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★ノーパン
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生田さんが普段使っているであろうベッドは、シーツがひんやりとしていて、清潔でサラサラした肌触りだった。
パンツだけしか身に付けていない状態で仰向けに寝転ぶと、ニュッと生田さんがこっちを覗き込んできた。
「あ、あの……」
「大丈夫。鈴井さんは何もしなくていいよ」
何かしないといけないんじゃないかと不安に思っているわけではなく、何かされるんじゃないかということの方がよっぽど心配だった。
でも、バイトは減らしたい。たった一時間我慢すれば、二万円も貰える。
だから、頷いた後、ただじっと身を固くして生田さんの様子を伺っていた。
生田さんは俺の顔をじろじろと眺めた後、「可愛いな」「口がアルファベットの「v」に似てる」と独り言のように呟いて興奮していた。……俺の口は口角がほんの少し上がっているように見えるだけで、べつにアルファベットになんか似ていない。
無理やり記号に例えて喜ぶなんて、俺の理解出来る範疇を越えていた。
「本当に可愛い顔をしているな……もうちょっと気が強そうな方が好みだけど……。目が大きくてくりくりしているところがいい」
「鈴井さん、小型犬みたいだって言われない?」と聞かれたけど、好みじゃないと言われたことに「雇い主だからって失礼だ!」とムッとしたのと、そんなことにムッとした自分にも腹が立ったので、聞こえないふりをして無視した。
「口を開けてごらん」とか「こっちを睨んでごらん」とか、何のためにそうさせるのかサッパリ理解出来ないことをたくさんやらされた。
「細いけど、意外と腕はがっしりしてるね。……何かスポーツとかしてた?」
「あの、中学までは野球をしてて…ポ、ポジションはショート…。高校の時は、倉庫の仕分けのアルバイトを……」
そして今は、工務店とピザ屋の掛け持ちです、と伝えると、生田さんは「大変だね」と頷いた。
その後は、仕事がキツイかとか、週にどのくらいアルバイトに行くのかとか、わりと普通のことを聞かれたから、寝転んだまま素直に答えた。
散々質問した後、「もう大人の身体だな」とボソッと生田さんが呟いたのが聞こえた。
「生田さん、成人してるし、大人の身体なのは当たり前です……」
「……鈴井さん、違うよ」
なぜか生田さんは冷ややかな目で、舐めるように俺の身体を上から下まで眺めた。
「……セックス出来る身体かどうかって意味だよ」
「ひっ…」
「鈴井さん、冗談冗談」
はは、と生田さんは短く笑っていたけど、蛇みたいな目で俺の身体をじっとりと見ていたし、「セックス」という時の声は上擦っていて、どう考えても本気で言っているとしか思えなかった。
何百万円払うと言われたって、セックスだけは絶対にしちゃ駄目だ、と心の中で決意した。だって、怖すぎる。
生田さんはそのまま視線を俺の下半身に移した。
「鈴井さん、近くで見ても?」
「……だ、ダメですっ」
「少しだけ。触ったりしないから」
「……じゃあ、少しの間なら」
どこを近くで見たいのかは聞かなくても分かっていた。
生田さんは「ほう」とパンツ越しの股間を一生懸命観察している。
念力を送れば勃起しているところが見られるんじゃないかと信じていそうなくらい、真剣な顔をしていた。
もちろんそんなことがあり得るわけもなく、見られれば見られる程、「この人も俺も何をやっているんだろう」と、俺の心は冷えていった。
「鈴井さん」
「はい…」
「前から思っていたけど…意外に派手なパンツを履いてるのはなぜ?」
「えっ」
急にそんなことを言われて混乱した。べつに俺はいつもすごく奇抜なデザインのパンツを履いているというわけではない。
今日身に付けているようなマルチカラーのボーダーや、ドットやチェック……無地の黒だけじゃなくて、そういう柄物を着ることもあるというだけだ。
それに「前から」という言い方もなんだか引っ掛かる。
「……ま、前からって?」
「ああ、うちに鈴井さんのパンツが飛ばされてきたことがあったでしょう。
あの時、隣の子、真面目そうなのに意外と派手なパンツを履いているなあと思って」
あの、すごく恥ずかしいと感じた日のことだ、と思い出すと顔がカアッと熱くなった。
「……べつに、どんなパンツを履こうが、俺の自由です…」
「俺の自由、か……それもそうだ」
生田さんは何かしばらく考えているようだった。生意気なものの言い方だと思われたんだろうかとほんの少し焦ったけど、目が合うと「今度でいいから、いらなくなったパンツ売ってくれない?」と気色悪いことを言ってきたので大丈夫そうだった。
「う、売りません……」
「鈴井さん、こんなことを言われて俺が気持ち悪いか?」
生田さんの目はドロリとしていて、光を失っていた。
「…正直に言ってごらん」
「……き、気持ち悪いし、怖いです」
生田さんは満足そうにニタッと笑った。
「……鈴井さん少しだけ触らせてくれないか」
いくら念力を送ったって勃起をするわけがない、ということに気が付いたのか、とんでもないことを生田さんが言い出した。
「ダメダメダメ!絶対嫌です」
「あと2万円払う。ほんの少し触らせてくれたらそれでいいから」
「えっ?!ええと、どうしようかな…」
「鈴井さん、迷っているなら、まずは何でもやってみた方がいい。やらないで後悔するよりも、やって後悔した方がいい」
「ええ~っ!?」
どう考えてもそれって「女優になる夢を追って上京する」とか「思い切って告白する」とかそういう時に言う言葉じゃないかと思うけど、生田さんは本気だった。
「えー…たぶん、俺は後悔しないと思うんですけど……それに、今日はチェックするだけだって……」
「鈴井さん、そう言わないで。途中でやめて欲しければ「ストップ」と言えばいいだけだし。まずは、やってみよう。……俺も土下座するから」
「もう!土下座はやめてくださいってば!……わ、わかりました。本当にちょっとだけですよ。絶対ですからね……」
ちょっと、がどのくらいを指すのか自分でもわからないけれど、「嘘ついたらダメですからね!」と念を押してから、生田さんの部屋の天井を眺めることに集中した。
……男の人に自分の性器を触られているところを直視する勇気が出なかった。
布越しではあるけど、温かいもので性器がそっと包まれる。大丈夫、まだ大丈夫……と思いながら唇を噛んだ。
時給として二万円も受け取っているし、買って貰った一時間は、生田さんを満足させないといけない。
本当に嫌なこと以外は、ギリギリまで我慢して受け入れる。だって、どうしたって「ストップ」を言うと空気は冷えてしまう。
生田さん満足してるかな、と様子を伺うと、意外にも、穏やかで優しい顔をしていた。
「鈴井さん、添い寝してもいいかな」
「え、ああ、添い寝くらいなら…」
仰向けで寝る俺の側に生田さんが横になった。俺の方に身体を向けた生田さんの片足が絡み付いてくる。
生田さんの鋭く整った顔が、俺の顔のすぐ近くにあって、股間もずっとまさぐられている。
何か反応しないといけないのに、緊張してカチコチに固まってしまう。どこにも意識を集中させることが出来ない。顔も身体も熱い。
学校の実習でうっかりミスをして「鈴井ー」と友達にからかわれた時みたいに、耳まで真っ赤になっているに違いなかった。
「んっ」
親指で先端を撫で回される。焦らすような動きに思わず声が漏れる。
もっと生田さんの触りたいように触ってくるものだと思っていたのに、性感を煽るような、ゆっくりと優しく、けれど弄ばれるような指の動きに腰が浮いた。
「あっ、ちょっと、まって……」
女の人とは全然違う大きな手に性器が覆われる。そのまま、手のひらが裏筋を上下にしごいていく。気持ちいい。
はじめはただ触れているだけ、といった弱い力だったのに、少しずつ少しずつ時間をかけて強く速くなっていく手の動きに、頭がぼうっとしてくる。
時々、思い出したかのように先端を指先で弾かれて、その度に情けない声が出てしまう。
はじめて触るはずなのに、どうしてこんなに俺が気持ちいいと感じる触り方をこの人は知っているんだろう、と不思議に思う程だった。
「あ、あの、やっぱり、やめてください……」
「うん、うん……。出したらやめるから……」
「ええっ?……あ、ちょっと…だめです……いくたさ、あっ」
「だめ」と言っていないと、「もっと強くしてください」と口走ってしまいそうだった。頭では感じているところを見せるのは恥ずかしい、駄目だと分かっているのに、性器はどんどん固くなっていて、熱を吐き出すのを今か今かと待っている。
生田さんの手の動きもどんどん大胆になってきて、つられるようにして、自分の内腿にどんどん力が入っているのがわかる。
「や、あ、んっ……やだあ、出したくない…やめてください……」
「鈴井さん、出してごらん」
「や、あっ、もう……出ちゃう…」
射精した瞬間から全部出しきるまでの間、生田さんは俺の性器から手を離さなかった。精液を吐き出すために、性器がピク、ピクと動くのを手のひらで感じているようだった。
ハアハアと肩で呼吸をしながら、パンツの湿った感触を不快に思っていると、「鈴井さん」と生田さんに呼ばれて、慌てて声のする方に顔を向けた。
「こんなの、酷いです……!あんなふうに触られたらっ……」
気持ちよくって、抵抗できなくなる……そう言いそうになって慌てて口を閉じた。
「鈴井さん、気持ち良かった?」
「し、知りません……。あんなふうに、長くしつこく触られたことなんかないし……」
「……鈴井さん、まだ何も知らないんだな…最高だ…」
ほとんど聞こえないくらいの声量だったから、一人言なんだろうけど、生田さんにそう言われて、いえ、全然知ってます、という意味を込めて首を横に振った。オナニーだってするし、セックスだってしたことはある。
ただ、こんなふうにねちっこく身体を触られたことがないだけだ。
だから……気持ちが悪くて、怖いのに、なんだか流されるようにして、射精するところを見られてしまった。
その後は、洗面台をお借りしてコソコソとパンツを洗った。俺がパンツを洗っている間、生田さんもフラッとトイレに消えていった。
聞いて確かめたわけじゃないけど、ナニをしてるかが嫌でも分かって、意識なんかしたくないから、必死でパンツを洗うのに専念した。
パンツを洗って返す、と生田さんからはしつこく言われたけど、絶対にぶっかけるとか、匂いを嗅ぐとかそういうことをされそうだから、キッパリ断った。
「……ノーパンで帰ります。お邪魔しました」
「なんだって!」
鈴井さん!やっぱり天才なのか?と叫んでいるのが聞こえたけど、無視して帰った。
帰ってから貰った封筒を確認したら、五万円入っていた。先に貰った時給と合わせたら七万円だ。
多い?とも思ったけど、生田さんは「頑張ってくれたから、チップを入れといた」と言っていた。
俺、頑張ったのかな?と自分では少し自信が無かった。わりと、俺の自然な反応で喜んでくれてはいるようだけど、なんだか、こんなにお金を貰ってしまっていいのかな……という気になる。
仕方ないから次に会う時は、チップのお礼に少しサービスするか…という気になった。
パンツだけしか身に付けていない状態で仰向けに寝転ぶと、ニュッと生田さんがこっちを覗き込んできた。
「あ、あの……」
「大丈夫。鈴井さんは何もしなくていいよ」
何かしないといけないんじゃないかと不安に思っているわけではなく、何かされるんじゃないかということの方がよっぽど心配だった。
でも、バイトは減らしたい。たった一時間我慢すれば、二万円も貰える。
だから、頷いた後、ただじっと身を固くして生田さんの様子を伺っていた。
生田さんは俺の顔をじろじろと眺めた後、「可愛いな」「口がアルファベットの「v」に似てる」と独り言のように呟いて興奮していた。……俺の口は口角がほんの少し上がっているように見えるだけで、べつにアルファベットになんか似ていない。
無理やり記号に例えて喜ぶなんて、俺の理解出来る範疇を越えていた。
「本当に可愛い顔をしているな……もうちょっと気が強そうな方が好みだけど……。目が大きくてくりくりしているところがいい」
「鈴井さん、小型犬みたいだって言われない?」と聞かれたけど、好みじゃないと言われたことに「雇い主だからって失礼だ!」とムッとしたのと、そんなことにムッとした自分にも腹が立ったので、聞こえないふりをして無視した。
「口を開けてごらん」とか「こっちを睨んでごらん」とか、何のためにそうさせるのかサッパリ理解出来ないことをたくさんやらされた。
「細いけど、意外と腕はがっしりしてるね。……何かスポーツとかしてた?」
「あの、中学までは野球をしてて…ポ、ポジションはショート…。高校の時は、倉庫の仕分けのアルバイトを……」
そして今は、工務店とピザ屋の掛け持ちです、と伝えると、生田さんは「大変だね」と頷いた。
その後は、仕事がキツイかとか、週にどのくらいアルバイトに行くのかとか、わりと普通のことを聞かれたから、寝転んだまま素直に答えた。
散々質問した後、「もう大人の身体だな」とボソッと生田さんが呟いたのが聞こえた。
「生田さん、成人してるし、大人の身体なのは当たり前です……」
「……鈴井さん、違うよ」
なぜか生田さんは冷ややかな目で、舐めるように俺の身体を上から下まで眺めた。
「……セックス出来る身体かどうかって意味だよ」
「ひっ…」
「鈴井さん、冗談冗談」
はは、と生田さんは短く笑っていたけど、蛇みたいな目で俺の身体をじっとりと見ていたし、「セックス」という時の声は上擦っていて、どう考えても本気で言っているとしか思えなかった。
何百万円払うと言われたって、セックスだけは絶対にしちゃ駄目だ、と心の中で決意した。だって、怖すぎる。
生田さんはそのまま視線を俺の下半身に移した。
「鈴井さん、近くで見ても?」
「……だ、ダメですっ」
「少しだけ。触ったりしないから」
「……じゃあ、少しの間なら」
どこを近くで見たいのかは聞かなくても分かっていた。
生田さんは「ほう」とパンツ越しの股間を一生懸命観察している。
念力を送れば勃起しているところが見られるんじゃないかと信じていそうなくらい、真剣な顔をしていた。
もちろんそんなことがあり得るわけもなく、見られれば見られる程、「この人も俺も何をやっているんだろう」と、俺の心は冷えていった。
「鈴井さん」
「はい…」
「前から思っていたけど…意外に派手なパンツを履いてるのはなぜ?」
「えっ」
急にそんなことを言われて混乱した。べつに俺はいつもすごく奇抜なデザインのパンツを履いているというわけではない。
今日身に付けているようなマルチカラーのボーダーや、ドットやチェック……無地の黒だけじゃなくて、そういう柄物を着ることもあるというだけだ。
それに「前から」という言い方もなんだか引っ掛かる。
「……ま、前からって?」
「ああ、うちに鈴井さんのパンツが飛ばされてきたことがあったでしょう。
あの時、隣の子、真面目そうなのに意外と派手なパンツを履いているなあと思って」
あの、すごく恥ずかしいと感じた日のことだ、と思い出すと顔がカアッと熱くなった。
「……べつに、どんなパンツを履こうが、俺の自由です…」
「俺の自由、か……それもそうだ」
生田さんは何かしばらく考えているようだった。生意気なものの言い方だと思われたんだろうかとほんの少し焦ったけど、目が合うと「今度でいいから、いらなくなったパンツ売ってくれない?」と気色悪いことを言ってきたので大丈夫そうだった。
「う、売りません……」
「鈴井さん、こんなことを言われて俺が気持ち悪いか?」
生田さんの目はドロリとしていて、光を失っていた。
「…正直に言ってごらん」
「……き、気持ち悪いし、怖いです」
生田さんは満足そうにニタッと笑った。
「……鈴井さん少しだけ触らせてくれないか」
いくら念力を送ったって勃起をするわけがない、ということに気が付いたのか、とんでもないことを生田さんが言い出した。
「ダメダメダメ!絶対嫌です」
「あと2万円払う。ほんの少し触らせてくれたらそれでいいから」
「えっ?!ええと、どうしようかな…」
「鈴井さん、迷っているなら、まずは何でもやってみた方がいい。やらないで後悔するよりも、やって後悔した方がいい」
「ええ~っ!?」
どう考えてもそれって「女優になる夢を追って上京する」とか「思い切って告白する」とかそういう時に言う言葉じゃないかと思うけど、生田さんは本気だった。
「えー…たぶん、俺は後悔しないと思うんですけど……それに、今日はチェックするだけだって……」
「鈴井さん、そう言わないで。途中でやめて欲しければ「ストップ」と言えばいいだけだし。まずは、やってみよう。……俺も土下座するから」
「もう!土下座はやめてくださいってば!……わ、わかりました。本当にちょっとだけですよ。絶対ですからね……」
ちょっと、がどのくらいを指すのか自分でもわからないけれど、「嘘ついたらダメですからね!」と念を押してから、生田さんの部屋の天井を眺めることに集中した。
……男の人に自分の性器を触られているところを直視する勇気が出なかった。
布越しではあるけど、温かいもので性器がそっと包まれる。大丈夫、まだ大丈夫……と思いながら唇を噛んだ。
時給として二万円も受け取っているし、買って貰った一時間は、生田さんを満足させないといけない。
本当に嫌なこと以外は、ギリギリまで我慢して受け入れる。だって、どうしたって「ストップ」を言うと空気は冷えてしまう。
生田さん満足してるかな、と様子を伺うと、意外にも、穏やかで優しい顔をしていた。
「鈴井さん、添い寝してもいいかな」
「え、ああ、添い寝くらいなら…」
仰向けで寝る俺の側に生田さんが横になった。俺の方に身体を向けた生田さんの片足が絡み付いてくる。
生田さんの鋭く整った顔が、俺の顔のすぐ近くにあって、股間もずっとまさぐられている。
何か反応しないといけないのに、緊張してカチコチに固まってしまう。どこにも意識を集中させることが出来ない。顔も身体も熱い。
学校の実習でうっかりミスをして「鈴井ー」と友達にからかわれた時みたいに、耳まで真っ赤になっているに違いなかった。
「んっ」
親指で先端を撫で回される。焦らすような動きに思わず声が漏れる。
もっと生田さんの触りたいように触ってくるものだと思っていたのに、性感を煽るような、ゆっくりと優しく、けれど弄ばれるような指の動きに腰が浮いた。
「あっ、ちょっと、まって……」
女の人とは全然違う大きな手に性器が覆われる。そのまま、手のひらが裏筋を上下にしごいていく。気持ちいい。
はじめはただ触れているだけ、といった弱い力だったのに、少しずつ少しずつ時間をかけて強く速くなっていく手の動きに、頭がぼうっとしてくる。
時々、思い出したかのように先端を指先で弾かれて、その度に情けない声が出てしまう。
はじめて触るはずなのに、どうしてこんなに俺が気持ちいいと感じる触り方をこの人は知っているんだろう、と不思議に思う程だった。
「あ、あの、やっぱり、やめてください……」
「うん、うん……。出したらやめるから……」
「ええっ?……あ、ちょっと…だめです……いくたさ、あっ」
「だめ」と言っていないと、「もっと強くしてください」と口走ってしまいそうだった。頭では感じているところを見せるのは恥ずかしい、駄目だと分かっているのに、性器はどんどん固くなっていて、熱を吐き出すのを今か今かと待っている。
生田さんの手の動きもどんどん大胆になってきて、つられるようにして、自分の内腿にどんどん力が入っているのがわかる。
「や、あ、んっ……やだあ、出したくない…やめてください……」
「鈴井さん、出してごらん」
「や、あっ、もう……出ちゃう…」
射精した瞬間から全部出しきるまでの間、生田さんは俺の性器から手を離さなかった。精液を吐き出すために、性器がピク、ピクと動くのを手のひらで感じているようだった。
ハアハアと肩で呼吸をしながら、パンツの湿った感触を不快に思っていると、「鈴井さん」と生田さんに呼ばれて、慌てて声のする方に顔を向けた。
「こんなの、酷いです……!あんなふうに触られたらっ……」
気持ちよくって、抵抗できなくなる……そう言いそうになって慌てて口を閉じた。
「鈴井さん、気持ち良かった?」
「し、知りません……。あんなふうに、長くしつこく触られたことなんかないし……」
「……鈴井さん、まだ何も知らないんだな…最高だ…」
ほとんど聞こえないくらいの声量だったから、一人言なんだろうけど、生田さんにそう言われて、いえ、全然知ってます、という意味を込めて首を横に振った。オナニーだってするし、セックスだってしたことはある。
ただ、こんなふうにねちっこく身体を触られたことがないだけだ。
だから……気持ちが悪くて、怖いのに、なんだか流されるようにして、射精するところを見られてしまった。
その後は、洗面台をお借りしてコソコソとパンツを洗った。俺がパンツを洗っている間、生田さんもフラッとトイレに消えていった。
聞いて確かめたわけじゃないけど、ナニをしてるかが嫌でも分かって、意識なんかしたくないから、必死でパンツを洗うのに専念した。
パンツを洗って返す、と生田さんからはしつこく言われたけど、絶対にぶっかけるとか、匂いを嗅ぐとかそういうことをされそうだから、キッパリ断った。
「……ノーパンで帰ります。お邪魔しました」
「なんだって!」
鈴井さん!やっぱり天才なのか?と叫んでいるのが聞こえたけど、無視して帰った。
帰ってから貰った封筒を確認したら、五万円入っていた。先に貰った時給と合わせたら七万円だ。
多い?とも思ったけど、生田さんは「頑張ってくれたから、チップを入れといた」と言っていた。
俺、頑張ったのかな?と自分では少し自信が無かった。わりと、俺の自然な反応で喜んでくれてはいるようだけど、なんだか、こんなにお金を貰ってしまっていいのかな……という気になる。
仕方ないから次に会う時は、チップのお礼に少しサービスするか…という気になった。
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