかのように感動し、震え、最後には疲れはてている。
 ユウイチさんは、「同級生と初々しい恋愛をしているマナトもいいけど、歳上の女性に甘やかされているマナトでも最高に興奮する」のだと言った。

「だって、俺はマナトが好きだから。ハハハ……」
「ひいっ……」

 なんだか、いつも言われている「好き」とは意味合いが違う。べつに怖いことを言われているわけじゃないのに、なんだか怖い。

「お、俺を……変な目で見るのはやめてください!」
「見てないよ。可愛いな、と思って見てるだけだよ」
「……変なことを言うんなら、もう寝ます」

 ユウイチさんは俺とは違う感性をしてるってわかっているけど、時々本当に理解が出来ないことがある。あんまり真剣に考えると、わけがわからなくなってしまう。

「マナトのことなら……逆に興奮すると思えばなんでも愛せる、ただそれだけのことだよ」
「うん……」

 変なことをたくさん言われたような気がするけど、ユウイチさんは喜んでいて、幸せそうだ。俺のことが大好きってことでいいのかな、俺とはちょっと考え方が違うけど……と思いながら焚き火が燃え尽きるのを待つことにした。



 外で寝るのは小学生の時以来で、寝る前だっていうのに、ワクワクしてしまった。大きな縦長の封筒みたいな形をした寝袋に二人で潜り込んで、「暖かい」「全然いける」とコソコソ話しているだけで、なんだかすごく楽しいことをしているみたいだった。

「普通の寝袋だと、一緒に眠れないからよかったです……」

 一人用の寝袋から顔だけ出した状態で並んで寝るのも悪くないけど、どうせだったらくっついて眠りたい。外からは見えてないしいいよねって、ユウイチさんの体に抱きついた。

「ユウイチさん、みんな寝ちゃったのかな? 外静かですね……」
「離れてるから聞こえないだけなのか、寝てしまったのか……どっちだろう」

 同じように焚き火をしていた人達もいつの間にか、片付けをしてテントや車に戻ってしまったみたいだった。外はすごく静かで、テントとテントの距離は離れているけど、大きな声を出したらきっと聞こえてしまう。自分達の話し声が響いていたら恥ずかしいから、ユウイチさんとは小さな声で話した。

「疲れた?」
「ううん……ユウイチさんは?」
「疲れてないよ」

 ユウイチさんの大きな手が俺の髪や頬に触れる。家だったら、キスをしたり、他のところに触ったりして、このまま……ということをどうしても考えてしまう。もぞもぞと身じろぎすると、寝袋が擦れるカサカサという音が耳の側でした。

「ねえねえ」
「……ん?」
「ちょっと、だけ」
「えっ」

 ユウイチさんの頬に唇で触れる。もし、外に聞こえてしまっていたら恥ずかしいから、「キスしたいです」とは言えなかった。野外だから絶対ダメだってわかっているけど、くっついているとちょっとだけでいいからしたくなってしまう。それに、「ちょっとって?」とユウイチさんが固まってしまったのが面白かった。

「ユウイチさん、ちょっとだけ、ダメ……?」
「……これもう始まってる?」
「始まってるって?」
「こんなところでマズイよプレイがもう始まってる?」
「なんですか、それ!?」

 寝ている人がいるかもしれないから大きな声を出せないのに、ユウイチさんが変なことを言うから笑いを堪えるのが大変だった。ユウイチさんの胸元に顔を埋めてクスクス笑っていると、ふーっと、大きな溜め息が聞こえた。

「……可愛いけど、外では駄目だよ」
「はい」
「股間を揉まれながら、駄目だよってマナトを宥めるプレイだと思うと確かに興奮するけど……」

 危ない目に合うかもしれないから駄目だよ、とユウイチさんは包み込むみたいにして俺を抱き締めた。……確かに中でそういうことをしてるって気が付かれたら、からかわれたり、もっと怖い思いをしたりすることだってあるかもしれない。

「すみません……。調子に乗りすぎました」
「いいよ……。また明日」
「うん……」

 遠出をして疲れているはずなのに、明日は旅館に泊まるから、いっぱいするんだろうか、「また明日」ってそういう意味も含まれてる? と思うと、目が冴えてしまった。

「……ユウイチさん」
「……うん?」
「やっぱりなんでもないです……」

一式持ってくるって言ってたの本当ですか、とはとてもじゃないけど口には出せなかった。

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