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12話 異世界人の集い12
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酒を飲み、音楽にのって躍り狂う
異世界人達がまるで海が割れたかの
ように隅に寄る。その空いた真ん中を、
堂々とその女は通っていく。
隼人は彼女をウィンクと呼ぶが、
それ以外は何も知らない。
何もかも謎に包まれた彼女は、
怯えて逃げ惑う異世界人達には
目もくれず、とある三人の
元にたどり着いた。
「ごめーん。遅くなったかな?」
ウィンクはニコッと笑って
その集団に声をかける。
すると、集団の一人が
こちらに目を向けた。
「何をしていた。こんな大事なときに。
ようやく標的が姿を現したんだぞ」
そう言ってその男は、組合カードの
とある画面をウィンクに見せる。
それは服部隼人のプロフィール画面
だった。
「そんなに怒らないでよ。」
「まあいい。ようやくだ。ようやく
探し求めていた奴が見つかった。」
「ナハハハハッ!! おいおい、
もしかしてもうこいつを狩りに
行くのか? 」
と、ここで集団の中の
別の異世界人が話に入ってきた。
「馬鹿言うな。いくらこれで
奴の居場所がわかるようになった
からといって、追いかけたところで
そう簡単に見つかるわけがない。
異世界間の時間の進みは異なるからな。
それに、今はまだ、その時
じゃない。」
「ちぇっ! つまんねぇな!
どうせ雑魚なんだからさっさと
殺しに行けばいいのによ。」
「奴は雑魚じゃない。これを見ろ。
奴もイレギュラーだ。」
「......へーおもしれぇな。じゃあこれで
五人目か?」
「ああ、俺らを含めてな......」
男は隼人のプロフィール画面を
見ながら、そう不気味に言った。
「なあなあ! レモン! 見てみろよ!
この標的、俺らと同じイレギュラー
だってよ!」
残りの一人にそう声をかけたが、
レモンと呼ばれた彼女は興味無さげに
自分の組合カードを見つめていた。
それを見かねたウィンクが口を開く。
「レモンちゃんは昔、はやっちと
一緒に旅してたことがあるんだよね?」
「ナハハハハッ! マジかよ! それ!」
やたらテンションの高い男の異世界人
を無視して、レモンは小さく
「うるさい」
と言った。
だが、ウィンクはそんな無愛想なレモンに
近寄る。
「もしかして、はやっちのこと
殺したくない?」
その言葉に、レモンはウィンクを
睨み付けた。
しかし、それでもウィンクは笑み
を崩さない。
「あ、あなただって、この人と
知り合いでしょ。人のこと言えた
義理じゃ──」
「私ははやっちのこと殺せるよ?
だって私、はやっちのこと......
大嫌いだから」
その驚く程に冷たい言葉に、レモンは
何も言い返せなかった。
「もういい。変な言い争いは止せ。
俺達の標的がこいつであることには、
何も変わりはない。
それより、そろそろ戻るぞ。
瑠璃様がお待ちだ。」
そう話を終わらせて、
立ち上がる男二人だったが、レモンは
依然としてウィンクから視線を
外さなかった。
「......本当これでいいの? これが
あなたの望んでいたことなの?」
レモンのその問いに、ウィンクは
答えた。
「そう。これが私の望んでいたこと。」
ウィンクのその言葉は、いつものような
明るさは無く、ただ低く、そして
冷たかった。
異世界人達がまるで海が割れたかの
ように隅に寄る。その空いた真ん中を、
堂々とその女は通っていく。
隼人は彼女をウィンクと呼ぶが、
それ以外は何も知らない。
何もかも謎に包まれた彼女は、
怯えて逃げ惑う異世界人達には
目もくれず、とある三人の
元にたどり着いた。
「ごめーん。遅くなったかな?」
ウィンクはニコッと笑って
その集団に声をかける。
すると、集団の一人が
こちらに目を向けた。
「何をしていた。こんな大事なときに。
ようやく標的が姿を現したんだぞ」
そう言ってその男は、組合カードの
とある画面をウィンクに見せる。
それは服部隼人のプロフィール画面
だった。
「そんなに怒らないでよ。」
「まあいい。ようやくだ。ようやく
探し求めていた奴が見つかった。」
「ナハハハハッ!! おいおい、
もしかしてもうこいつを狩りに
行くのか? 」
と、ここで集団の中の
別の異世界人が話に入ってきた。
「馬鹿言うな。いくらこれで
奴の居場所がわかるようになった
からといって、追いかけたところで
そう簡単に見つかるわけがない。
異世界間の時間の進みは異なるからな。
それに、今はまだ、その時
じゃない。」
「ちぇっ! つまんねぇな!
どうせ雑魚なんだからさっさと
殺しに行けばいいのによ。」
「奴は雑魚じゃない。これを見ろ。
奴もイレギュラーだ。」
「......へーおもしれぇな。じゃあこれで
五人目か?」
「ああ、俺らを含めてな......」
男は隼人のプロフィール画面を
見ながら、そう不気味に言った。
「なあなあ! レモン! 見てみろよ!
この標的、俺らと同じイレギュラー
だってよ!」
残りの一人にそう声をかけたが、
レモンと呼ばれた彼女は興味無さげに
自分の組合カードを見つめていた。
それを見かねたウィンクが口を開く。
「レモンちゃんは昔、はやっちと
一緒に旅してたことがあるんだよね?」
「ナハハハハッ! マジかよ! それ!」
やたらテンションの高い男の異世界人
を無視して、レモンは小さく
「うるさい」
と言った。
だが、ウィンクはそんな無愛想なレモンに
近寄る。
「もしかして、はやっちのこと
殺したくない?」
その言葉に、レモンはウィンクを
睨み付けた。
しかし、それでもウィンクは笑み
を崩さない。
「あ、あなただって、この人と
知り合いでしょ。人のこと言えた
義理じゃ──」
「私ははやっちのこと殺せるよ?
だって私、はやっちのこと......
大嫌いだから」
その驚く程に冷たい言葉に、レモンは
何も言い返せなかった。
「もういい。変な言い争いは止せ。
俺達の標的がこいつであることには、
何も変わりはない。
それより、そろそろ戻るぞ。
瑠璃様がお待ちだ。」
そう話を終わらせて、
立ち上がる男二人だったが、レモンは
依然としてウィンクから視線を
外さなかった。
「......本当これでいいの? これが
あなたの望んでいたことなの?」
レモンのその問いに、ウィンクは
答えた。
「そう。これが私の望んでいたこと。」
ウィンクのその言葉は、いつものような
明るさは無く、ただ低く、そして
冷たかった。
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