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二百九十二話 到着9
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「......ぅ......? あれ......隼人君?」
俺と弓使いの隊長が協力して、
巨大化した謎の生物を倒してから
五分くらい経った頃、ようやく
サッちゃん隊長が目を覚ました。
「!! 敵は!?」
サッちゃん隊長は直ぐさま自分の杖を
握ろうと、辺りをキョロキョロするが
どこにも見当たらなかった。
それもそのはず。
サッちゃん隊長の杖を持っていたのは
「サーマクリフエントロマナーニさん。
あなたの杖はここに。」
弓使いの隊長だった。
彼に名前を呼ばれたのが
意外過ぎてサッちゃん隊長は
困惑しながら
「え、あ、ありがとうございます。」
と杖を受け取った。
「それと......今まですみませんでした。」
「ル、ルドルフさん!? ど、どうした
んですか。一体......」
ルドルフという弓使いの隊長は
頭を下げて丁寧にサッちゃん隊長に
謝る。何度も何度も......
そして、最終的には
「も、もういいんですよ!
そんなに謝らなくても!」
と、サッちゃん隊長が
彼の謝罪を止めさせた。
俺にはよくわからないが、
彼にも何かいろいろあった
のだろう。
俺はそう思いながら、
二人が和解していくのを
見ていた。
そして、ちらっとサッちゃん隊長は
俺の方を見る。
「それと......どうしてさっきまで
私達を襲っていたあの魔族が
倒れているのかわからないんですけど、
多分......隼人君ですよね? 倒したの。」
「ええ。俺が全員倒しました。」
この異世界での生活も、
もう終盤にまで来ている。
今さら隠す必要もない。
「......やっぱり......私、隼人君が
とても強いことを
薄々気がついていたんですよ。
でも、どうしてここに?」
「あー、本当は魔王のいる場所に
直行するつもりだったんですけど......
まあ......なんというか......道に迷って、
城の中を走り回っていたら、
魔族とあの化け物達が集団で
移動しているのを見かけて......
その後をついて行ったら二人を見つけた
んですよ。」
「ん......ちょっと待ってください。
もしかして君は一人で魔王に
会いに行くつもりだったんですか?」
すると、大人しく話を聞いていた
ルドルフが尋ねてくる。
俺はそれに頷いた。
「隼人君。教えてください。
あなたは何者なんですか?
それと、レベルを。
あなたのレベルを教えてください。」
サッちゃん隊長は嘘は
つかないで、と真剣な眼差しで
見てくる。
もう別に隠す必要もないかと
俺は本当のことを言った。
「俺はこの世界を救うために
異世界からやって来た転生者です。
レベルは999。」
「999!?」
隣では、ルドルフが驚き過ぎて顎が外れて
しまっているが、サッちゃん隊長は
全く驚きもせずに
「これを。」
と、赤い本を俺に渡してきた。
「何ですか? これは。」
「その本はレッドブックと言って、
歴代の回復魔法士の隊長にのみ
受け継がれてきた魔法書です。
中にはレベル900超えにしか
扱えない回復魔法が記されています。」
「レベル900!?」
「はい。隼人君が本当にレベルが
999なら、あなたはこの本に記されて
いる回復魔法を使えるはずです。」
「......いいんですか? サッちゃん隊長。
こんな大事な物を俺に渡しても。」
「いいんです。どうせ私には
その本に記されている回復魔法は
使えませんから。
それなら、隼人君にレッドブックを
受け取ってほしいんです。」
「......わかりました。」
俺はサッちゃん隊長から受け取った
レッドブックを大切にリュックにし
まう。
「それじゃ、俺はもう行くんで。
......二人はどうしますか?」
「私は......もう一度、地下に戻って
捕らわれていた人間のみなさんを
救出しようかと......」
「地下に人間が? それなら俺も──」
「いや、君は魔王のところに行くべ
きです。僕がサーマクリフエント
ロマナーニさんについていきます。」
「ルドルフさん......」
そう言って貰えると思って
いなかったのか、サッちゃん隊長は
嬉しそうに目をうるうるさせている。
彼がついて行くのなら
心配はいらないかと、
俺は地下に行くのを止めて、
入り口にあった二階への階段に
向かうことにした。
「じゃ、二人共気をつけて。」
「はい! 隼人君。必ず魔王を倒して
くださいね!」
「隼人。本当に君には助かりました。
君のような強い回復魔法士が居た
ことを僕は忘れませんよ。」
そう言って、二人は俺が向かう道とは
真逆の方向に向かって走っていった。
俺はそれを見送って
「俺も急がないと......」
と、階段のあった魔王城の入り口に
向かって走り出す。
あ......そうだ。
先にサッちゃん隊長から
貰ったレッドブックに書いてある
回復魔法を覚えておくか......
そう思って俺はリュックから
レッドブックを取り出し、
ざっと目を通す。
「へー、こんな回復魔法が......」
俺と弓使いの隊長が協力して、
巨大化した謎の生物を倒してから
五分くらい経った頃、ようやく
サッちゃん隊長が目を覚ました。
「!! 敵は!?」
サッちゃん隊長は直ぐさま自分の杖を
握ろうと、辺りをキョロキョロするが
どこにも見当たらなかった。
それもそのはず。
サッちゃん隊長の杖を持っていたのは
「サーマクリフエントロマナーニさん。
あなたの杖はここに。」
弓使いの隊長だった。
彼に名前を呼ばれたのが
意外過ぎてサッちゃん隊長は
困惑しながら
「え、あ、ありがとうございます。」
と杖を受け取った。
「それと......今まですみませんでした。」
「ル、ルドルフさん!? ど、どうした
んですか。一体......」
ルドルフという弓使いの隊長は
頭を下げて丁寧にサッちゃん隊長に
謝る。何度も何度も......
そして、最終的には
「も、もういいんですよ!
そんなに謝らなくても!」
と、サッちゃん隊長が
彼の謝罪を止めさせた。
俺にはよくわからないが、
彼にも何かいろいろあった
のだろう。
俺はそう思いながら、
二人が和解していくのを
見ていた。
そして、ちらっとサッちゃん隊長は
俺の方を見る。
「それと......どうしてさっきまで
私達を襲っていたあの魔族が
倒れているのかわからないんですけど、
多分......隼人君ですよね? 倒したの。」
「ええ。俺が全員倒しました。」
この異世界での生活も、
もう終盤にまで来ている。
今さら隠す必要もない。
「......やっぱり......私、隼人君が
とても強いことを
薄々気がついていたんですよ。
でも、どうしてここに?」
「あー、本当は魔王のいる場所に
直行するつもりだったんですけど......
まあ......なんというか......道に迷って、
城の中を走り回っていたら、
魔族とあの化け物達が集団で
移動しているのを見かけて......
その後をついて行ったら二人を見つけた
んですよ。」
「ん......ちょっと待ってください。
もしかして君は一人で魔王に
会いに行くつもりだったんですか?」
すると、大人しく話を聞いていた
ルドルフが尋ねてくる。
俺はそれに頷いた。
「隼人君。教えてください。
あなたは何者なんですか?
それと、レベルを。
あなたのレベルを教えてください。」
サッちゃん隊長は嘘は
つかないで、と真剣な眼差しで
見てくる。
もう別に隠す必要もないかと
俺は本当のことを言った。
「俺はこの世界を救うために
異世界からやって来た転生者です。
レベルは999。」
「999!?」
隣では、ルドルフが驚き過ぎて顎が外れて
しまっているが、サッちゃん隊長は
全く驚きもせずに
「これを。」
と、赤い本を俺に渡してきた。
「何ですか? これは。」
「その本はレッドブックと言って、
歴代の回復魔法士の隊長にのみ
受け継がれてきた魔法書です。
中にはレベル900超えにしか
扱えない回復魔法が記されています。」
「レベル900!?」
「はい。隼人君が本当にレベルが
999なら、あなたはこの本に記されて
いる回復魔法を使えるはずです。」
「......いいんですか? サッちゃん隊長。
こんな大事な物を俺に渡しても。」
「いいんです。どうせ私には
その本に記されている回復魔法は
使えませんから。
それなら、隼人君にレッドブックを
受け取ってほしいんです。」
「......わかりました。」
俺はサッちゃん隊長から受け取った
レッドブックを大切にリュックにし
まう。
「それじゃ、俺はもう行くんで。
......二人はどうしますか?」
「私は......もう一度、地下に戻って
捕らわれていた人間のみなさんを
救出しようかと......」
「地下に人間が? それなら俺も──」
「いや、君は魔王のところに行くべ
きです。僕がサーマクリフエント
ロマナーニさんについていきます。」
「ルドルフさん......」
そう言って貰えると思って
いなかったのか、サッちゃん隊長は
嬉しそうに目をうるうるさせている。
彼がついて行くのなら
心配はいらないかと、
俺は地下に行くのを止めて、
入り口にあった二階への階段に
向かうことにした。
「じゃ、二人共気をつけて。」
「はい! 隼人君。必ず魔王を倒して
くださいね!」
「隼人。本当に君には助かりました。
君のような強い回復魔法士が居た
ことを僕は忘れませんよ。」
そう言って、二人は俺が向かう道とは
真逆の方向に向かって走っていった。
俺はそれを見送って
「俺も急がないと......」
と、階段のあった魔王城の入り口に
向かって走り出す。
あ......そうだ。
先にサッちゃん隊長から
貰ったレッドブックに書いてある
回復魔法を覚えておくか......
そう思って俺はリュックから
レッドブックを取り出し、
ざっと目を通す。
「へー、こんな回復魔法が......」
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