お隣さんがエッチなお裾分けばかりしてくる

サトー

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正解(4)

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 ユウイチさんからどういうものが見たいのか聞かれても、すぐには答えられなかった。

「……なるべくハードじゃなくて、普通に仲が良い雰囲気のやつ……」

 痛々しくて誰かが可哀想な目にあってるのは好きじゃないし、あまり見たくない。
 ユウイチさんは「なるべくかっこいい方がいいよな…」「ポイントを買わないとな…」とブツブツ呟きながら、テキパキと手際よく動画を見れるようにしてくれた。



「……ユウイチさんは、こういうのよく見る?」
「最近はそんなに……。もっと若い頃は夢中で見ていたけど」
「忙しいから?」
「……オカズが足りてるからだよ」

 オカズが何のことなのかは、聞かなくてもだいたいわかった。だから、そのことについては余り触れずに「そうなんだ」と頷いて愛想笑いをしていたら、「最近は俺の身体が追い付かないくらい、マナトがオカズを提供してくれるから。いつもありがとう」と感謝された。



「……オカズって、俺は何も……」

 俺をオカズにたくさん抜いてる、と面と向かって言われると、恥ずかしくてどういうリアクションをしていいのかがわからない。
 そのせいで困っているというのに、ユウイチさんは俺のことを無遠慮にジロジロ眺めるだけだった。


 テレビでもパソコンでもなく、スマホで動画を見せてもらうことになったから、二人でくっついて画面を覗き込んだ。

 それで、髭を生やしていて身体の引き締まっている男の人と、色白で可愛い顔をしている男の人のセックスを見た。
 同じ男の人の裸を見ても興奮はしなかったけど、二人ともビデオに出ているだけあって、顔も体も綺麗にしていて、スポーツ選手とアイドルみたいだった。
 どっちも有名で人気があって、もう何本も他の作品にも出ている、とユウイチさんが言っていて、確かにそれに納得出来るほどのルックスをしていた。

 普通に二人が外で手を繋いで歩いているところも、部屋で服を着たままイチャイチャしているところも、服を脱ぐところも、裸で抱き合っているところも全部見た。

 結合部がアップになっている部分だけは、「えーっ……俺もこんなふうに全部見られてるの!?」と、動揺した。
 今まであまり考えないようにしていたことを映像でハッキリ見せつけられて、ユウイチさんとセックスをしていたことがすごく恥ずかしく感じられた。画面から目を逸らしたくなる程だった。



「……あの、ユウイチさん、見せてくれてありがとうございました」

 始めから終わりまで全部をしっかり見たわけじゃないけど、男の人どうしのセックスを観賞するのは初めてだったから見終わった後も、ドキドキしていた。
 ちゃんと中でイっているみたいだったし、「こんなに激しく出し入れされて、突かれても大丈夫なんだ!?」ということにすごくビックリした。家で一人で見ていたら、ルーズリーフに「思ったより人間のお尻は丈夫」とメモしていたかもしれない。

 挿入中、入れている側の男性もすごく気持ち良さそうな顔をしながら腰を振っていた。
俺とユウイチさんがしてるようなセックスでは絶対にしない、肌と肌がぶつかるパン、パンという激しい音は妙に耳に残った。
 ユウイチさんもこんなふうにしたいかな、と秘かに様子を窺ったけど、無表情でただ画面を見ていて、興奮しているのか、つまらないと思っているのか、判断が出来なかった。


「ユウイチさん、すごかったね……?」
「うーん……」

 ユウイチさんはしばらく難しい顔をしていた。もしかしたら、一緒に見るのが嫌だったんだろうか……? とユウイチさんが何か言ってくれるのをじっと待った。


「……乳首の撮り方が雑なんだよなあ」
「えっ?!」
「感じなかった? モデルはいいんだけど……」
「わ、わかんない……」

 俺の心臓はバクバク言っているというのに、ユウイチさんは見慣れているからなのか批評をする余裕まであるようだった。
 乳首の撮り方については特に何も感じなかったけど、何度も中出しされた穴から性器が引き抜かれた時に、精液がトロトロと溢れてきた映像がなぜか強く印象に残って、頭にこびりついて離れなかった。

 俺はまだ、中に出されたことは一度もない。ユウイチさんはいつもコンドームを付けるし、させて欲しいと言われたこともない。
ナマでしたらどうなるんだろう、あんなふうにいっぱい奥で出されて、そのまま抱かれたら気持ちいいんだろうか……ということを思っていると「マナト?」とユウイチさんに呼ばれた。

「あっ、ごめん……ちょっとぼーっとしてて……」
「……熱あるんじゃないかってくらい、顔が赤いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫……」

 ユウイチさんの手が俺の頬に伸ばされて、思わず目をぎゅっと閉じてしまう。触って確かめなくても分かるくらい、顔が火照っている。
 ユウイチさんにも言えないようないやらしいことを、たった今、想像してしまっていた。

「……目、開けて」
「ん……」

 ユウイチさんと目が合う。「すごくエッチな顔してる」と言われながら、頬を撫でられる。
いつの間にか、そういう雰囲気になってしまっている。さっきあんなにいっぱいしたのに、どうしよう、と焦ってしまう程、熱っぽい目で見つめられた。

「……で、収穫はあった?」
「うん……」

 俺とユウイチさんがしてるセックスと全然違ってたね、と呟くとユウイチさんはすぐに「あの二人はプロだし、演出も入っている」と言う。だから、違うのは当たり前だって、教えてくれた。

「……ユウイチさん、ユウイチさんも本当はあんなふうにしてみたいですか……?」
「うん……?」

 ユウイチさんは困ったようにほんの少し微笑むだけで、したいかしたくないかについては、ハッキリ教えてくれなかった。どちらでもない、というわけではなくて、どう見ても俺に遠慮をして答えを濁しているとしか思えなかった。


「俺は、本当はしてみたいけど、まだ、怖くて……、すみません……。じ、時間はかかるかもしれないけど、出来るようになるまで待っててもらえますか……? ユウイチさんにもいっぱい気持ちよくなって欲しいし……、今度する時は頑張ってみるから、えっと、ちょっとだけ激しくしても、大丈夫です……って、あれ? ユウイチさん?」

 だらだらと俺が話し続けている間に、ユウイチさんは目を見開いたまま硬直していた。

「ユウイチさん? 大丈夫……?」
「……マナト、俺は今、自分の意識が遠退いていくのを感じた…」
「えっ!? 大丈夫ですか!?」

 ユウイチさんは「マナト、今日はもう寝た方がいい」と話を切り上げてしまう。それから、怒っているんだろうか? と感じる程、真剣な顔をしたまま、俺の体を布団でくるんだ。
 さっき言ったことはちゃんと聞いててくれたのかが気になったけど、ユウイチさんは俺の背中をトントンしてきて、本気で寝かしつけようとしていた。
 それで、疲れていたのもあっていつの間にか眠ってしまっていた。




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