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★はじめまして(2)
しおりを挟む初めてレンタカーを借りて、自分の運転でユウイチさんと出掛けることになったた。
クリスマスイブからの五連勤を終えた後に貰える唯一の休日は、ユウイチさんとデートがしたいとずっと思っていた。
休みの前日、バイトが終わって「やったあ~! ようやく休める……」と嬉しい気持ちでそのままユウイチさんの家へ行って、明日デートをしませんか、と誘った。
そしたら、困った顔をされて、「行きたいけど……マナトは疲れているだろうし、家で休んでいた方がいいんじゃ……?」と断られてしまった。
優しさでそう言ってくれているということはもちろんわかっている。けれど、年末年始に一日だけでもいいからユウイチさんと楽しい思い出が作りたくて、諦めきれなかった。
「家でゴロゴロしているより、ユウイチさんと遊んだ方が元気が出るから……。あの、どうしても駄目? 夜はちゃんと早く寝るようにしますから、ユウイチさんに予定が無ければお願いします……」
……と、一緒にお風呂に入っている時にもう一回頼んだ。
単身用のマンションの浴槽は二人の大人が余裕で入れるほど広くはない。ユウイチさんに後ろから抱っこされた状態でお湯に浸かるのが初めは恥ずかしくて堪らなかったけど、最近になってちょっとずつ慣れてきた。
一度俺がのぼせた事があるからなのか、あまり長い時間は入らない。たまに先に出ているように言われる事もあるから、駄目だって言われたらどうしよう、とドキドキしながら勇気を出して思いきってお願いした。
もし断られたら、料理の練習でもして過ごそうかな……と考えていた時だった。
「えっ……あの、すみません。……なんか、当たってるみたいなんですけど……」
明らかに、自分の尻にユウイチさんの硬くなったモノが触れていた。なぜこのタイミングでこの人は勃起したんだろう……と思うと怖くて後ろを振り返れなかった。
「マナト……」
「ひいっ!?」
さっきまで体に軽く触れるだけだった手が、がっちりと腰を掴まえてくるから悲鳴をあげてしまった。
そのまま、割れ目にグリグリと性器を押し付けてくるユウイチさんの呼吸が信じられないくらい荒くて、なんだかマズイ状況なのかもしれない、という気がした。
ここでそのまま挿入されて中出しされるのは嫌だ! 俺にだって心の準備が……、と思い、「ダメです! 絶対無理です!」と絡み付いてくるユウイチさんの腕から逃れようともがいた。パシャパシャとお湯が跳ねる音がした。
「マナト、大丈夫だから……」
「いっつも大丈夫って言って、変なことしてくるじゃないですか!」
「違う違う。マナトが可愛いことを言うから、……その、これは、オーケーの意思表示のつもりで……」
「もっとマシな言い訳をしてくださいよ」
言い訳じゃないよ、とユウイチさんがますます体を密着させてきた。
「ん……」
「……その日はマナトの好きな場所に行こう。貴重な休日をありがとう」
「本当……?」
「うん。はあ………。マナトは可愛いな。可愛い、マナト、好きだから……」
こっち向いて、と言われたけど照れ臭くて出来なかった。
さっきまでは、「ここでは絶対嫌だ」と思っていたのに、今は振り返っていっぱいキスをして、そのまま体に触ってもらいたいと思う自分がいる。
この前、抱かれている最中に、俺はユウイチさんからの「好き」という言葉にすごく弱いんじゃないだろうかということに気が付いてしまった。「マナト、好きだよ」と言われると、痛いくらいに心臓がドキドキしたり、キューッと胸が締め付けられるような気持ちになったり、ぽーっとしてしまったりする。
初めは「駄目だ」と思っていたとしても、ユウイチさんからの「好き」だと言われると「ちょっとくらいなら良いかな……」とほんの僅かな隙が出来てしまう。
そうなってしまうと、「これ以上はどうしよう……」と迷っていた気持ちがどんどん崩れてしまって、いつの間にかユウイチさんにベタベタと甘えたい気持ちに歯止めが効かなくなる。
ユウイチさんと付き合うよりもずっと前……。女の人から「好き」と言われた瞬間に感じていたのとは違う気持ちだった。
ユウイチさんといると「もっと愛して欲しい」「もっと可愛がって欲しい」と思ってしまう。彼女のことを「可愛い。大好きだよ」と抱き締めている時には知らなかった感情だった。
どっちが自分にとって自然な感情なのかはわからない。
体も心も、ユウイチさんの前で受け身になってしまっていることに対して、自分が自分でなくなってしまうんじゃないかと不安に感じることもあった。それで、まだ付き合っていなかった頃、ユウイチさんに嫌なことを言ってしまった。
告白してちゃんと付き合うようになってから、ユウイチさんは俺をずっと大切にしてくれる。少しずつユウイチさんとの距離が縮まると、悩んでいた事に対しても「今は、きっとそういう気分なんだ」と思えるようになった。
女の人と一緒にいるのとは全然違うけど、「ユウイチさんから求められると嬉しい」と自分に対して少しずつ素直になれているような気がする。
だから嬉しくって、くっついていたくなるのは正直になれているってことなんだろうか……と感じられて、狭い浴槽内をモゾモゾと動いて、思い切ってユウイチさんと向き合った。
「わっ、狭い……」
浴槽にもたれてお湯に浸かっているユウイチさんの胸に寄りかかるような格好になる。
「なんか、この体勢ってちょっと恥ずかしい……。あの、さっき俺が暴れた時、顔に水がかかったりしませんでしたか? ごめんなさい……」
「ふう……」
「……あの、ずっと当たってます……」
「……わざとだよ」
「うん……」
わざと、と言われても……とモジモジしていると、ユウイチさんの手が俺の濡れた前髪をサイドに流すようにして、撫で付けた。
「なに……?」
「額が見えると雰囲気が変わるから」
「そうかな……」
「大人っぽくてかっこいいよ」
見た目のことを褒められるのは単純に嬉しい。固く閉じているにも関わらず、口が「にや」と動くのが自分でもわかった。
ユウイチさんはその様子をジッと見ているから、きっと俺が喜びを隠しきれていないことに気付いているはずだ。
「どうしよ、嬉しい……」
ユウイチさんにそう伝えると、ゆっくり顔が近付いてきたから、目を閉じてそのままキスを受け入れた。ちゅ、と触れるだけのキスが何度も繰り返される。
お湯の中では、カチカチに硬くなった性器が体に擦りつけられているのに、いやらしさを感じさせない、軽いキスしかしてもらえない。
物足りなくって、自分から薄く口を開いて、ユウイチさんの唇に舌を伸ばす。もっと、と舌を挿し込んでクチュクチュと音がするようなキスをした。
ユウイチさんの舌の感触と水音で、とろけそうなくらい気持ちが良くて、腰がゆらゆら揺れてしまっている。ユウイチさんの首に腕を回して、自分の体をぴったりとくっつけた。
「んっ……ん……」
気持ちいい。もっとしたい、でもこの先はどうすればいいんだろう、と戸惑っていると、そっと唇が離れていった。ふう、とユウイチさんは一息ついてから、「可愛すぎて、我慢が出来なくなるな」と呟いた。
「我慢って……?」
「このままマナトの体に擦り付けて射精したいけど……そしたらお湯の味が……」
「……お湯の味!?」
「……そうか、俺が一緒に入っている時点で、マナトから出た風味は損なわれているわけだから、もういいか……。……ちょっとごめん」
「風味ってなに? さっきから何の話ですか……?あっ、やだっ、ちょっと……! ちくび、触っちゃだめっ……、やだあ……」
さっきのキスの余韻でぼーっとしていたのに、なんだか危ない雰囲気のする言葉だけは聞き逃せなかった。
お湯に浸かったまま、両方の乳首を摘ままれる。温かい浴槽で、乳首を指先でぐにぐに押し潰されると、気持ちがよくって、声を出すのを我慢出来なかった。
ユウイチさんの体に跨がるようにしてくっついていると、割れ目の部分に性器が何度も上下に擦り付けられる。
下から突き上げられてセックスしているみたい、と思えてしまって、「ダメ」と何度も首を横に振った。こんなことをされたら……とその先を想像するだけで、体中を熱くなった血が駆け巡る。
「やだ……。ユウイチさん、も、これダメ……」
ユウイチさんと視線がぶつかる。「そうだな……」と頷いた後、ユウイチさんは動きを止めた。
「マナト……俺は自分が思っていたよりも繊細だったみたいで、お湯の中では水圧のせいで、どんなに頑張っても出そうにない」
「ええ……? うん、まあ、水中で触ると、そんなに……だよね」
「外で、触っても?」
結局、浴槽の縁に並んで腰掛けて、お互いの勃起した性器を手で扱きあうことになった。もうセックスだって何度もしているのに、明るい風呂場で、全裸でそういうことをしているのが、すごくエッチなことのように感じられて、少し緊張した。
ユウイチさんはずり落ちたりしないようにと、左腕で俺の体を抱き寄せた。濡れた肌と肌が触れ合う。
ユウイチさんの好きな触り方をしないと、と性器に手を伸ばそうとしたら、「マナト、ちょっとオプションを……」とユウイチさんが言い出した。
「……オプション?」
「ほんの少しでいいから、エッチなことを言いながら扱いて欲しい」
「えー……」
また、俺の……を触って、といった言いたくないことを言わされると思うと、不満げな声が出てしまった。
「やだ……さっきみたいにキスしたい」
ユウイチさんは、ぐ、と言葉に詰まっているようだった。
キスは気持ちいいから、考え直してくれるかもしれない。「お願いします」と頼んだら、低い声で唸っていた。
「じゃ、じゃあ、妥協案で……マナトがエッチなことを言ってくれたらキスするっていうのは?」
「うーん……。わかった……」
何を言ったらいいんだろう、と思いながら頑張ってユウイチさんの性器を手で擦った。同時に自分のモノも触られているわけだから、体をピクピク震わせているうちに頭がぼーっとしてくる。
手の中にあるユウイチさんの性器は、硬くて大きい。これが、いつも中に入ってる、と思うと、今まで経験したことの無いような体の疼きを感じた。
頭の中に、前にユウイチさんと一緒に見たゲイビデオの映像が流れる。
散々突かれて掻き回された後、穴からトロトロと精液が溢れてくる光景を、今もまだ鮮明に覚えている。あれって、俺にも出来る? ユウイチさんはしたい? と、聞きたいことで、頭が埋め尽くされていっぱいいっぱいになってしまった。
「ユウイチさん、これ、そのまま、入れたいって、思ったことある……?」
「えっ……」
「あっ、待って……あの、コンドームを着けないで、そのまましたい……?」
「コンドームを、着けないで、そのまま……」
うわ言のようにユウイチさんはそう呟いた。自分の言っていることを確認するかのように、一語ずつをいちいち区切る妙な喋り方だった。
「俺は……、わっ! あの、出てきちゃった……」
「出すよ」とも何も言わないで、ユウイチさんは俺の手の中に大量の精液を吐き出した。歯を悔い縛って我慢していたのか顔は真っ赤で、肩が微かに震えていた。
「大丈夫……?」
ヌルヌルになってしまった自分の手を軽く握りしめたまま、どうしたものか、と途方に暮れていると、ユウイチさんの腕に両肩を強く掴まれた。
「ひゃっ!」
「マナト、大人をからかうのは良くないよ……」
「んっ!? んんっ……んっ……」
エッチなことを言ったから約束通りにキスをしてもらえた、という雰囲気では無かった。
食べられるんじゃないかと思うくらい、舌を強引に吸われる。ユウイチさん怒ってる? と感じつつも、こんなふうに荒々しくキスをされることを嫌だと感じない自分自身にビックリしてしまった。
それどころか、やめて欲しくなくて、手が汚れているのも気にせずに、ユウイチさんの体にしがみついた。
性器がユウイチさんの手で上下に何度も擦られる。イきたいのに、時々根本をぎゅっと掴まれたり、握る力を弱くされたりして、なかなかイかせてくれない。
「ふ、う……、んっ、んっ! ……んんっ……」
ユウイチさんの腕をパシパシ叩いて、イかせてと訴える。もう限界だった。ほとんど息継ぎをする暇もなく吸われ続けた唇と舌がジンジンする。ようやくキスから解放された時にはフラフラだった。
「ユウイチさん……」
半泣きになりながら、なんで? と首を傾げると、そのまま片方の腕でぎゅうっと抱き締められた。
「お、こってる……?」
「怒ってないよ」
そのまま、手の動きを再開してくれた。喘ぐのを我慢できず、風呂場に自分のだらしない声が響くから、恥ずかしくて涙が出そうだった。
足を大きく開かされて、「やだ、やだ、見ないで」と声をあげながら、ユウイチさんの視線に晒されて何度も脈打つようにして熱を吐き出した。
◆
お風呂の後、ユウイチさんが「マナト、違う。あれは違う。誤解なんだ。でも、ごめん、気が済むまで踏んで欲しい」と土下座して謝ってきた。「だから、やめてくださいってば!」と地面から起こすのに苦労した。
「べつに、大丈夫です……」
たまには、ああいうのもアリだなと思いました……とは照れてしまって言えなかった。
「明日は車を借りに行くから、早く起こして欲しいです」とお願いしてから、一緒にベッドに入った。
何もしてなかったら、きっと楽しみで眠れなかったかもしれないけど、お風呂でのことがあったから、すぐにウトウトしてしまう。
まだ、ユウイチさんは反省中なのかしょんぼりしていたから「ユウイチさん、大丈夫。ずっと大好きだよ」と抱き締めてあげたら、気を失うようにしてすぐに俺の腕の中で眠ってしまった。
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