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29.セックスのこと
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「ゴメンゴメン!嘘だよ、冗談だって!」
かわいそうになるくらい気まずそうにしていたから、結局、軽口を叩いたことを謝って宥めることになった。……本題に入る前に俺はいったい何を謝っているんだろう。
「……べつに、そのことについては、気にしてない。俺は、男だし、お前は女が好きなんだろ……。それは仕方がないことだから……」
いや、めちゃくちゃ声震えてるし気にしてるじゃん……と言いたかったけど、せっかく先生が喋ってくれる気になったみたいだから、我慢した。
「あの、俺、先生のことなんとかしたいと思って……でも、それってたぶん100パーセントの善意じゃなかった。
先生に頼られてるとか、守ってあげたいとか、そういうので男の甲斐性?っていうの?それを確かめて満足してたかも……ごめん、本当にごめん」
「……ああ」
そういうの馴れてますから、という意味が込められていそうな相槌だった。
「先生のこと全然分からないのに、性欲に任せてセックスすんのは違うかなと思ってグズグズしてたら、いざそういう雰囲気になった時に、先生が男だってことに引いて躊躇するようになってた……。
そうしたら、ますます焦って、全然駄目で……」
「……気にしないでいい。べつに、女の人になら、反応するだろ。……お前は大丈夫だ」
「いや!全然、大丈夫じゃない!というか、何も出来ないのに今まで軽々しく「大丈夫」とか言ってごめん。
先生のこと助けられるような大層な人間じゃないし、正直言って先生のお母さんは怖すぎるけど……でも、一緒にいたい。
なんにもしてあげられないけど、一緒にいよう」
やっぱり「俺のこと頼って」とか「俺が絶対、先生のことを守る」とか、そういうことは言えなかった。
これほどまでに、カッコ悪くてダサいことを付き合っている人に言ったのは初めてだった。
捲し立てるように話したのと、羞恥で頬が熱かった。
ヤベエ、まだ言ってないことがあった、と思い出して、「あっ!」と俺が声を上げると先生の肩がビクッと揺れた。
「あと、俺、先生がかわいそうじゃないと興奮しないっぽいんだけど!先生が飯食べないとか、ガチで悩んでるとか、そういうのは俺も嫌だから!
だから……えっと、セックスの時だけはそういうプレイにお付き合いしてくれると助かる!」
「は……」
「ご、ごめん……。いろいろネットで調べたらそういう結論になった……」
「……何を調べたんだ?」
「ええ……それ聞く?」
この人ほんとデリカシー無いな、と思ったけど、「教えろ」としつこいからしょうがなく答えた。
「べつに、そんな面白いことは調べてないよ……「セックス 立たない」とかそういうことを……」
意外とネットの海は俺のような人間には優しかった。
「疲れてても緊張してても立たなくなる」、「考えすぎると、ますます立たなくなる」、「まずは雰囲気作りから」と言ったアドバイスは山程あった。
というか、男どうしでセックスする人の中には挿入しない人もフツーに存在していたし、「ペッティングだけでも満足出来れば、それもセックスだと思う」という意見もあった。
それで、もう一回先生とのセックスについて一人で考えた。
今までは、もしも、やってみて立たなかったらどうしよう、それですごくガッカリさせたらどうしよう、という不安で頭がいっぱいだった。
そもそも、男である先生とのセックスの方法がよく分からないうえに、同じ男の身体とはいえ、セックスするとなると未知の部分が多すぎる。
どこに入れればいいかということについては、分かっているけど、上手く出来るのかとか、痛くないんだろうかとか、そういう疑問はどんどん湧いてきた。
実際調べてみたけど、男どうしでそういうことをする時は本当に慎重に事を運ばないといけないようだった。
「痛い」と言われれば即中断、入ったところで「痛い、こんなことしたくない」と受け入れる側が、そう感じることだって珍しいことじゃない。
俺が、先生の身体を前にしても変なプレッシャーを感じなくなるのも、いつか先生とセックスをするのも、両方とも長い時間をかけて進んでいくしかなかった。
今日、先生の好きな漫画を初めて知ったみたいに、一つ一つ確かめて探っていく。どれだけ時間がかかるかは分からないけど。
「……そんなことを言うために、わざわざ会いに来たのか」
「え?あ、うん……まあ、そうだね……」
「はあ……」
「アホだ」と心の底から思っているのか、デッカイため息を吐かれた。
「……俺も四回くらいは、お前を試すような事をした…悪かった」
「どの時のこと?」
「……知らん」
「あ、分かった!乳首見せるかどうかってなった時のことでしょ!あれはズルかったよねー」
「……違う」
「いやいや、絶対そうでしょ!あの時、俺、本気で先生の乳首見たいって思ったもん。
そこまで頑なに隠すなんて、どんな乳首してんのかなって俄然気になってさー」
「……お前、電車賃渡すから今からでも帰れ。それか野宿しろ」
「なんでー?!」
側にいる先生にガバッと抱き着くと、細い身体がぐらっと揺れた。慌ててぎゅっと腕に力を込めると、ほんの少し先生が笑った。
「ねえ、先生、今日泊めてよー。迷惑かけないからさー。お願い!」
「はあ……」
「ね、ね、お願い」と肩に顎を乗せて、すり寄っていたら渋々了承してくれた。
「……それで、どうやったら反応する?」
「えっ」
「……お前の求めてるかわいそうって、なんだ?」
「それは……ま、まだ分からない。そっち方面の趣味は勉強してないから……、ちょっと触るか舐めるかして貰えたら……とりあえずイケるかも……」
勉強してないというか、そもそも全然そういう趣味はない。でも、さっき先生にも言ったけど「乳首を見せると言ったけど見せない」みたいなのは、わりと追い掛けたくなるから、そういうのをお願いしたかった。
先生は「知らん」と言って、すっとぼけていたけど、あれは100パーセント狙ってやっていたに違いない。
そういえば、「触るか舐めるかして貰えたら」と言ったけど、やっぱり嫌そうな顔をしてるんだろうか…とこわごわ先生の様子を確認すると、先生も何か言いたそうにしていた。
「なに?」
「……いや。なんだ、そんなことかと思って」
「えっ!?」
前に「ハヤトさんの彼女めちゃくちゃどエロいと思いますけど」とリョーちゃんが言っていたのを思い出した。
えっ?でも、彼氏も彼女もいたこと無いんだよね?と前に聞いたのを思い出したし、そう言った時の先生はべつに嘘をついているようには見えなかった。
「……そんなことってなに?」
ほんの少しだけ先生が顔を強張らせた。しまった、と思ったであろうことを隠しきれていなかった。
「……先生、本当はどエロかったりする?」
「……知らん」
「……確かめていい?」
「確かめるって、な」
先生が「なに」と言い切るまで待たずに、無理やりキスした。もうこの後、怒った先生にビンタされて、そのまま家から出されてもいい、とさえ思った。
先生とキスをしたのはずいぶん久しぶりに感じられた。そもそも、そんなに俺とは回数を経験してないはずなのに先生はやっぱり手慣れていた。
どういうふうに舌を動かせばいいのかも分かっているし、自分が引くべき所と、押すべき所の緩急の付け方も上手かった。
やっぱりどエロかったんだ…と思うと、ムラッとしてもう止められなかった。
かわいそうになるくらい気まずそうにしていたから、結局、軽口を叩いたことを謝って宥めることになった。……本題に入る前に俺はいったい何を謝っているんだろう。
「……べつに、そのことについては、気にしてない。俺は、男だし、お前は女が好きなんだろ……。それは仕方がないことだから……」
いや、めちゃくちゃ声震えてるし気にしてるじゃん……と言いたかったけど、せっかく先生が喋ってくれる気になったみたいだから、我慢した。
「あの、俺、先生のことなんとかしたいと思って……でも、それってたぶん100パーセントの善意じゃなかった。
先生に頼られてるとか、守ってあげたいとか、そういうので男の甲斐性?っていうの?それを確かめて満足してたかも……ごめん、本当にごめん」
「……ああ」
そういうの馴れてますから、という意味が込められていそうな相槌だった。
「先生のこと全然分からないのに、性欲に任せてセックスすんのは違うかなと思ってグズグズしてたら、いざそういう雰囲気になった時に、先生が男だってことに引いて躊躇するようになってた……。
そうしたら、ますます焦って、全然駄目で……」
「……気にしないでいい。べつに、女の人になら、反応するだろ。……お前は大丈夫だ」
「いや!全然、大丈夫じゃない!というか、何も出来ないのに今まで軽々しく「大丈夫」とか言ってごめん。
先生のこと助けられるような大層な人間じゃないし、正直言って先生のお母さんは怖すぎるけど……でも、一緒にいたい。
なんにもしてあげられないけど、一緒にいよう」
やっぱり「俺のこと頼って」とか「俺が絶対、先生のことを守る」とか、そういうことは言えなかった。
これほどまでに、カッコ悪くてダサいことを付き合っている人に言ったのは初めてだった。
捲し立てるように話したのと、羞恥で頬が熱かった。
ヤベエ、まだ言ってないことがあった、と思い出して、「あっ!」と俺が声を上げると先生の肩がビクッと揺れた。
「あと、俺、先生がかわいそうじゃないと興奮しないっぽいんだけど!先生が飯食べないとか、ガチで悩んでるとか、そういうのは俺も嫌だから!
だから……えっと、セックスの時だけはそういうプレイにお付き合いしてくれると助かる!」
「は……」
「ご、ごめん……。いろいろネットで調べたらそういう結論になった……」
「……何を調べたんだ?」
「ええ……それ聞く?」
この人ほんとデリカシー無いな、と思ったけど、「教えろ」としつこいからしょうがなく答えた。
「べつに、そんな面白いことは調べてないよ……「セックス 立たない」とかそういうことを……」
意外とネットの海は俺のような人間には優しかった。
「疲れてても緊張してても立たなくなる」、「考えすぎると、ますます立たなくなる」、「まずは雰囲気作りから」と言ったアドバイスは山程あった。
というか、男どうしでセックスする人の中には挿入しない人もフツーに存在していたし、「ペッティングだけでも満足出来れば、それもセックスだと思う」という意見もあった。
それで、もう一回先生とのセックスについて一人で考えた。
今までは、もしも、やってみて立たなかったらどうしよう、それですごくガッカリさせたらどうしよう、という不安で頭がいっぱいだった。
そもそも、男である先生とのセックスの方法がよく分からないうえに、同じ男の身体とはいえ、セックスするとなると未知の部分が多すぎる。
どこに入れればいいかということについては、分かっているけど、上手く出来るのかとか、痛くないんだろうかとか、そういう疑問はどんどん湧いてきた。
実際調べてみたけど、男どうしでそういうことをする時は本当に慎重に事を運ばないといけないようだった。
「痛い」と言われれば即中断、入ったところで「痛い、こんなことしたくない」と受け入れる側が、そう感じることだって珍しいことじゃない。
俺が、先生の身体を前にしても変なプレッシャーを感じなくなるのも、いつか先生とセックスをするのも、両方とも長い時間をかけて進んでいくしかなかった。
今日、先生の好きな漫画を初めて知ったみたいに、一つ一つ確かめて探っていく。どれだけ時間がかかるかは分からないけど。
「……そんなことを言うために、わざわざ会いに来たのか」
「え?あ、うん……まあ、そうだね……」
「はあ……」
「アホだ」と心の底から思っているのか、デッカイため息を吐かれた。
「……俺も四回くらいは、お前を試すような事をした…悪かった」
「どの時のこと?」
「……知らん」
「あ、分かった!乳首見せるかどうかってなった時のことでしょ!あれはズルかったよねー」
「……違う」
「いやいや、絶対そうでしょ!あの時、俺、本気で先生の乳首見たいって思ったもん。
そこまで頑なに隠すなんて、どんな乳首してんのかなって俄然気になってさー」
「……お前、電車賃渡すから今からでも帰れ。それか野宿しろ」
「なんでー?!」
側にいる先生にガバッと抱き着くと、細い身体がぐらっと揺れた。慌ててぎゅっと腕に力を込めると、ほんの少し先生が笑った。
「ねえ、先生、今日泊めてよー。迷惑かけないからさー。お願い!」
「はあ……」
「ね、ね、お願い」と肩に顎を乗せて、すり寄っていたら渋々了承してくれた。
「……それで、どうやったら反応する?」
「えっ」
「……お前の求めてるかわいそうって、なんだ?」
「それは……ま、まだ分からない。そっち方面の趣味は勉強してないから……、ちょっと触るか舐めるかして貰えたら……とりあえずイケるかも……」
勉強してないというか、そもそも全然そういう趣味はない。でも、さっき先生にも言ったけど「乳首を見せると言ったけど見せない」みたいなのは、わりと追い掛けたくなるから、そういうのをお願いしたかった。
先生は「知らん」と言って、すっとぼけていたけど、あれは100パーセント狙ってやっていたに違いない。
そういえば、「触るか舐めるかして貰えたら」と言ったけど、やっぱり嫌そうな顔をしてるんだろうか…とこわごわ先生の様子を確認すると、先生も何か言いたそうにしていた。
「なに?」
「……いや。なんだ、そんなことかと思って」
「えっ!?」
前に「ハヤトさんの彼女めちゃくちゃどエロいと思いますけど」とリョーちゃんが言っていたのを思い出した。
えっ?でも、彼氏も彼女もいたこと無いんだよね?と前に聞いたのを思い出したし、そう言った時の先生はべつに嘘をついているようには見えなかった。
「……そんなことってなに?」
ほんの少しだけ先生が顔を強張らせた。しまった、と思ったであろうことを隠しきれていなかった。
「……先生、本当はどエロかったりする?」
「……知らん」
「……確かめていい?」
「確かめるって、な」
先生が「なに」と言い切るまで待たずに、無理やりキスした。もうこの後、怒った先生にビンタされて、そのまま家から出されてもいい、とさえ思った。
先生とキスをしたのはずいぶん久しぶりに感じられた。そもそも、そんなに俺とは回数を経験してないはずなのに先生はやっぱり手慣れていた。
どういうふうに舌を動かせばいいのかも分かっているし、自分が引くべき所と、押すべき所の緩急の付け方も上手かった。
やっぱりどエロかったんだ…と思うと、ムラッとしてもう止められなかった。
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