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二百九十八話 真実6
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「......誰......」
後ろを振り向くと、そこには
金色のロングヘアーをした
綺麗な少女がいた。
年は自分と同じくらいに見える。
「私はタチアナだ。」
「......じゃあ、お前が......うわさの......
呪覆島で救助......されたっていう......」
バーゼンが呪覆島でタチアナを
発見してからまだ半年も経たない
うちに、彼女の噂は城だけではなく
下の大陸中に広まった。
今では、彼女のことを知らない
者はいないくらいに。
「......」
だが、鬼灯にタチアナへの
興味など全く無かった。
だから、無言でタチアナから
目をそらした。
けれど、タチアナは
その鬼灯の反応が気に入った。
毎日毎日、質問ぜめにあっていた
タチアナにとって、自分に興味を
示さない鬼灯という存在は
とても心地が良かったのだ。
「少し話をしないか?」
「話?......やだ。」
「そう冷たいことを言うな。
私は友達が欲しいだけなのだ。」
「......友達?」
「そう。友達。私は君に友達になって
ほしいんだ。」
......そんな......こと......初めて......
言われた......
「......好きに......すれば......」
家族から毎日のように
辛辣な言葉を浴びせられてきた
鬼灯は、戸惑いつつもどこか
少し嬉しさを感じながらタチアナに
言った。
それから、たまに鬼灯とタチアナは
ここで他愛ない話をするように
なった。
そして、だんだんと鬼灯が
タチアナに心を開き始めた頃、
事件が起きた。
「!? まさか!」
睡蓮はある紙を眺めて驚いた。
「あの鬼灯がこの城に呼ばれてい
るのか!?」
その紙には、この城に才能を認められて
集められた若き職業者達の名前が
載っていた。
「......遅い......」
鬼灯は姿を現さないタチアナに
イライラしていた。
いつも鬼灯は、私はああだ、こうだ
と一方的に話をしてくるタチアナに
......ふーん......
と、興味の無いふりをしていたが、
実は話をしてくれることがとても
嬉しくて、今日は会いに来てくれる
だろうかとタチアナが来てくれるのを
心待ちにしていた。
「ここにいたか。」
だが、今日鬼灯の前に現れたのは
「!? ......睡蓮......兄さん......」
鬼灯の兄だった。
「っ!!」
睡蓮は怯える鬼灯の首を締め付けて、
そのまま地面に押さえつける。
「俺を兄と呼ぶな! このできそこ
ないが!」
「......や......め......」
「虫酸が走るんだよ......お前みたいに
うじうじした弱い奴が、俺と
同じ血が流れていると思うと......」
苦しむ鬼灯の髪をグッと
睡蓮は引っ張る。
「言ったろ? 俺はお前に死ねって......
なんで兄さんの言うことが聞けな
いんだ? 俺のことが嫌いなのか?
何とか言えよ! 黙ったままじゃわから
ないだろ!」
睡蓮は泣いてしまった鬼灯を
蹴り飛ばした。
「......ごめ......ん......なさい......」
鬼灯は逆らえなかった。
なぜなら、小さい頃から
受け続けた痛みを体が
覚えていたから。
だから、鬼灯は今になっても
兄には逆らえないのだ。
睡蓮を前にすると、鬼灯の
体は無意識に震えてしまっていた。
「それだよ......昔から俺の前で
いっつも子犬みたいに怯えて。
イライラするんだよ。
あ、そうだ。俺職業が勇者に
なったんだ。
ちょっと勇者がどんなものか
お前で試してみるか。
ありがたく思えよ。
お前みたいなゴミが
真の勇者が誕生するのを
手伝えるんだ。」
そう言って睡蓮は
肩に背負っていた剣を抜く。
「......嫌......止めて......」
何で兄はこんなにも
自分に辛く当たるのだろう。
どうして父と母は私を捨てたのだろう。
ああ......そうか。
私なんて生まれて来なければ
よかったんだ。
私に存在する価値なんて無かったんだ。
鬼灯はもう逃げるのを止めて
剣を振り上げる睡蓮を見る。
「弱者はな、生きてる価値なんて
ないんだよ。鬼灯!!!」
睡蓮は躊躇せずに
剣を振り落としたのだった。
キンッ!
しかし、その剣は何者かに
よって防がれてしまった。
「誰だ!」
睡蓮は飛び込んで来た金髪の
少女に叫んだ。
後ろを振り向くと、そこには
金色のロングヘアーをした
綺麗な少女がいた。
年は自分と同じくらいに見える。
「私はタチアナだ。」
「......じゃあ、お前が......うわさの......
呪覆島で救助......されたっていう......」
バーゼンが呪覆島でタチアナを
発見してからまだ半年も経たない
うちに、彼女の噂は城だけではなく
下の大陸中に広まった。
今では、彼女のことを知らない
者はいないくらいに。
「......」
だが、鬼灯にタチアナへの
興味など全く無かった。
だから、無言でタチアナから
目をそらした。
けれど、タチアナは
その鬼灯の反応が気に入った。
毎日毎日、質問ぜめにあっていた
タチアナにとって、自分に興味を
示さない鬼灯という存在は
とても心地が良かったのだ。
「少し話をしないか?」
「話?......やだ。」
「そう冷たいことを言うな。
私は友達が欲しいだけなのだ。」
「......友達?」
「そう。友達。私は君に友達になって
ほしいんだ。」
......そんな......こと......初めて......
言われた......
「......好きに......すれば......」
家族から毎日のように
辛辣な言葉を浴びせられてきた
鬼灯は、戸惑いつつもどこか
少し嬉しさを感じながらタチアナに
言った。
それから、たまに鬼灯とタチアナは
ここで他愛ない話をするように
なった。
そして、だんだんと鬼灯が
タチアナに心を開き始めた頃、
事件が起きた。
「!? まさか!」
睡蓮はある紙を眺めて驚いた。
「あの鬼灯がこの城に呼ばれてい
るのか!?」
その紙には、この城に才能を認められて
集められた若き職業者達の名前が
載っていた。
「......遅い......」
鬼灯は姿を現さないタチアナに
イライラしていた。
いつも鬼灯は、私はああだ、こうだ
と一方的に話をしてくるタチアナに
......ふーん......
と、興味の無いふりをしていたが、
実は話をしてくれることがとても
嬉しくて、今日は会いに来てくれる
だろうかとタチアナが来てくれるのを
心待ちにしていた。
「ここにいたか。」
だが、今日鬼灯の前に現れたのは
「!? ......睡蓮......兄さん......」
鬼灯の兄だった。
「っ!!」
睡蓮は怯える鬼灯の首を締め付けて、
そのまま地面に押さえつける。
「俺を兄と呼ぶな! このできそこ
ないが!」
「......や......め......」
「虫酸が走るんだよ......お前みたいに
うじうじした弱い奴が、俺と
同じ血が流れていると思うと......」
苦しむ鬼灯の髪をグッと
睡蓮は引っ張る。
「言ったろ? 俺はお前に死ねって......
なんで兄さんの言うことが聞けな
いんだ? 俺のことが嫌いなのか?
何とか言えよ! 黙ったままじゃわから
ないだろ!」
睡蓮は泣いてしまった鬼灯を
蹴り飛ばした。
「......ごめ......ん......なさい......」
鬼灯は逆らえなかった。
なぜなら、小さい頃から
受け続けた痛みを体が
覚えていたから。
だから、鬼灯は今になっても
兄には逆らえないのだ。
睡蓮を前にすると、鬼灯の
体は無意識に震えてしまっていた。
「それだよ......昔から俺の前で
いっつも子犬みたいに怯えて。
イライラするんだよ。
あ、そうだ。俺職業が勇者に
なったんだ。
ちょっと勇者がどんなものか
お前で試してみるか。
ありがたく思えよ。
お前みたいなゴミが
真の勇者が誕生するのを
手伝えるんだ。」
そう言って睡蓮は
肩に背負っていた剣を抜く。
「......嫌......止めて......」
何で兄はこんなにも
自分に辛く当たるのだろう。
どうして父と母は私を捨てたのだろう。
ああ......そうか。
私なんて生まれて来なければ
よかったんだ。
私に存在する価値なんて無かったんだ。
鬼灯はもう逃げるのを止めて
剣を振り上げる睡蓮を見る。
「弱者はな、生きてる価値なんて
ないんだよ。鬼灯!!!」
睡蓮は躊躇せずに
剣を振り落としたのだった。
キンッ!
しかし、その剣は何者かに
よって防がれてしまった。
「誰だ!」
睡蓮は飛び込んで来た金髪の
少女に叫んだ。
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