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三百二十九話 クリア4
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「それで、またあの二人は遅刻
してるの?」
はぁ、とため息をついて何とか
ルドルフへの苛立ちを抑えた
ヨーテルは、本来盗賊と戦士の
隊長が座っているはずの席に目を移した。
その二つの席も、回復魔法士と
と同じく誰も座っていなかった。
「まあ、あの二人はいつも
別の島で開拓の指揮をしているからな。
こういう機会でしか、中々下の大陸
に戻って来れないのだよ。」
「だからって本来の目的であるこの
会議よりも優先して、毎回先にあそこに
足を運ぶなんて......」
「それだけ二人にとっては、
あの場所に訪れるということが
大切なのだよ。」
「......それもそうね。」
【ルーベルト家 庭園】
美しい色をした様々な花が
規則正しく大切に植えられた
庭園で、花に水やりをしている
赤髪の女性がいた。
すると、そこに体つきのいい
男性と小柄な女性が歩み寄ってくる。
赤髪の女性はその二人に気がついて
口を開いた。
「あら、いらっしゃい。」
美しく微笑む赤髪の女性に、
二人は微笑み返した。
「元気そうだな、ソフィア。」
「......おひさ......ソフィア......」
二人にソフィアと呼ばれた彼女は、
紛れもなくバーゼンの実の姉である
ソフィアだった。
隼人の使った魔法によって近くにいた
バーゼンや長老、牛喜などが
復活した中、何と五年前に行方不明に
なった職業者達も魔王城内で復活した。
もしかしたら、隼人が魔王城の
一階で全滅させた人間と魔族のキメラ
の中に、ソフィアを含む五年前の
行方不明者がいたからなのかもしれない。
「いいんですか? 二人とも。今は城で
隊長達の会議が開かれているはずですよ。」
ソフィアは何故この二人が
ここを訪れたのかを知っているのに、
わざわざそう聞いた。
「ああ、いいんだよ。」
彼女の問いに男性がそう
答える。
その迷いのない答えに
ソフィアは再び微笑んだ。
「じゃ、俺らは行くぜ。」
「......ばい......ソフィア......」
「ええ。ごゆっくり。」
ルーベルト家の庭園を横切り、
森の中へと進んでいった二人は、やがて
湖のある綺麗な場所にたどり着いた。
すると、小柄な女性がずっと
手に持っていた花束を、人工的に造られた
石の上に丁寧に置いた。
二人はそのまま屈んで、手を合わせ
ながら、目の前にある石に刻まれた
『タチアナ』
という文字をじっと見詰めた。
してるの?」
はぁ、とため息をついて何とか
ルドルフへの苛立ちを抑えた
ヨーテルは、本来盗賊と戦士の
隊長が座っているはずの席に目を移した。
その二つの席も、回復魔法士と
と同じく誰も座っていなかった。
「まあ、あの二人はいつも
別の島で開拓の指揮をしているからな。
こういう機会でしか、中々下の大陸
に戻って来れないのだよ。」
「だからって本来の目的であるこの
会議よりも優先して、毎回先にあそこに
足を運ぶなんて......」
「それだけ二人にとっては、
あの場所に訪れるということが
大切なのだよ。」
「......それもそうね。」
【ルーベルト家 庭園】
美しい色をした様々な花が
規則正しく大切に植えられた
庭園で、花に水やりをしている
赤髪の女性がいた。
すると、そこに体つきのいい
男性と小柄な女性が歩み寄ってくる。
赤髪の女性はその二人に気がついて
口を開いた。
「あら、いらっしゃい。」
美しく微笑む赤髪の女性に、
二人は微笑み返した。
「元気そうだな、ソフィア。」
「......おひさ......ソフィア......」
二人にソフィアと呼ばれた彼女は、
紛れもなくバーゼンの実の姉である
ソフィアだった。
隼人の使った魔法によって近くにいた
バーゼンや長老、牛喜などが
復活した中、何と五年前に行方不明に
なった職業者達も魔王城内で復活した。
もしかしたら、隼人が魔王城の
一階で全滅させた人間と魔族のキメラ
の中に、ソフィアを含む五年前の
行方不明者がいたからなのかもしれない。
「いいんですか? 二人とも。今は城で
隊長達の会議が開かれているはずですよ。」
ソフィアは何故この二人が
ここを訪れたのかを知っているのに、
わざわざそう聞いた。
「ああ、いいんだよ。」
彼女の問いに男性がそう
答える。
その迷いのない答えに
ソフィアは再び微笑んだ。
「じゃ、俺らは行くぜ。」
「......ばい......ソフィア......」
「ええ。ごゆっくり。」
ルーベルト家の庭園を横切り、
森の中へと進んでいった二人は、やがて
湖のある綺麗な場所にたどり着いた。
すると、小柄な女性がずっと
手に持っていた花束を、人工的に造られた
石の上に丁寧に置いた。
二人はそのまま屈んで、手を合わせ
ながら、目の前にある石に刻まれた
『タチアナ』
という文字をじっと見詰めた。
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