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二百九十九話 真実7
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「貴様は私の友達に何を
しているのだ!!」
突如として介入してきたタチアナから
睡蓮は一歩離れる。
「おや、これはこれはタチアナ様
ではないですか。」
「質問に答えろ!」
「......ただ道端に落ちていたゴミを
処分していただけですよ。」
タチアナはすっかり怯えてしまった
鬼灯に駆け寄って、大丈夫か?
と声をかける。
「......タチアナ......」
「もう心配はいらない。」
震える鬼灯にタチアナは
にこりと笑って言ったが、
睡蓮に視線を移した時には
タチアナの顔は気色ばんでいた。
「許さない......」
タチアナは既に抜いていた
剣を構える。
「俺とやる気ですか?
それならいくらバーゼン様の妹様と
言えど、俺は容赦はしない。
どっちが上かはっきりさせてやる!!」
走り出した睡蓮は電光石火の如く
タチアナに斬りかかった。
キンッ!
鈍い金属音が辺りに響く。
「......っ!」
タチアナは睡蓮の力に負け、
後ろに撥ね飛ばされた。
だが、睡蓮は畳み掛けるように
タチアナに斬りかかる。
その刃を何かとかタチアナは
受け止めた。
「知ってるぞ。お前、確か
今までの記憶が無いんだってな。」
「......」
「皆知ってる。バーゼン様が
とある島で不思議な力を持った
謎の少女を救助したと。
それが、お前であることも。」
「......だったら、どうした。」
「そんな正体不明な奴が
近くにいるだけで気味が悪いんだよ!」
「......」
「お前も俺が殺してやる。
そこにいるできそこ無いと
一緒にな!」
「私のことはいい。
だが、私の友達を貶すことだけは
許さない!」
タチアナは力任せの睡蓮を
逆手に取って足を引っ掻け、
そして、体勢を崩した
睡蓮を巧みに蹴り飛ばした。
「うるせぇ! そいつが悪いんだ!
そいつが弱者としてこの世に生まれて
きたから。弱者が存在する価値なんて
無いんだよ!」
鬼灯は久々に、昔散々言われていた
言葉を耳にした。
タチアナ......もういいよ......
私なんて......無視して......早く逃げて......
もう鬼灯には兄に対抗する
意志などなかった。
だから、せめてタチアナだけでもと
口を開こうとしたその時。
「黙れ!!!!!!
この愚か者めが!!!」
鬼灯の暗い気持ちをタチアナの
力強い言葉が吹き飛ばした。
「誰よりも穏やかな心を持った
鬼灯に存在する価値がないだと?
戯れ事を言うな!
他者を蔑み、自身を正当化する
貴様のような奴ほど、よっぽど
存在する価値もないわ!!!」
「な、なんだとぉ!?
言わせておけば!!」
「何度だって言ってやる。
貴様に他者を侮辱する資格など
ない!!!!
とっとと、荷物をまとめてこの城から
出て行け!!
そして、私の友達の前にその滑稽な
面を二度と見せるな!!」
睡蓮は青筋を立てて自分の剣を
握り絞めている。
「俺は直に帝国精鋭隊の仲間入りを
して、騎士の隊長となる男だ!!
お前のようなガキにそんなことを
言われる筋合いは──」
怒り狂った睡蓮は
剣を振り上げる。
「タチアナ逃げて!!」
鬼灯の叫び声は聞こえている
はずなのに、タチアナはぴくりとも
動かない。
鬼灯の前に立って手をばっと広げる。
震えて動けない鬼灯を守るように......
何で......こんな私を......守ってく
れるの......
何で......何で......私の存在を
......認めてくれるの......
なるべく家族に嫌われないように、
ずっと目立たぬように生きてきた。
それが、逆に家族の機嫌を損ねて
しまって鬼灯は家族に捨てられた。
けど、タチアナはそんな自分を
否定しなかった。
認めてくれた。
自分の存在価値を見い出してくれた。
今、その彼女が自分をかばって
兄の攻撃を受けようとしている。
これでいいのか。
このまま自分は逃げていいのか。
このまま......過去の自分であって
いいのか。
嫌だ!!
私を認めてくれたタチアナは
私が守る!!
鬼灯はその時、ようやく自分を縛りつ
けていた何かが外れた気がした。
「タチアナ......っ!」
鬼灯は懐から小刀を取り出し、
兄と初めて剣を交えた。
「!?」
睡蓮は鬼灯の取った行動に驚きを
隠せなかった。
「できそこ無いの癖に!!」
「っあ!!」
だが、鬼灯の力はあと一歩
睡蓮に及ばず、後ろに撥ね飛ばされて
しまった。
「殺してやる......」
「鬼灯!」
今度はタチアナが鬼灯の前に出る。
「お前らみたいな弱者は......
強者である俺に歯向かうなあああっ!!!」
睡蓮は怒りに任せてタチアナに
剣を振り下ろしたのだった。
しているのだ!!」
突如として介入してきたタチアナから
睡蓮は一歩離れる。
「おや、これはこれはタチアナ様
ではないですか。」
「質問に答えろ!」
「......ただ道端に落ちていたゴミを
処分していただけですよ。」
タチアナはすっかり怯えてしまった
鬼灯に駆け寄って、大丈夫か?
と声をかける。
「......タチアナ......」
「もう心配はいらない。」
震える鬼灯にタチアナは
にこりと笑って言ったが、
睡蓮に視線を移した時には
タチアナの顔は気色ばんでいた。
「許さない......」
タチアナは既に抜いていた
剣を構える。
「俺とやる気ですか?
それならいくらバーゼン様の妹様と
言えど、俺は容赦はしない。
どっちが上かはっきりさせてやる!!」
走り出した睡蓮は電光石火の如く
タチアナに斬りかかった。
キンッ!
鈍い金属音が辺りに響く。
「......っ!」
タチアナは睡蓮の力に負け、
後ろに撥ね飛ばされた。
だが、睡蓮は畳み掛けるように
タチアナに斬りかかる。
その刃を何かとかタチアナは
受け止めた。
「知ってるぞ。お前、確か
今までの記憶が無いんだってな。」
「......」
「皆知ってる。バーゼン様が
とある島で不思議な力を持った
謎の少女を救助したと。
それが、お前であることも。」
「......だったら、どうした。」
「そんな正体不明な奴が
近くにいるだけで気味が悪いんだよ!」
「......」
「お前も俺が殺してやる。
そこにいるできそこ無いと
一緒にな!」
「私のことはいい。
だが、私の友達を貶すことだけは
許さない!」
タチアナは力任せの睡蓮を
逆手に取って足を引っ掻け、
そして、体勢を崩した
睡蓮を巧みに蹴り飛ばした。
「うるせぇ! そいつが悪いんだ!
そいつが弱者としてこの世に生まれて
きたから。弱者が存在する価値なんて
無いんだよ!」
鬼灯は久々に、昔散々言われていた
言葉を耳にした。
タチアナ......もういいよ......
私なんて......無視して......早く逃げて......
もう鬼灯には兄に対抗する
意志などなかった。
だから、せめてタチアナだけでもと
口を開こうとしたその時。
「黙れ!!!!!!
この愚か者めが!!!」
鬼灯の暗い気持ちをタチアナの
力強い言葉が吹き飛ばした。
「誰よりも穏やかな心を持った
鬼灯に存在する価値がないだと?
戯れ事を言うな!
他者を蔑み、自身を正当化する
貴様のような奴ほど、よっぽど
存在する価値もないわ!!!」
「な、なんだとぉ!?
言わせておけば!!」
「何度だって言ってやる。
貴様に他者を侮辱する資格など
ない!!!!
とっとと、荷物をまとめてこの城から
出て行け!!
そして、私の友達の前にその滑稽な
面を二度と見せるな!!」
睡蓮は青筋を立てて自分の剣を
握り絞めている。
「俺は直に帝国精鋭隊の仲間入りを
して、騎士の隊長となる男だ!!
お前のようなガキにそんなことを
言われる筋合いは──」
怒り狂った睡蓮は
剣を振り上げる。
「タチアナ逃げて!!」
鬼灯の叫び声は聞こえている
はずなのに、タチアナはぴくりとも
動かない。
鬼灯の前に立って手をばっと広げる。
震えて動けない鬼灯を守るように......
何で......こんな私を......守ってく
れるの......
何で......何で......私の存在を
......認めてくれるの......
なるべく家族に嫌われないように、
ずっと目立たぬように生きてきた。
それが、逆に家族の機嫌を損ねて
しまって鬼灯は家族に捨てられた。
けど、タチアナはそんな自分を
否定しなかった。
認めてくれた。
自分の存在価値を見い出してくれた。
今、その彼女が自分をかばって
兄の攻撃を受けようとしている。
これでいいのか。
このまま自分は逃げていいのか。
このまま......過去の自分であって
いいのか。
嫌だ!!
私を認めてくれたタチアナは
私が守る!!
鬼灯はその時、ようやく自分を縛りつ
けていた何かが外れた気がした。
「タチアナ......っ!」
鬼灯は懐から小刀を取り出し、
兄と初めて剣を交えた。
「!?」
睡蓮は鬼灯の取った行動に驚きを
隠せなかった。
「できそこ無いの癖に!!」
「っあ!!」
だが、鬼灯の力はあと一歩
睡蓮に及ばず、後ろに撥ね飛ばされて
しまった。
「殺してやる......」
「鬼灯!」
今度はタチアナが鬼灯の前に出る。
「お前らみたいな弱者は......
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