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★とろとろ(2)

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「ユウイチさん、これ、終わった後ってそのまま流して大丈夫なんですか?」
「融解剤を入れれば大丈夫だよ」

 そっか、そのまま流したら排水溝が詰まっちゃいますよね、と納得したように頷いた後、マナトはお湯を手ですくっては、とろとろとした感触を楽しんでいるようだった。

 始めは「なんですか? このお湯……」と困惑していたものの、一度入ってしまうと「え~! すごい! なんで~?」とお湯をパシャパシャさせて、マナトは喜んでいた。
その様子は湯船ではしゃぐ小さな子供のようで微笑ましい。


「……ユウイチさん、こんなに楽しいものを買ってくれて、ありがとー」
「うぐっ……!?」

 危なかった。足の間におさまっていたマナトが、振り返って可愛く笑いかけてきたせいで、あやうくマナトの顔を見ながらそのまま抜いて射精するところだった。

 この間、股間を踏ませた時に秒速で射精してしまったことについて、マナトが怒っていないことがようやく確認できたばかりだ。それなのに、今日、勝手に浴槽内でぶっかけるなんてことをすれば、「またですか!? いい加減にしてくださいよ、本当に……」といよいよ呆れられるかもしれない。
 それはそれでご褒美にはなるものの、好感度が下がって避けられるようになれば、元も子も無い。

 今は我慢の時だった。
 あくまでも今日は、「面白いものが買えたからお裾分けしてみた」という目的でこうやって一緒に風呂に入っている。

 そもそもマナトはのぼせやすいから、そんなに長い時間風呂に入っていることは出来ない。ただ二人で、温かくて、とろとろしたお湯にダラダラと浸かっているくらいが、ちょうど良い。

「マナトは、今日はなんの資格の試験を受けにいってた?」
「危険物取扱者。結構出来たと思うけど不安だな……」

 名前自体は聞いたことはあるものの、今までの人生で危険物取扱者の資格について受験してみようと考えたことすら無かった。
 ガソリンや軽油を取り扱うために必要な資格……ということくらいしか思い浮かばない。
試験の難易度も、合格までに要する勉強時間も全く見当がつかなかった。

 けれど、すでに不合格だった時のことを考えて落ち込んでいる様子を見ていると、試験のためにマナトが必死で頑張って勉強していたのは明らかだった。

「学校とバイトで忙しいのに、いつ勉強を?」
「……朝の3時に起きて勉強しました」
「えっ……」
「と言っても、俺、朝はなかなか起きられないから、一時間くらいボーッとしてしまって……、実際勉強を始めるのは4時からだったけど……」
「なんだって! 本当に?」

 すごい、エライ、と何度も褒めるとマナトは照れ臭そうに笑った。
 結構勉強した、と誇らしげにしていたと思ったら、「ユウイチさんみたいに頭がいい人なら、ちょっと勉強したらすぐ受かっちゃうよ。俺は頭が悪いから……」と小さな声で呟いた後、俯いてしまった。

 いつも明るくてニコニコしているのに、こんなことをマナトが口にするのは珍しかった。もしかしたら、間近に迫ってきた就職活動に不安を感じていることも、影響しているのかもしれない。マナトはあと一年で学校を卒業する。いよいよ自立することを考えて、働ける場所を少しでも広げるために努力しているようだった。

「大丈夫、大丈夫……」
「うん……。ユウイチさん、もし落ちてたら、その時もこうやって慰めてください」
「……じゃあ、受かっていたら、俺からお祝いをあげるっていうのは?」
「えっ! 本当? 嬉しい」

 何を貰おうかなー、と楽しそうに迷った後、マナトの欲しいお祝いというのは、「外で一緒にご飯が食べたい」ということだった。
 元気な笑顔を見せてくれたことは嬉しい。それなのに、なんでもわがままを言えるチャンスで、そんな些細なことを頼んでくるのがいかにもマナトらしくて、可愛くて、胸が締め付けられる。

「もっと欲しいものは……? 車でもなんでも、マナトが好きなものを買ってあげるから」
「え~……? 無いよ、べつに。車は自分で買いたいから……」

 その後、「あっ、そうだ! 車を買ったら、その時は洗うのを手伝ってもらえます?」と明るく言われて、返事をする代わりに後ろからぎゅっと抱き締めてしまった。
 本当にマナトは可愛い。欲が無くて、正直で、ずっとずっと一生懸命で……「可愛いなあ」と思う気持ちの処理が追い付かない。それくらい愛くるしかった。

「……このままだと、ますます預金額が増えてしまうな……」
「うん……?」
「……この前、クリスマスプレゼントに作った地銀の口座への入金が止まらなくなってしまう」
「あっ、そーですか……」
「地銀がダメなら、ネット銀行に切り替えてみようかと思っているんだけど、試しに受け取ってみるのはどうだろう?」
「いりません。どこで口座を開設しようと絶対にいりません」

 ふいっと、そっぽを向いてしまった頬をつつくと「えっ! ちょっと、ヌルヌルするじゃん!」とマナトが振り返って抗議してきた。
 普段、二人でいる時とはまるで違う……悪ノリが過ぎる友達を咎める時のような口調だった。こんな喋り方もするのか、と意外に思ってマナトの顔を思わず凝視してしまう。

「……すいません」
「えっ? いや、そういう喋り方も好きだけど……」
「……べつに、ユウイチさんといる時に、話し方を作ってるつもりはないんですけど……」

 自然に出てしまうところがかえって生々しくて可愛いと言うのに、「恥ずかしくなってきた……」と小さくなってしまう。

「さっきみたいに小生意気な感じで『ちょっと! え? なに勝手にシコってんの! キモ!』と言われるのを想像したら興奮するけどな……」
「……すぐそういうこと言う」

 マナトのいつもとは違うどんな一面でも「逆に可愛い」「かえってエロい」で愛せる、という意味で言っているのになかなか伝わらない。若いから、まだその域に達していないか……とマナトの後ろ姿を眺めながら一人頷いた。

「……あの、大丈夫、って言ってくれてありがとう。ちょっと、元気が出ました」とボソボソと言ってくるところに、まだ大人にはなりきれていない、素直さや幼さが見受けられて、思わず頬が緩む。マナトが向こう側を向いていてくれて良かった。

「マナト、そろそろ出ないと」
「うん……でも、もうちょっとだけ、ダメ?」

 のぼせてしまうから長湯は出来ないのに、マナトから「もう少し」と言われると、つい、いいよ、と頷いてしまう。

「……なんか、トロトロしてるせいかな……? 肌が触れてるだけで気持ちいい……」

 うっとりしたような甘えた声でそう言った後、マナトが今よりもっとくっつこうとモゾモゾと動いた。そのまま、体の向きを反転させたマナトに正面から抱き着かれる。とろとろのローションに覆われた肌と肌が触れ合う。マナトの言うとおりで、抱き合っているだけでも、充分に気持ちがいい。

 肌にとろみが絡み付いてきて、密着した部分がヌルヌルと滑る。乳首が擦れるのか、時折マナトが「んっ」と声を漏らして、ピクピクと体を反応させた。

「ユウイチさん、あの、もう少し一緒に入りたい……」
「がっ……」

 のぼせていないかマナトの顔つきを確認したら、うるうるした大きな目にじっと見つめられた。あっ、これはマズイ……と思わず硬直してしまう。
 こんなふうにマナトから可愛く誘惑されると自分が抑えられなくなりそうで恐い。
 とにかく顔を見たら駄目だ。あの可愛い顔がいつも「ユウイチさん、食べて……?」と誘ってくるから、「あれ?」と思った時にはセクハラをしてしまう。

「ユウイチさん、なんで天井を見てるんですか?」
「……大丈夫、なんでもない」
「ユウイチさん、キスしたい……。駄目ですか?」

 ちょっとだけ、とマナトがせがんでくる。……慎重に慎重に、視線をマナトの顔へ向けた。あの丸っこい潤んでいる目を直視したら終わりだ……、と自分に何度も言い聞かせた。

「……するから、目を閉じてもらっても?」
「うん……」

 大きな目がしっかり閉じられているのを確認してから、まじまじとマナトの顔を見た。
柔らかそうな肌に赤みが差している。冬の寒い日に外遊びをしている子供の頬によく似ていた。
 視線を下げると、喉仏が微かに上下しているのが見える。子供っぽい部分と、しっかり大人になっている部分とが混ざり合って、それがとても艶かしく感じられた。

 ほんの少しのつもりだったはずが、一度してしまうと止められなくて、短いキスを何度も繰り返した。

「んっ、んーっ……」

「触って」とでも言うかのようにマナトが体を擦り付けてくる。背中を撫でてやると、それだけでビクリと肩が震えた。

「気持ちいい……」

 ぽーっとした目でじっと見つめられる。パシャパシャとお湯ではしゃいでいた時とは別人のように、エッチな顔をしていた。
マナトだってこんなに欲情してるし、触ってもいいんじゃないか? と一度思ってしまうと止められなかった。

 さっきマナトがそうしていたように「ちょっとだけ」と自分に言い訳をしてから、マナトの固い胸に手を伸ばした。嫌がるどころか、声をあげてしがみついてくる。

「あっ……! それ、気持ちいい……」

 小さな乳首を指の腹で撫でてやると、イヤイヤするようにして、マナトは身を捩って悶えている。とろっとした水面が揺れた。こんなに小さな乳首で、ちゃんと感じて、反応を返してくるのが可愛くて堪らなかった。乳首というか、そもそも乳輪自体の面積が小さく、色も薄くて輪郭がぼんやりしている。

「う……あっ、乳首、くすぐったい……」
「完全に大人の体なのに、ここだけ成長しなかったのか……? 可愛いな……」

 本人は気付いていないかもしれないが、マナトは、「小さい」と言われるたびに「そうなんだろうか?」とイチイチ自分の乳首を確認する。
 今日は、目線を自分の胸元に落として、ヌルヌルした乳首が撫で回されて、摘ままれて、弾かれるのを目にして、恥ずかしさで真っ赤になっていた。

「ち、小さくないです……」
「本当に?もっとよく見て確認した方がいいと思うけど」
「いやだっ……ふ、ああっ……」

 やだやだ、とぎゅっと目を閉じて、どれだけ乳首を触られても、されるがままになっている姿は可愛かった。

「あっ、ちょっと大きくなったかも」
「えっ!?」
「いや、嘘だけど」
「…………サイテーですっ! あっ、もう、やだっ、やだっ……」

 嘘に引っ掛かって目を開けるだろうとわかっていたから、とろとろしたお湯を塗り込むようにして乳首を擦った。からかいすぎてしまったのか、手を振り払ってから怒った声で、「もう出る」とマナトは宣言した。


「マナト! 滑るから、気をつけないと……」
「わっ!? ほんとだ、待って、どうしよ、怖い」

「ユウイチさん、転びそうで怖い」と不安そうにしているから、マナトを支えながら一緒に浴槽から出た。
 ついさっきまで怒っていたというのに、もともとが素直な性格をしているからか「ありがとうございます」と律儀にお礼を言うところが可愛い。
「出た後はかなり滑りやすいです!」と口コミに書かれていたとおり、ローション風呂は本当に滑りやすくて、足元を洗い流すまでの間ハラハラしていると、マナトは「なんだかマヌケだね」とクスクス笑っていた。

「あっ、あの、二人とも、すごい……ね?」

 マナトからそう言われて、何がすごいのかはいちいち聞き返さなくてもわかっていた。
お湯に浸かりながら触り合っていたせいで、二人とも勃起したまま、「滑りそうで怖い」とくっついているのは、確かにマヌケな格好だった。
「触る?」と尋ねると、マナトは迷うことなく、「いいんですか」とはにかみながら頷いた。

「ドアのとこ立って、そう……。足、大丈夫?」
「うん」

 マナトをドアに掴まるようにして立たせた。後ろから手を伸ばしてそうっと性器に触れると、落としきっていないローションでヌルヌルしている。

「あっ……」
「マナト、声」

 しー、と耳元で囁くと、「なんで?」と聞き返してくることもなく、マナトはコクコクと何度も頷いた。たぶん、「そっか、風呂場で声が響くからダメなんだ」と勝手に理由を考えて納得したに違いなかった。
 実際は、特に深い意味はなく、ただ「マナトが声を我慢しているところが見たい」というだけだった。それでもマナトは、硬く大きくした性器を触られても、大きな声を出さないように必死で堪えている。

「ふ……う、く、ううっ……」

 どこからどう見ても成人男性の後ろ姿なのに、体を震わせて小さな声をあげる様子は、クークー鳴く子犬にソックリだった。
 声を出したらダメだと頑張って口を閉じているのに、我慢出来ずに鼻にかかった声が漏れてしまうのが、すごくいじらしい。

「んっ……んーっ……! く、ううっ……や、ああっ……」
「マナト、お尻にかけてもいいかな? ほんの少しだけ……」
「ん……どうぞ……」
「それからちょっとでいいから、この間と同じ要領で罵倒して欲しい。出来ればさっきみたいな口調で」
「え……? いっぱい、言われても、わかんない……」

 この前はしてくれたというのに、今日はいくらしつこく頼んでも、マナトは絶対に折れなかった。

「んっ……やだ、言いたくない……!」
「今、思ってることを何でも正直に言っていいから……」
「なんでも……?」
「ぶっかけるなんてキモイとかそういうのを……」

 いつの間にかマナトは耳まで真っ赤になっていた。快感を与えられ続けたせいで、頭がぼーっとしているのかなかなか口を開こうとしない。
 耳を舐めたり、乳首を触ったりしながら、イキそうでイケない状態にして、早く、と催促すると「言う、言うからっ…!」とマナトが絞り出すような声をあげた。

「…………ユウイチさんが、あっ、好き………や、あっ、あああっ! ……んっ、んっ、んんーっ……!」

……結局、風呂場のドアも、マナトの体も、それぞれ二回ずつ精液がかかって汚れてしまった。

 風呂の後に、どうして今日は罵倒を嫌がったのかマナトに聞いたら、「……資格試験のことで慰めて貰ったから、酷いことを言いたくなかった」とモジモジしながら説明された。
「はあー……」と思わずため息が出てしまう。

 今、側に寄られたら危ない、とそれとなく距離を取ったのにも関わらず「ユウイチさん、気持ち良かったから、今日の……またお裾分けして欲しいです」と可愛くねだられた。
そのせいで結局「もう、やめてください!」と怒られるまでマナトの尻を揉んでしまった。



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