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★おまじない
しおりを挟むここで俺の子供を産むんだよ、と聞かされた時、アオイの両目からボロボロと涙が溢れた。
「こ、ども……?」
「大丈夫……俺がちょっと手を加えれば、アオイの身体でも子供が産めるようになるさ」
「ひっ……ああっ……!ホタルっ……」
どうして俺はこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。アオイを繋ぎ止めておくには子供を産ませるのが一番に決まっている。
「あっ……!あ、あ……、う、ぐ、ううーっ……」
もっと深いところへ、と一度抜いた後、身体を貫くようにして一気に奥まで挿入すると、アオイが歯を食い縛りながら呻いた。
仰向けに寝ているアオイの足首を掴んだ後、膝を曲げてそのまま胸に押し当てるようにすると、繋がっている部分がよく見える。
俺が抜き挿しを繰り返すたびに、ジュプジュプと濡れた音をさせながら、アオイの窄まりが性器を受け入れた。
「あ、うっ……」
一切身体を気遣われることなく、乱暴に奥を突かれても、アオイはおまじないをかけられる前にした俺との約束を懸命に守ろうとしていた。
苦しそうに顔を歪めながら、アオイはほとんど声をあげずに達したようだった。
何度も強制的に絶頂に導かれたせいで、くたりとした陰茎から、ずいぶん色が薄くなった精液がたらりと垂れている。
激しく腰を打ち付けられて、奥へと一滴残らず繰り返し精液を注ぎ込まれたアオイの身体はボロボロだった。
強力なおまじないをかけているから、出血どころか、痛みを一切感じない身体にされたアオイはどこを触られても「気持ちいい」と大喜びして、しくしく泣く。
このおまじないは、かけられた相手が気を失うまで抱き潰して初めて本当の効果を発揮する。
アオイは意外に体力があり、何度も何度も意識を飛ばしかけては、ハッとした様子で目を見開いて、容赦なく襲ってくる快感に悶えながら頬を涙で濡らしていた。
「……怖い?」
「……ひ、ううっ……」
怖くない、と何度も首を横に振っているアオイの腹を擦ってやると、ほとんど力の入らなくなっていた身体がビクリと震えた。
「アオイとの間に子供が欲しい……」
アオイが気を失っても、孕むまではこの身体を絶対に離さない。
俺は、アオイが正直な気持ちを話せないことをわかっていながら、確かめるようにして「怖い?」「嫌だ?」と何度も聞きながら細い身体を犯し続けた。
「あ、あ……ああっ……!ほたる、ほたるっ……」
「気持ちいいです、もっとしてください」と絞り出すような声で言うアオイの目からはもう涙は流れていない。
カラカラに乾いた瞳は、何も映していなかった。
……「絶対使うな」と伝えられているおまじないには、ちゃんとそう言われる理由があった。
ほとんど呪いに近い強力なおまじないは、使われた人間と使ったニンゲンギツネの心を蝕んでいく。
何よりも大切だと、俺は確かに伝えたはずなのに、きっとアオイが気を失う頃には、そのことを忘れてしまっているだろう。
□
アオイとヒナタの仲直りは早かった。
「きっと俺にすごく怒っていると思う」とグズグズするアオイをヒナタの家まで引きずって連れて行くと、向こうも同じことを考えていたのか、目的の場所にたどり着く前にバッタリと会うことになった。
「あっ……」
二人とも気まずそうな顔をして黙り込んだものの、先にヒナタの方が「ゴメンな」と謝ると、アオイもそれに頷いた。
「ヒナタ、あの……酷い事を言ってごめんなさい……。
もうあんな事言わないから、また俺に勉強を教えてください」
「アオイ……」
当たり前だろ、俺こそ悪かったよ、ゴメンな、ゴメンなあ……と大声で話すヒナタは涙こそは流さないものの、ほとんど泣いていた。
「……また、一緒に勉強してくれる?」
「もちろん!俺はアオイの……先生代わりだからな!」
アオイが立派な人間の大人になれるよう俺が手伝ってやるんだ、とヒナタが胸を張るとアオイも笑った。
アオイが泣いたことや、ヒナタのアオイへの思いについて話したいことはいろいろあった。
けれど、二人が仲直りをしたことで穏やかに過ぎていく時間を失うのが惜しくて、どうしてもズルズルと先伸ばしにしてしまっている。
仲直りの後から、ヒナタはアオイにベタベタと触らなくなり、「お兄ちゃん」と呼ばせることも無くなった。
アオイが「数学は嫌だ。日本史がやりたい」と甘えても、「駄目だ」と突っぱねるようになり、金を貯めることの大切さや、最近、人間の世界を賑わせていること等、勉強以外のことも熱心に教えている。
「……もうアオイも15歳だ。立派な大人になれるように、大急ぎで勉強しないとな」
ヒナタの最近の口癖にアオイは「はい」と素直に返事をする。
始めの頃は、ヒナタが家に出入りしてアオイに会うことは気に入らなかった。
けれど、ニンゲンギツネであるヒナタが人間のアオイに勉強を教えるために、自分自身もよく勉強し一生懸命になっていることは明らかだった。
何よりも、アオイがヒナタに物を教えて貰うことを心から望み、楽しみにしている。
学校にほとんど通っていなかった、と言うアオイの失われた時間と学びの機会を取り戻すことは二度と出来ない。
それでも、何か与えられるものはないか、ほんの少しでもアオイに何かを残してやりたい、とヒナタは思っているに違いなかった。
そこまでヒナタのバカが熱心になっているうえに、アオイにとって必要な時間ならば仕方がない……と俺も考えられるようになり、ヒナタとアオイが二人で勉強することについては、以前のように腹が立ったり、ソワソワしたりしなくなった。
□
「……じゃあ、行ってくる。ヒナタ、アオイのことは頼んだからな」
「わかったよ。バカじゃないんだ。何回も同じことを言うな!」
その日、俺は用事を頼まれていて、人間嫌いの年老いたニンゲンギツネの夫婦の家に行かなければならなかった。
人間を怖がって、誰も足を踏み入れないような里の奥で隠れるようにして暮らしている老夫婦の家にアオイを連れて行くわけにはいかず、勉強を教えに来たヒナタに留守番を頼むことになった。
「いってらっしゃい」
気を付けてね、と微笑むアオイに手を振ってから、俺は家を後にした。
目が見えづらくなってきた、という老夫婦に医者の処方した目薬を渡す、という単純なおつかいだったにも関わらず、家に顔を出した途端、あれこれと用事を頼まれたせいで帰りがずいぶん遅くなってしまった。
帰り道の途中からは、雨が降ってきたせいで道がぬかるみ、それがとても不快だった。
こんなに遅くなってしまって、あの二人はどうしているだろう、と気持ちばかりが焦る。
アオイはお腹を空かせているだろうし、ヒナタは「どこで油を売ってんだ!」とイライラしているに違いなかった。
ヒナタのバカがちゃんと考えて、アオイに食事を与えているといいが……と思いながら家へ着く頃には辺りは真っ暗になっていた。
戸を開けた途端、すぐに何かがおかしい、と気が付いた。
部屋の空気が重い。それに、微かに何かが焦げたような匂いもする。
何かあったに違いない、とゾッとして全身に鳥肌がたつ。
土間から姿は見えないものの、二人の気配はする。アオイ、と中へ向かって呼び掛けると、襖を開けて出てきたのはヒナタの方だった。
「アオイは?」
「……奥の方で寝てる。お前のことを待ちくたびれたみたいだ」
「…………そうか」
だとしても、この匂いと息苦しくなるようなこの空気はなんなんだ。
コイツは何も感じないのか?とヒナタをみていると、目が会った。
「…………なあ、ホタル」
「なんだよ」
「俺……、アオイの心の中を覗いてしまった」
「……なんだって?」
……人間の心を覗くことはニンゲンギツネなら、子供の頃、親から「絶対にやってはいけない」と一度は言われていることだ。
理由は、心を覗いてしまうと、知らなくてもいいことを知ってしまい、その人間に執着するあまり、より強力なおまじないをニンゲンギツネが使うようになるからだ……と言われている。
「見なければ、よかった……」
なんで、そんなことを、と俺が詰め寄るより先に、声を震わせてそう言った後、ヒナタは静かに泣いた。
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