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お裾分け(5)

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 マナトが長い時間をかけて風呂に入っている間、落ち着きなく部屋をウロウロしながら待っていた。

 マナトとセックスする前に一度抜いておくべきか、ということについて考えすぎて頭がおかしくなりそうだった。
 持続力、という点だけで考えると抜いておくにこしたことはない。幸いオカズはいくらでもある。
 けれど、正直に言えばマナトの中に思いきり出したいと言うのが本音だった。……もちろんコンドームは付けるけど、射精する瞬間のマナトにギュウギュウに締め付けられて一滴残らず、搾り取られたい。
 きっとマナトは「ダメっ……! また、イく……、やめてえ……」という可愛い声をあげるだろうから、それを聞きながらマナトの身体へ腰を激しく打ち付けたいし、こじ開けるようにして奥深くまで入れたい。

 さすがにマナトの体への負担を考えると、そんな激しいことは出来ないから、実際は「待って」「怖い」という言葉を聞き漏らさないようにするのでいつも必死だった。

 けれど、今日は自信がない。
「アダルトグッズをマナトに使用する」という状況を経験するのは初めてだ。冷静でいられるか、そもそも入れた瞬間に射精ということもあり得るし、今だって考えただけでムラムラし過ぎて……。

「……うっ」

 危なかった。やっぱり抜いておくべきかもしれない、でも嫌だなあ……とベッドに腰掛けてグズグズと悩んでいる間に、マナトが戻ってきてしまった。
 マナトは「お待たせしました」とすまなさそうな顔で呟いた後、側に腰掛けたりはせずに、俺の正面に突っ立ったままモジモジとしている。
 しょんぼりしているような顔つきを見てすぐにわかった。「……酔いが覚めてますよね?」と。

「マナト……?」
「あのっ、遅くなってすみません……」
「……大丈夫?」
「……何が? ……飲みすぎてたからですか? 全然平気です……」

 と言ってはいるものの、どう見てもシャワーを浴びている間に、どんどん冷静になってきて「どうして俺はあんなとんでもない事をオーケーしてしまったんだろう」と後悔しているようにしか見えなかった。



 ふう、と一息ついた後で、何かを決心したような顔でマナトは口を開いた。

「あの、俺、今日は酔ってるから……」

 それだけ言うと、マナトの頬が見る見るうちに赤く染まった。今、言ったことには、まだ続きがあるんだろうか、と思い、しばらく待ったもののマナトは黙り込んでしまった。

「酔ってるから……?」
「あの、それだけ……」

 耳まで赤くして居心地が悪そうに立ち尽くしているマナトのことをじっとよく観察した。
 顔つきはいつもより普通、というか、どうかしたら普段よりもずっと険しかった。
 きっと、今の状態のマナトへさっきのようにエッチなパンツを見せれば「最低!」と怒っていたに違いない。
 酔っていたとは言え、さっき了承してしまったことについては記憶があるようだから、約束を破るわけにはいかず、困ってしまっている。
 けれど、「やっぱり、したくない」と断るとガッカリさせてしまうと判断して、それで「酔ってるから、いつもの俺と違うんです。だから、この先の恥ずかしい事を受け入れるんです」という事を言いたいのかもしれなかった。

 マナトの腕に手を伸ばして、側へ座るように促した。肩を抱いてやると、緊張しているのか体はカチコチに強張っていた。
 アダルトグッズとパンツを見てケラケラ笑った後、「使ってみる?」と言っていた時とは違う、いつもの恥ずかしがりやのマナトが戻ってきていた。

「うん、大丈夫大丈夫……。ずいぶん酔っ払ってて、いつもと違うから心配してるけど」
「うん……」
「こんなに酔っ払うなんて、そんなに楽しかった?」
「うん。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃって……」

 自分の言った「酔ってるから」という言葉を俺が信じたと判断出来て安心したのか、マナトが俺の肩へ小さな頭をコテっと乗せてきた。
 そのまま数分程、並んで座っていた。「明日は何時に学校へ行く?」ということを聞いたり、体を擦ってやったりしながら、緊張で強張ったマナトの顔つきが柔らかくなるのを待った。
 そうやっていると、リラックスしてきたのか「……それにしても、ユウイチさんがすごくエッチなものをいっぱい持ってるからビックリしちゃった」と冗談めかして笑うようにもなった。




「……それにしても、部屋着姿のマナトは可愛いな。さっきみたいに立ってよく見せて……」

 うん、と頷いたマナトは素直に俺の正面に立った。
 何度も着てくたっとしているグレーのスエットパンツと白のロンTは、マナトが自分の部屋から持って来たものだ。
 今まで「家へ持って帰って自分で洗う」と数えきれないほど断られたところを「絶対に匂いを嗅いだり、舐めたりしてシコったりしないから」と拝み倒して、この部屋に置かせている。
 マナトが帰った後に、脱ぎたての部屋着を眺めて抜いたことは何度かあるが、その時も指一本だって触れていないし、ぶっかけたりもしていないから、一度も約束は破っていない。



「……べつに普通の格好だよ? 珍しくないと思うけど…」
「普通ね……」
「いつもユウイチさんの部屋では着てるし……ひゃっ!」

 尻に手を伸ばすとマナトが短く悲鳴をあげた。スエットの柔らかい生地の下に引き締まった尻がある。
「い、いきなり触るなんて……」という非難するようなマナトの声を聞きながら、両手でマナトの尻を撫で回し、揉んだ。

「ユウイチさん……?」
「この下は……?」
「……す、スケスケのパンツを履いてます」

 こんな普通っぽい格好の下に、性器の形がモロに分かってしまうような、黒のシースルー素材のボクサーパンツを履いているというのが、ギャップがあって目眩がする程の興奮を覚えた。

 自分が頼んで履かせたにも関わらず、恥ずかしそうにしているマナトの顔を見ていると「こんなに大人しそうな顔をして、男を誘うようなエッチな下着を履くなんて、なんていやらしいんだろう」と思えてきて、ものすごくそそられた。


「スゴイ……。服を脱がせるのがもったいないな……」
「う……。ユウイチさん、恥ずかしいよ……」
「もうちょっと、このままで……大丈夫だから……」
「うん……」
「マナト、ちょっと、上に着てるもの捲ってくれる?」
「ええ……」
「捲ってくれたら、お尻を揉むのはやめるから」

 嫌そうにしながらも、渋々、と言った様子でマナトが服を捲った。
 緊張しているせいなのか、触れていない乳首はすでに軽く立ち上がっているように見えた。
 相変わらず「本当に成人男性のものなんだろうか?」と疑いたくなるくらい、小さな乳首をしている。まだ勃起していない状態のマナトの性器にそっと触れると、目の前の身体がビクリと震えたのが分かった。

「んっ……服、捲ったらやめてくれるって言ったのに……」
「うん? ……うん、お尻を触るのはやめるから……」
「ユウイチさんの嘘つき……」
「嘘はついてない」

 はあ、というマナトの溜め息を聞きながら、ほとんど手は動かさず性器に触れただけの状態で乳首と顔をよく観察した。
 視線に気付いたのか「あんまり見ないで」と蚊の鳴くような声でマナトが呟いた。手の中の性器がゆっくりと形を変え、次第に硬くなっていく。

「あっ……」
「見られて興奮してる……?」
「違う……! ユウイチさん、もう服を下ろしても良い? 恥ずかしい……」
「まだ。まだ、そのままで……」
「ううっ……」
「すごい。触れてるだけで、どんどん硬くなってる……。マナト、乳首を見られてるのと、スケスケのパンツを履いてるのと、どっちが恥ずかしくて、こうなってる?」
「わかりません……」

 服の上から揉むようにして性器を触ってやると、「ユウイチさん、恥ずかしい……」とマナトから何度もそう言われた。
 逃げようとする腰を左手でしっかりと掴まえる。始めは「ダメ」と嫌がっていたマナトが、次第に自分からグッ、グッと俺の手に性器を押し付けてくる。
 ずっと表情を観察しているのにも関わらず、マナトが下を向いているから一切目は合わなかった。

「ユウイチさん……、服下ろしていい……? お願い……」
「うーん……仕方ないな……、じゃあ、前に教えたみたいにお願いしてごらん」
「前……?」

 付き合うようになってから、「ユウイチさんが大好き」とマナトから可愛く言ってもらえる権利を獲得したものの、金を払って身体に触らせてもらっていた時と比べて、罵倒される機会がどんどん減ってしまっている。
 俺との間でアルバイトを始めたばかり頃、マナトは、口には出さないものの「キモイ」と本当に嫌そうにしている時もあったし、頼めば戸惑いながらも「変態野郎」と罵倒してくれていた。

 もちろんあの時に比べたら今の方がずっと幸せだ。けれど、マナトに嫌がられた時の、全身が悦びで震えるような感覚がどうしても忘れられなかった。
マナトは賢いし、何を教えた時も覚えが良かった。きっと、「前に教えた」という言葉から「気持ち悪い。俺の乳首で勝手に興奮するなんて……この変態野郎」と罵倒することを思い出してくれる。

 優しい心の持ち主であるマナトは、本当にそんなことを言ってもいいのか迷い躊躇しているようだった。
「どうしても言わないとダメ……?」と言いながら、俺の顔をじっと見てくる。
 うるうるした目は、アクリルで出来たドア越しに「遊んで?」と顔を近付けてくるペットショップの子犬そっくりだった。


「……マナト、可愛い顔をしてもダメ。大丈夫、マナトなら出来る」
「でも……、恥ずかしくてやっぱり言えない……」
「まず、やってみよう。何でもそうだけど、やる前から諦めるのは良くない」
「ええ……。んっ! んんーっ……」

 性器を擦りあげる力を強めると、マナトの肩が震えた。スケスケの下着にはすでに先走りが滲んでいるかもしれない。
 早くそれを確かめて、舐めたい。そう思うと「早く」という気持ちが抑えられなくて、「待って! 言うからっ!」と焦ったようなマナトの声を聞いても手の動きが止められなかった。


「お……」
「うん……?」
「……おっぱいを、ペロペロしてください……」
「……えっ」
「……えっ? あれっ? 違った!?……待って! えっと、どうしよう…………あの、……おちんちんを…」

 そこまで言ってから「んんっ」と短い声をあげて、マナトが身を捩った。もっと強く触ってもらって、イきたいのか腰が前後に小さく揺れている。

「なるほど、そっちか……」

 そういうふうに、ねだらせた事もあった。そうか、さっきは恥ずかしくてなかなか口を開こうとしなかったのか、とようやく気が付くことが出来た。
 想定とは違うことを言われたものの、マナトが可愛すぎて、いよいよ我慢が出来なくなった。

「……マナト、ベッドの上においで」

 服を下ろしてから、そろそろとベッドに上がって来たマナトを押し倒して、うつ伏せの状態にさせてから、上からのし掛かった。


「ユウイチさん……?」
「マナト、今日はペロペロだけじゃなくて、他には?」
「……ま、マッサージの道具も付けてください」
「どこに?」
「俺の……、おっぱいに……?」

 うぅ、と呻くマナトの声が震えていた。恥ずかしくて見られたくないのか、シーツに顔を押し付けるようにしている。
 服を全部剥ぎ取ってパンツだけを身に付けた状態にしようとマナトの体を引っくり返すと、瞳が不安げに揺れていた。


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